アメリカで人気のコネクテッドTVデバイス、ロク(Roku)が開発を進める新プログラムが注目を集めている。広告主だけでなく、配信サービス企業も興味を示しているというこの新プログラム。一体、どういったものなのだろうか。米DIGIDAYは今回、エージェンシー3社の幹部に話を伺った。
アメリカで人気のコネクテッドTVデバイス、ロク(Roku)が開発を進める新プログラムが注目を集めている。広告主だけでなく、配信サービス企業も興味を示しているというこの新プログラム。一体、どういったものなのだろうか。
米DIGIDAYは今回、エージェンシー3社の幹部に話を伺った。すると、いずれのエージェンシーも、スマートテレビ向けプラットフォームを介して放送される番組の宣伝プログラムのスポンサーにならないかと、ロクから打診を受けていたことを明かした。このプログラムは「ロク・リコメンド(Roku Recommends)」と名付けられ、第2~3四半期にローンチが予定されているようだ。スポンサー料は、10万〜50万ドル(1000万~5000万円)程度と見込まれている(これについてロクの広報担当にコメントを求めたものの、回答は得られなかった)。スポンサーは1社を限定とする予定で、期間を区切って募集して行くという。どれくらいの頻度でスポンサー交代となるのかは、現状では不明のままとなっている。
ユニークな「ロク・リコメンド」
ロク・リコメンドは、ロクのホーム画面の右側にスポンサーによる動画のディスプレイ広告を表示するプログラムだ。オーディエンスがバナーをクリックすると、その動画が再生される仕組みとなっている。動画の長さは5~7分ほどとされ、「ロク・リコメンド:この動画は○○の提供でお送りしています」と表示される。さらに、ディスプレイ広告にはブランドのロゴも載るという。
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どのような番組や映画にロク・リコメンドが表示されるかについては、選択基準を含め現状では不明だが、「ロクのプラットフォームであるロク・チャンネル(The Roku Channel)だけでなく、NetflixやDisney+、HBO Maxといった大手配信サービスも対象になる」と、エージェンシー幹部は想定しているという。広告付きの無料テレビ配信サービスのロク・チャンネルだが、3月には初となる独占配信の番組を公開し、さらには2021年にクイビー(Quibi)およびディス・オールド・ハウス(This Old House)のコンテンツの権利を獲得するなど、その規模は拡大の一途をたどっている。
今回インタビューに応じたエージェンシー幹部は皆、口を揃えて予測する。「ロク・リコメンドはスマートテレビ市場でかなりユニークな存在だ。2021年のアップフロント交渉でも、限られたスポンサー枠を巡って多くの広告主が関心を示すのは間違いない」。またスマートテレビ市場ついて、今後もこの種のイノベーションが起こっていくだろうと彼らは語る。
スマートテレビの配信プラットフォームでは、従来のテレビCMのようにインタースティシャル広告を配信するケースが多かったが、ここにきてHulu(フールー)が広告配信を停止するなど、従来の広告フォーマットにとどまらない取り組みが加速している。「スマートテレビにおける新たなテイクオーバー広告という見方もできる」という意見を、エージェンシー幹部のひとりは述べている。
メディア企業がターゲットか
ロクとライセンス契約を結び、ロク・チャンネルなどでコンテンツ配信を行っているあるメディア企業の幹部は、「ロク・リコメンドについては知らなかったが、非常に楽しみなプログラムだ」と期待を寄せる。今や多数のプラットフォームが次々にコンテンツを配信しているスマートテレビ。オーディエンスに自分たちの動画を知ってもらうのは容易ではなく、そのためのさまざまな試行錯誤が続けられている。
そんななか、必ずしも蜜月関係とは言えないメディア企業と配信プラットフォーマーの関係性を考えても、ロクもなんらかの形でメディア企業に出資を求めていく可能性は高い。たとえばメディア企業が出資する完全スポンサー型の番組などが、すぐに考えられる。あるいは配信契約条項のひとつとして、ロクのプロモーションを盛り込む可能性も高い。ある動画配信サービス企業の幹部は、「ロクはこれまでも、メディア企業に対しロクのプラットフォーム上で宣伝広告動画を配信するよう働きかけており、ロク・リコメンドも同じの戦略に則ったアプローチだ」と指摘する。
この企業がロクと配信契約交渉を行った際、リコメンドのバナーについて話があったという。「インベントリーに空きができたら連絡する。一般的にこれくらいの価格だ。興味があればキャンペーンについて話し合おう」と、ロクは強気な姿勢を崩さない。それゆえ、「間違いなくそれなりの金額にはなる」と配信サービス企業の幹部は語る。
TIM PETERSON(翻訳:SI Japan、編集:長田真)