「Digiday+ Talk」は、業界のリーダーとディスカッション繰り広げるオンラインイベント。11月10日に開催された第4段には、カネボウ化粧品のマーケティング部門 コミュニケーション企画グループ部長務める加藤義久氏が登場。その時の様子を収めた動画(DIGIDAY+ プレミアム会員限定)と、簡単なレポートをお送りする(※動画はDIGIDAY+の「プレミアムプラン」ユーザー専用のコンテンツです)。
新型コロナウィルスの感染拡大防止のため、各業界はワークスタイルやサービスのオンライン化を余儀なくされている。
デパートや百貨店で扱われるコスメブランド、いわゆる「デパコス」も、大きな影響を受けた分野のひとつだ。というのも、デパコス分野における顧客体験(以下、CX)の魅力は、美容部員によるアドバイスやカウンセリングといった、リアルなコミュニケーションに依拠しているからだ。そんななか花王傘下のカネボウ化粧品は、百貨店でのリアルなCXの価値をデジタル上でも担保するための、新たな施策を試みている。それは、同社が以前から構想していた、オンライン・カウンセリングだ。
「コロナ禍を受け、オンライン・カウンセリングをはじめ、カネボウ化粧品のDXが加速したように思う」。こう語るのは、カネボウ化粧品のマーケティング部門 コミュニケーション企画グループ部長務める加藤義久氏だ(※肩書きはイベント実施時のもの。同氏は1月より、花王株式会社 DX戦略推進センター カスタマーサクセス部 CXソリューション室 室長に就任)。同氏によると、カネボウはコロナ禍以前から、データ戦略やその運用体制を構築するなどDX(デジタル・トランスフォーメーション)を積極的に進めてきたが、当時社内におけるDXへの認識は「漠然とした」ものだったという。しかしコロナ禍を受け、そうした状況は一変。オンライン・カウンセリングをはじめとしたDXは一気に加速した。
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加藤氏は、11月10日に開催されたオンラインイベント、DIGIDAY+TALKSの日本版第4段「デパコス、余儀なくされた『CX改革』の現在」に登壇。当日は、DIGIDAYの姉妹メディア、GlossyJapanで編集長を務める、山岸祐加子氏による司会進行のもと、カネボウ化粧品が取り組むCX改革とDXについて語ってもらった。以下は、その様子を収めた動画と簡単なレポートだ(動画はDIGIDAY+の「プレミアムプラン」ユーザー専用のコンテンツです)。
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01:我々が学んだこと
加速したDX
- オンライン・カウンセリングの中身:百貨店のCXといえば「おもてなし感」や「アフターサービスの充実度」が特徴として挙げられるだろう。しかし、コロナ禍で対面営業が難しくなってしまったなかでも、こうしたCXを実現していくために加藤氏が推進しているのが、顧客へのオンラインカウンセリングだ。このプロジェクトは、以前から進めていた計画だったが、コロナ禍を受け大きく進展。現在は、同社が展開するブランドのKANEBO(カネボウ)のみでのトライアルしている段階だが、来年以降は他ブランドも視野に入れて本格的展開することを目指している。
では、その座組みはどうなっているのか。専用サイトからカウンセリングの予約をした顧客は、オンライン対応のトレーニングを受けた、現役の美容部員によるカウンセリングを受けることができる。なお、美容部員へのトレーニングは加藤氏自ら行ったという。また、カウンセリングはZoom(ズーム)を使用して行われるため、カネボウ化粧品ではミーティングのアレンジメントや顧客への連絡を行う事務局も設置済みだ。
今後に関しては、非接触のカウンセリングで最大の課題となるテスターを効果的に実現するため、メイクアップシュミレーターとの連携を視野に入れているという。
加藤氏が考えるCX
- 最適なCXを創出するための3ステップ:加藤氏は、顧客起点のCXを構築するための3つのステップを提示した。ステップ1は「生活者の声を常に収集し、分析すること」。そして、その声に基づいて「新たなタッチポイントを創出する」ことがステップ2。タッチポイントが増えれば増えるほど、顧客データは蓄積されるが、ステップ3は、そこで得られたデータを基に、顧客の「インサイトをさらに深堀り」することだという。そこから得られたものをコミュニケーションに活用していくというサイクルで、「顧客が求めるCXを実現できると考えている」と加藤氏は述べる。
- 3ステップを実現するための環境構築:こうしたステップを実行するためには、仕組み作りも欠かせない。カネボウ化粧品では昨年、BIツールを導入し、そこにあらゆるデータを集約。ブランドの状況や顧客の行動を可視化する仕組みを構築した。現在は、このBIツールのログイン権限を各スタッフに付与し、24時間365日、自分が気になったタイミングで、ブランドの状況が把握できる体制になっているという。
今後の展開
- オン×オフのハイブリッド型で:コロナ禍の影響もあり、現在Z世代より上の世代でもデジタルメディアへの接触頻度が上がり、eコマース市場も拡大している。だが加藤氏は、「リアル店舗がなくなることはない」と主張。続けて、オンライン特有の体験価値は「痒いところに手が届く」ことで、時間や地理的な障壁をフォローするためのツールにすぎないと付け加える。実際オンライン・カウンセリングについても、オフラインとのハイブリッド型で検討しているという。「オンラインにせよオフラインにせよ、重要なのは、ターゲットになる顧客を起点に、最適な販路とブランド体験を届けることだ」。
- 「生活者×企業」の共創型のマーケティング活動を:加藤氏は、今後は、よりインタラクティブ性に富んだ、「生活者×企業」の共創型のマーケティング活動が求められるようになると語る。その背景には、「あらゆるメディアがSNS化している」ことが挙げられる。たとえば、これまでテキストコンテンツが主体であったWebメディアも、レビューや読者の意見をコンテンツ制作に役立てたり、もしくはそれそのものをコンテンツにするといった取り組みを展開している。こうした状況を踏まえ、加藤氏は顧客と企業、相互の「絆」をブーストしていくようなマーケティング活動を進めていきたいと強調する。
02:イベント動画
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Written by 小玉明依、村上莞
Image by Kanebo