9月24日に開催された「Digiday+ Talk」第四段「ソーシャル動画で、いかに『シズル感』を生み出すか?」。当日は、Pinterestの舩越氏、Tastemade Japanの柳瀬氏、C Channelの松崎氏が登場。(※動画はDIGIDAY+の「プレミアムプラン」ユーザー専用のコンテンツです)
「バズる」とは、コンテンツが話題となり、拡散されることだ。しかし、それ以上の効果――たとえば、ブランドリフトやコンバージョン――への貢献は、案外少なかったりもする。それに対して、「シズル感」とは、生活者の感覚を刺激して、態度変容を促すことを意味する。
コロナ禍により、オンライン動画のニーズが若者を中心に高まった。それを受けて、ブランドやリテーラーたちの動画ニーズも増えている。そんななか、動画コンテンツを配信するメディアやプラットフォームは、いかにシズル感を醸成しつつ、生活者の態度変容を促し、ブランドリフトやコンバージョンに貢献しているのか。
9月24日に開催されたオンラインイベント、DIGIDAY+ TALKSの日本版第4段では、Pinterest(ピンタレスト)でグロース・オペレーションズ日本代表を務める、舩越貴之氏、Tastemade Japan(テイストメイド・ジャパン)でDirector of Sales & Partnershipsを務める柳瀬敦氏、そしてC Channel(シーチャンネル)のメディア部部長の松崎美緒氏が登壇。「ソーシャル動画で、いかに『シズル感』を生み出すか?」と題し、「バズる」ではなく、シズル感のあるコンテンツを生み出すための取り組みについて、コロナ禍の影響を踏まえつつ話を聞いた。
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以下は、その様子を収めた動画と簡単なレポートだ(動画はDIGIDAY+の「プレミアムプラン」ユーザー専用のコンテンツです)。
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01:我々が学んだこと
各社が受けたコロナ禍の影響と対応
- ポジティブなマインドセットを形成:ビジュアル探索ツールとして知られていたプラットフォームのPinterestは、これまで一部のパートナー企業に使用が限定していた動画投稿機能を、2020年7月より、すべてのビジネスアカウントに対して開放した。動画コンテンツの拡充により、これまで以上にアイデアの発見とその実現をサポートしていくという。
Pinterestは、個々のユーザーの興味関心に合ったアイデアに出会えるよう、独自のアルゴリズムによってコンテンツのレコメンドを最適化している。ユーザーは、実生活に活かしていけるようなインスピレーションを受け取るプラットフォームとして、Pinterestを活用することができるという。舩越氏はPinterestを通じ、ユーザーがステイホームによる閉鎖感のなかでも、新しいアイデアへと繋がる、ポジティブなマインドを形成するためのサポートができたと強調する。
- 実践を促すコンテンツ作り:フード系を中心に、SNSで動画コンテンツを展開する分散型メディア、Tastemade(テイストメイド)。2016年には、国内でTastemade Japanをローンチし、現在はフード系のみならず、トラベルからDIYといったジャンルに至るまで、シズル感のある幅広い動画コンテンツを制作している。
そのTastemade Japanは、このコロナ禍で動画再生回数は以前の7倍近く、そしてフォロワー数も倍以上伸長したという。背景にあるのは、ステイホーム需要だ。コロナ禍で外出が制限されていたときには、手間がかかるレシピ動画よりも「時短」や「簡単」といった軸を打ち出し、実践を促すコンテンツが多く再生されたという。Tastemade Japanはこれを受け、フード系を中心に実践を促すコンテンツを強化。動画再生回数やフォロワー数の増加に繋がった。
また、自粛ムードが薄れた現在は、フード系だけでなくトラベル系コンテンツの再生回数も伸びているという。「旅行に行きたいというユーザーのインサイトが顕在化しているため、その期待に応えたいと考えている」と柳瀬氏は語る。
- 他人起点から自己起点へ:「FIND YOUR “CAWAII” WAY」を掲げ、ビューティーに特化したコンテンツを手がけるC CHANNELも、コロナ禍を受けて多様化した購買行動に適応しつつ、シズル感のある動画作りに取り組んでいる。現在は、動画制作/配信に加え、インフルエンサーと企業のマッチングプラットフォーム、Lemon Square(レモンスクエア)も運営するなど、幅広く事業を展開している。
「情報性・メリット・映えを強化し、心が動くほどの変化量をコンテンツに盛り込む」ことを目指してきたC CHANNEL。しかし、コロナ禍のなか同社が実施した調査では、生活者のコスメ利用率の低下、およびそれによるコスメ購入量の減少が見られたという。松崎氏はこの結果について、「コスメビューティーへの関心が、他人起点の承認欲求によるものであることが健在化した」と述べる。そこで、C CHANNELでは現在「ビューティーへのモチベーションを、他人起点から自己起点へと切り替えられるような、新たなコンテンツの枠組み作り」に挑んでいる。
「シズル感」を出すために
- パーソナライズ×セレンディピティ:舩越氏は、高いシズル感に繋がるとして、「パーソナライズ」と「セレンディピティ」という、一見矛盾するようにも思えるキーワードを重視している。「ウィンドウショッピングでの偶然の出会いも、そもそも自分が潜在的に興味がなければ興味すら湧かないだろう」と述べる。セレンディピティが醸成されるにも、個人の趣味趣向が前提として作用しており、それらはアルゴリズムでパーソナライズ可能だというのが同氏の主張だ。
- 鍵は「没入感」:一方柳瀬氏は、シズル感を醸成するには『没入感』が重要であると語る。同社では現在、ユーザーが没入感を味あわえるように、クリエイティビティとデータの二軸で動画制作を行っているという。データに関しては、Tastemade Japan内でグローバルに共有されているものや、Pinterestをはじめ、SNS経由の定量的なデータを活用。また、アンケートを実施しユーザーからのリアルな声も取り入れ、コンテンツ作りに役立てており、クライアント案件のブランデッドコンテンツでも活用されている。
- 多様化する購買行動に着目:先に述べたように、コロナ禍によりユーザーの購買行動は多様化している。そんななかC CHANNELが重要しているのは、半歩先、一歩先のトレンドと、タイムリーなトレンド、このふたつを押さえた動画を展開することだ。C CHANNELでは月に一度実施する大規模なユーザー調査と、インスタグラムのストーリー機能など、SNSを活用したラフな質問調査のふたつを通じて、トレンドを可視化しているという。また、一つひとつの動画についても、どこでユーザーが離脱したのかなど、細かな反応を数値化してコンテンツ作りに活かしている。
02:イベント動画
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※動画再生時間:1時間23分
Written by 小玉明依、村上莞
Photo by WWD JAPAN