巨大なプラットフォームとメディアとの関係が不透明になるなか、オンラインジャーナリズムはどのような道を進むのか。毎日新聞グループホールディングスデジタル担当取締役の小川一氏から、ポスト・ヤフー時代における展望について講演いただいた。毎日新聞は今後、「リアルイベント」と「ライブ動画」に期待していると同氏は語る。
平成の30年間は、ヤフー(Yahoo! JAPAN)が巨大なプラットフォームへと成長し、既存メディアがそれに巻き込まれながらも共生をめざした時代だった。
そのヤフーが昨年、LINE(ライン)との経営統合を図り、従来の姿を急速に変えようとしている。巨大プラットフォームとメディアの関係が不透明になるなか、オンラインジャーナリズムはどのような道を進むのか。
「ヤフーは、これまで2回の社長交代を経て、大企業へ成長するにつれて、そのニュースへの熱量は失われていったように感じる。以前は、mainichi.jp への流入は、6割がヤフー経由だったが、最近は1割まで減った」と、毎日新聞グループホールディングスデジタル担当取締役、小川一氏は語る。「その代わりに流入元として台頭してきたのがLINEだ。これからは、LINEかなと思っていた矢先に、両社の経営統合が発表された。そのため、ポスト・ヤフー時代の模索が急務になった」。
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Twitterのフォロワー数2万9000、NewsPicksのフォロワー数1万4000と、5大全国紙の役員ながら、自身もインフルエンサーとしても活躍する小川氏。2020年2月、DIGIDAY[日本版]が主催した「PUBLISHING SUMMIT 2020」にて、ヤフー巨大化のはじまりからポスト・ヤフーの現在まで、メディア同時代史を振り返りながら、その将来像を語ってくれた。
以下、そのセッションの要約と動画アーカイブだ。
ヤフーの躍進は、ニュースのおかげ
「日本の新聞社の総売上高は、1998年に2兆4900億円もあったが、2018年には1兆6619億円となっている。20年で8000億円以上も落ち込んだ。一方、ヤフー株式会社(現:Zホールディングス)の1998年の売上高は12億円、いまと比べると姿かたちもないようなものだったが、2018年には8971億円まで伸ばしている。つまり、新聞業界の売上をヤフーがまるごと乗っ取っていったと見ていいような数字となっている。こうしたヤフー躍進の理由のひとつは、明らかにニュースをサービスに取り入れたことにある」。
部数の下落は、スマホの普及が原因
「『なんでこんなバカなことをしたのか?』と、よく聞かれるのだが、1996年7月にヤフーニュースへはじめてコンテンツ提供した新聞社は、毎日新聞だった。そのころは、まだヤフーはスタートアップ企業で、まだ誰にも知られていなかった。しかし、当時のPC-VANやニフティサーブは、コンテンツ提供先として、毎日新聞のいいお客さんだった。結構なお金になった。これがインターネットかと思い、私の先輩たちは、ヤフーにもコンテンツを提供したのだと思う。もともとテレビと新聞は、コンテンツ提供先・提供元として、うまく共存していた。それと同じように、インターネットともうまくやれるだろうと思ったのだろう。実際、当初は広告売上が下がった程度で、しかし、2010年ころからスマートフォンが普及しだし、新聞の発行部数は恐ろしい勢いで落ち込んだ」。
ポスト・ヤフーの時代で生きる道
「デジタル担当の役員をしていて、ポスト・ヤフー時代になんとかしたいことのひとつは、1億人という言語の壁をやぶること。そこで、海外の毎日新聞との提携企業を視察した際、影響を受けたのが『リアルイベント』と『ライブ動画』だ。これからのポスト・ヤフーの時代で生きる道になるかもしれないと思った。と、同時にマスメディアはソーシャルメディアのなかで居場所を確保する必要がある。すべての記者が個人としてソーシャルメディアに投稿できるようになれば、ぜんぜん違う展開ができるのではないだろうか。特に若手を中心にこれから期待できるはずだ」。
小川氏によるDPS2020のセッション「ポスト・ヤフー時代のオンラインジャーナリズムを展望する」の全容は、以下の「DIGIDAY Video」にて確認してほしい。
DIGIDAY Video とは?
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Written by DIGIDAY[日本版]編集部