「Digiday+ Talk」は、業界のリーダーとディスカッション繰り広げるオンラインイベント。9月9日に開催された第三段には、INFASパブリケーションズ、デジタルマーケティング部部長の櫻井雅弘氏が登場。その時の様子を収めた動画(DIGIDAY+ プレミアム会員限定)と、簡単なレポートをお送りする。(※動画はDIGIDAY+の「プレミアムプラン」ユーザー専用のコンテンツです)
国内外のファッション・ビューティーブランドのデジタル移行が、コロナ禍で加速している。多くの企業が変革に挑むなか、業界のインサイトを伝える専門誌はどうあるべきか。
ファッション・ビューティー業界のインサイトを伝えてきた専門誌、「WWDJAPAN」がいま、新戦略に基づく大きな組織改編に挑んでいる。紙面主体だったビューティー領域を「WWDJAPAN.com」に統合するものだが、その狙いは単なるブランド統合やデジタル化ではない。
「現状を否定しないといけないようなニュースではなく、次の選択の後押しになるようなメディアを作りたい」。こう話すのは、INFASパブリケーションズ、デジタルマーケティング部部長の櫻井雅弘氏だ。櫻井氏は、2016年にINFASパブリケーションズに入社し、現在はデジタルメディア「WWDJAPAN.com」の成長戦略、サービス企画開発などに携わっている。
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WWDは、ファッション・ビューティ業界から多くのニーズを獲得している、老舗の業界専門誌である。アメリカで1910年に創刊され、日本版は1979年にスタート。2007年からデジタルメディアへの展開もはじめている。そして2020年9月、「ONE WWD JAPAN」をかかげ、大幅な組織改編へと舵をきった。
櫻井氏は、9月9日に開催されたオンラインイベント、DIGIDAY+TALKSの日本版第3段、「『WWD JAPAN』は、いかにビジネス拡張するのか」に登場。WWD JAPANが目指す、これからのプロシューマ向けメディアのあり方を語ってもらった。以下は、その様子を収めた動画と簡単なレポートだ。(動画はDIGIDAY+の「プレミアムプラン」ユーザー専用のコンテンツです)。
01:我々が学んだこと
WWD JAPANが実施したこと
- 大幅な組織改編:2020年9月に行われた改革前、WWD JAPANのメディアは、雑誌/Webといった「媒体の垣根」「ジャンルの垣根」が強い体制のもとで運営されていた。たとえば旧体制では、ファッションを取り上げるWWD JAPANと、ビューティーを取り上げるWWD BEAUTY、それぞれに編集部があった。また、それとは別にデジタルメディア、WWDJAPAN.comを専業で担当する編集部が設けられていた。
しかし現在、WWD JAPANのメディアは、「ONE WWD JAPAN」という旗印のもと、ファッションを主に取り上げるWWD JAPAN編集部と、ビューティーを主体とするWWDJAPAN.com編集部という、2体制で運営されている。ファッション専門のスタッフ、ビューティー専門のスタッフそれぞれが、週刊誌、デジタルコンテンツの両方を担っているという。加えて週刊誌、WWD BEAUTYをWWDJAPAN.comに統合。ジャンルの垣根を超え、新たな取り組みができる体制を構築しようとしている。
- コンテンツの多様化:WWD JAPANは、業界のプロシューマー(生産消費者)が多く購読している媒体だ。櫻井氏によると、現在そのプロシューマーのニーズが一層多様化しているのだという。そのため、メディア側からの一方的なコミュニケーション、そして限定的なメディア/コンテンツ形式では、それらのニーズに応えるのが難しくなっているという。そこでWWD JAPANでは、雑誌やWeb、SNS、メールマガジン、リアルイベントを活用することでメディアのバリエーションを多様化。コンテンツ形式も、テキストに加えて、音声や動画などに裾野を広げていくことで、より多様な読者の楽しみ方に対応しようとしている。
- 記者をプロデュース:櫻井氏は、読者のエンゲージメント獲得戦略として、記者のインフルエンサー化をそのひとつとして掲げている。具体的には、各記事やメールマガジンに、署名、写真、プロフィールを掲載することで、記者がどのような背景からその記事を執筆しているのか、読者が把握できるように工夫をしているという。
また、DIGITAL DAILY(デジタル・デイリー)やEditors’ Letter(エディターズ・レター)といったメールマガジンを用いた、記者のプロデュースにも取り組んでいる。Editor’s Letterでは、読者は定期的なアンケートのほか、担当編集者に直接返信することで編集部員と、コミュニケーションを取ることが可能だ。一見コストがかかりそうに思われるが、櫻井氏は「反響が見え易く、非常にやりがいがある。質の高い読者の反応を感じ取ることができるのは、記者としてもモチベーションアップに繋がる」と述べる。
櫻井氏が語る変革のヒント
- まずはチャレンジする:音声や動画といった新しいコンテンツに関しても、スピーディに「まずはチャレンジする」というスタンスを心がけていると、櫻井氏は述べる。基本的に、小規模にさまざまなコンテンンツをテスト配信し、細かく改善・変更を加えていく方針を取っているのだという。たとえば、コロナ禍以前からはじめたという「アンダー30プロジェクト」では、「若者による若者向けのコンテンツ作り」を目指しているそうだ。そこで、20代の若手社員を集め、TikTokやインスタグラムのリール(Reels)など、最新のSNSフォーマットの使い方などを、チーム間で共有したのだという。
- 歩み寄りが大切:「現在ファッション・ビューティー業界の各企業は、成長と衰退の岐路に立たされている」と櫻井氏。WWD JAPANが、ファッションとビューティーというジャンルの壁に囚われないよう組織改編を進めたのも、こうした状況を変えていきたいという思いがあってこそだ。「ファッションとビューティー、それぞれが持つ強みを生かすために、双方の歩み寄りが大切だ」。
02:イベント動画
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※動画再生時間:約60分
Written by 小玉明依、村上莞
Photo by WWD JAPAN