食料品小売業界は2021年の前半に売上が停滞した。だが、その後半には各種の要因から収益が増加している。さらに、食料品店は内部的に、自社のロイヤルティプログラムに投資することで、もっとも頻繁に自社を利用する顧客に賭けている。これらの要因から、食料品小売業者は最新の第3四半期の収支で、再度堅調な収益を報告している。
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食料品小売業界は2021年の前半に売上が停滞した。だが、その後半には各種の要因から、収益が増加している。
食料品は、パンデミックの初期に急成長したカテゴリーだ。しかし、2021年の前半にレストランが営業を再開し、行動制限が解除されると、来店者数と売上は減少した。コロナウイルスの感染数が急速に増加しつつある現在、消費者はふたたび自宅で調理をするようになった。それに伴って、食料品店はインフレによるコストの増大を消費者に転嫁した。米国労働統計局(U.S. Bureau of Labor Statistics)によれば、食料品の価格は2021年11月までの1年間に、前年比で6.8%上昇した。さらに、食料品店は内部的に、自社のロイヤルティプログラムに投資することで、もっとも頻繁に自社を利用する顧客に賭けている。
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これらの要因から、食料品小売業者は最新の第3四半期の収支について、再度堅調な四半期の収益を報告している。アルバートソンズ(Albertsons)の収益は18%増加し、167億ドル(約1兆9000億円)に達した。ウォルマート(Walmart)の食料品の売上は前年比で10%増加し、同社の総合的な成長率の4.3%を上回った。クローガー(Kroger’s)のガソリン以外の総売上は前年比で3%増加し、319億ドル(約3兆6400億円)に達した。これらの成長を促進していると思われる要因は3つある。Covidの感染件数の増大により消費者が自宅で料理を行うようになったこと、インフレによる価格の上昇、および多額の消費を行うロイヤルティメンバーへの注力の増強だ。
パンデミックによる食料品ブームの再来
アルバートソンズの火曜日の収支報告において、CEOを務めるビベック・サンカラン氏は述べた。「最近になってオミクロン株の影響で、人々がまた自宅で食事をすることが増えてきたことが感じられるだろう」。
実際に、プレーサーエーアイ(Placer.ai)のデータによれば、2021年の後半において食料品店への直接訪問は増加しており、2019年と比べて週ごとの訪問回数は約13%増えている。一方でレストランへの訪問は同じ期間に依然として減少し続け、9月には2019年と比較して約8%の減少を見せている。
「食料品が弱かった時期と比べて来店回数が増えたというわけではない。どちらかというと、成長率の高い、いわば新しいクラスの小売業者で食料品の販売が推進されたと見るべきだ」と、プレーサーエーアイのマーケティング担当バイスプレジデントを務めるイーサン・チェルノフスキー氏は述べている。
食料品は、2020年にCovid-19の恩恵を受けた数少ない業種のひとつだった。ほかのカテゴリーが苦闘するなかで、この部門は2020年に10%成長した。ポストパンデミックの世界が拓けると思われた2021年の初期には成長が停滞したが、消費者はまたしてもパンデミック初期の行動に戻り、レストランよりも食料品店を選ぶようになった。
プロフィテロ(Profitero)のCMOを務めるマイク・ブラック氏は、パンデミックのあいだを通して消費者は、レストランへのニーズを自宅に「インソーシングする」ことを学んだと述べている。「食料品への消費の増大は、レストランに食事に行くことの安心感次第になるだろう」と同氏は付け加えている。
インフレの転嫁
食料品店は、インフレを消費者に転嫁することにも成功しており、反発は比較的少ないものだ。
たとえばウォルマートで、食料品や家庭用品の価格は「一桁の序盤から中盤程度」上昇し、同社の平均注文価格を押し上げている。一方でアルバートソンズでは、同一販売の成長率は前年比で5%、2年間スタックで17%であり、CFOを務めるシャロン・マッカラム氏は同社の収支報告において、これが部分的に「小売価格のインフレ」のためであるとしている。
カンター(Kantar)で小売インサイトのディレクターを務めるパム・グッドフェロー氏は、インフレを消費者に転嫁するのは「微妙なバランス」だと語る。同氏は、これまでのところ「小売業者は売上の成長を抑えることなく、これらの価格上昇の一部を消費者に負わせることができた」と付け加えている。
多くの小売業者は、十分な利ざやを確保したままインフレの重圧を回避するため工夫した方法も探し求めている。
たとえばアルバートソンズのサンカラン氏は、同社が「インフレを転嫁するカテゴリーを十分に考えて決定」し、不可欠な商品の価格を低く抑えると語っている。
これに対してターゲットは、利ざやの小さいプライベートレーベルにより販売の増加を促進することに注力している。ターゲットのCEOを務めるブライアン・コーネル氏は、同社が自社の食料品ブランド、特に最新のプライベートレーベルであるグッド・アンド・ギャザー(Good & Gather)の立ち上げに対して「非常に良い反応」を受け取ったとしている。
ウォルマートのCEOを務めるダグ・マクミロン氏は、同社がサプライヤーに対して「当社が価格を戻し、ほかの業者と差別化するため、何ができるか?」と問いかけることで、「価格を抑える」ことを試みていると、11月にCNBCに語った。
プロフィテロのブラック氏は、もっとも成功を収めた食料品店の多くは、プライベートレーベルへの投資を増やし、サプライヤーとの関係を強化することで、インフレが消費者にさらに打撃を与える前にそれを阻止するため努力していると語った。
ブラック氏は次のように述べている。「これは主に、インフレが製造業者とサプライヤーとの関係に与える影響と、価格を抑えるため双方が行うコラボレーションの問題だ。小売業者が2022年に成功を収めるためのテコ入れとして最良の方法のひとつは、十分な在庫を持ち、サプライチェーンの問題とオンライン注文から発生するボラティリティ(価格の変動性)を真に予測できるようになることだ」。
ロイヤルティへの注力
食料品が、業者のコントロール外である追い風の恩恵を受けている一方で、食料品店は内部的に自社と、もっとも熱心な顧客との関係を固めようとも試みている。
アルバートソンズのロイヤルティメンバーは前年比で17%増加し、第3四半期には2800万人に達した。プログラムのアクティブメンバー、すなわち食料品や燃料のリワードを交換したメンバーは、アクティブでないメンバーよりも4倍の消費を行っている。サンカラン氏は、アルバートソンズが最近、薬局サービスの予約、オンラインでの食料品ショッピング、オンラインクーポンなどの機能を自社のロイヤルティプログラムのアプリに追加し、店舗内とオンラインの両方で買い物を行う顧客にリワードを与えるための作業を行ったと説明した。
「当社の新しい統合モバイルアプリにより、顧客のデジタルエクスペリエンスすべてが1カ所に統合される」と同氏は述べている。
これに対してウォルマートは自社の宅配サービスモデルを米国の3000万の家庭に拡大し、このための要員として3000人のアソシエイト(作業員)を雇用する計画を公表した。ウォルマートの愛用者は、月20ドル(約2280円)または年150ドル(1万7100円)で、これらのアソシエイトに買い物、宅配、自宅の冷蔵庫への食料品の開梱を依頼することができる。
プレーサーエーアイのチェルノフスキー氏は、食料品店は顧客が自社サービスを使用する頻度が、特にパンデミックのあいだには高いことから、ロイヤルティを推進するため特に有利な位置にあると考えている。
同氏は次のように述べている。「私は、ここで多くの成功を導く要素となっているのは、これらの食料品店が、困難な期間において真に自社顧客のため働くことにより、特別なものに触れることができたことだと考えている。食料品店と消費者とのあいだのつながりはすでに深いもので、それにこの重要性を与えることで、長期的に多くの成功を促進できるだろう」。
[原文:Grocery stores are reporting strong sales growth once again]
Maile McCann(翻訳:ジェスコーポレーション 編集:長田真)
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