DIGIDAY[日本版]では、国内主要パブリッシャーの幹部43名に、各社の収益構造についてアンケートを実施した。その結果、いまのところ各社のマネタイズ手法における、主要なカテゴリーは「プログラマティック広告」「広告直接販売」「ブランデッドコンテンツ」「動画広告」4つであることがわかった。
パブリッシャーの収益の軸となっており、広告主にとってはパーチェスファネルの上位に位置する「認知」獲得のための広告である、「プログラマティック広告」「広告直接販売」「ブランデッドコンテンツ」、そして引き続き収益化への期待値を高める「動画広告」4つのチャネルにフォーカスして2019年の収益実績と2020年の収益予想を比較して紹介する。
「ブランデッドコンテンツ」は今後、もしかしたら厳しい局面を迎えるのかもしれない。
DIGIDAY[日本版]では、2020年2月12日から2日間に渡って、DIGIDAY PUBLISHING SUMMIT2020を開催。そこに参加した国内主要パブリッシャーの幹部43名に、各社の収益構造についてアンケートを実施した。
その結果、いまのところ各社のマネタイズ手法における、主要なカテゴリーは「プログラマティック広告」「広告直接販売」「ブランデッドコンテンツ」「動画広告」の4つであることがわかった。そこで本記事では、これらのチャネルにおける「2019年の収益実績」と「2020年の収益予想」を比較して、各カテゴリーの動向を追うことにする。
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動画広告は、ほどほど儲かるように
動画広告において、2019年の実績と2020年の収益予想を比較すると、「多額」「ほどほど」の伸びが目立つ。その一方、「超多額」は引き続き0%のままで、「小額」「極少額」「無収益」のパーセンテージが軒並み下がっているところを見ると、動画広告は「2020年も大きく収益化はしないものの、それなりに儲かるようになる」と読まれているのだろう。
ソフトバンクでは3月27日から、商用の5Gサービスが開始される。予定通りなら、auも3月中に、ドコモもこの春中に、同様のサービスを開始するだろう。NHKも3月1日に、地上放送のテレビ番組をインターネットで同時に配信する「常時同時配信」を開始したばかりだ。そして、この夏、コロナショックが収束して、東京オリンピックが無事に開催されるなら、動画広告がさらなる需要を拡大させるシナリオも見えてくる。
プログラマティック広告は、さらに拡大
プログラマティック広告における、2019年の収益実績と2020年の収益予想を比較すると、あまり大きな変化は見られない。しかし、よく見比べると、「超多額」「多額」がやや伸長している一方、「ほどほど」「極少額」はやや減少している。つまり、プログラマティック広告は今後も大きな収益源であることが期待されているだけでなく、さらなる拡大も期待されているようだ。
広告主のアドフラウド、ブランドセーフティ、ビューアビリティに対する懸念は、年々高まる一方だ。それに応じて、オープンWebへの広告ニーズは減少し、プレミアムパブリッシャーへの広告ニーズは拡大している。この調査結果には、そうした気運が反映されているのだろう。「枠から人へ」というのは、もはや過去の話。「枠」と「人」、両方を満たせる場が、いまデジタル広告では求められている。
広告直接販売は、ぼちぼちの伸び
広告直接販売における、2019年の収益実績と2020年の収益予想を比較すると、プログラマティック広告同様にあまり大きな変化は見られないものの、やはり拡大は期待されているようだ。しかし、「超多額」は同数値のままで、「多額」だけが伸びている様子を見ると、プログラマティック広告ほどの拡大は、予想されていないのだろう。
広告直接販売は、本来もっとも利益率の高いカテゴリーのひとつだ。しかし、中継のプレイヤーが省略されるため、サプライ側およびデマンド側、両方の負担が大きくなる場合が多い。しかも、良質なオーディエンスを得ることはできても、リーチはなかなか稼げない。広告主から選ばれるには、それなり以上のブランディングとリソースが必要となり、限られたメディアしか実行できない収益化手段といえる。
ブランデッドコンテンツは過当競争時代へ?
ブランデッドコンテンツにおける、2019年の収益実績と2020年の収益予想を比較すると、非常に興味深い動きが見えている。「多額」のみが伸長し、「超多額」だけでなく、「ぼちぼち」「少額」「超少額」もそれぞれ減少している。つまり、「超多額」で収益化できる時代が収束し、それなりにしか儲からない時代になってきたということだ。もしかしたらプレイヤーが増え、過当競争の様相を呈してきているのかもしれない。
インターネット人口が拡大し、個々のニーズに沿った形でメディアがますます細分化していくなか、デマンド側およびサプライ側、双方にとってブランデッドコンテンツは、比較的お手軽に実行できる手段といえる。しかし、メディアの数が増加しすぎてしまうと、需要と供給のバランスが崩れてしまうのは、当然の理だ。パブリッシャーとしては、そのへんの見極めを常に意識しておく必要がある。
Written by 吉田 圭二