インスタグラムはインフルエンサーエンゲージメント詐欺の抑制に努めているが、インフルエンサーマーケティング測定企業インスタスクリーナー(Instascreener)のレポートで、インスタグラムでフェイクエンゲージメントが再び増加していることが明らかになった。
新たなレポートによると、インスタグラム(Instagram)では特に、インフルエンサーマーケティング詐欺がマーケターにとって問題であり続けているという。
インスタグラムはインフルエンサーエンゲージメント詐欺の抑制に努めているが、インフルエンサーマーケティング測定企業インスタスクリーナー(Instascreener)のレポートで、インスタグラムでフェイクエンゲージメントが再び増加していることが明らかになった。
インスタスクリーナーのデータによれば、インスタグラムがサードパーティアプリからユーザーの「いいね!」やコメントを非表示にしたあとの5月には、インフルエンサーマーケティングにおける偽のフェイクエンゲージメント率が、本物のオーディエンスがもっとも少ない特定のアカウントで1.7%から1%に低下した。だが、2019年の9~10月には、偽のエンゲージメント率を報告するインフルエンサーの一部が、インスタグラムの手法を回避する方法を見つけたため、そうしたアカウントの偽のエンゲージメント率は1%から1.2%近くに上昇した。
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エージェンシー幹部やブランドマーケターによると、問題の原因は、インフルエンサーマーケティングの成功を示す最上位の指標としてエンゲージメントが優先されてきたことにあるという。だが、エンゲージメント率は多くの指標のひとつにすぎないと見なすべきだ、というメディアバイヤーやブランドマーケターもいる。インフルエンサーマーケティングがうまくいっているかどうかを把握するには、もっと深く掘り下げた調査を行う必要があるという。また、より多くのデータを広告主やエージェンシーと直接共有するようインフルエンサーに求める必要があると、マーケターは指摘する。
インスタスクリーナーの共同創業者であるショーン・スピルバーグ氏は、「こうしたフェイクフォロワー問題の解決で、インスタグラムの対応を当てにできるとは限らない」と語る。「フェイクフォロワーやフェイクエンゲージメントは、軍拡競争のようなものだ。インスタグラムが詐欺を検知する新しい優れたアルゴリズムを開発すると、誰かがすぐにその回避方法に取り組みはじめる」と、同氏は続ける。「その後、詐欺が再び徐々に増加する。インスタグラムが問題を解決してくれるのをブランドやエージェンシーが待っていたら、決してゼロにはならないだろう」。
インスタグラムにコメントを求めたが、いまのところ回答はない。
利用が減っているわけではない
メディアバイヤーは、インスタグラムやインフルエンサーマーケティングの利用を控えるよう顧客に指示していないと述べている。これは、インスタスクリーナーのレポートに反映されている。2019年には、米国とカナダでインフルエンサーマーケティングに企業が費やした金額は19億ドル(約2068億円)だったが、そのうち14億ドル(約1524億円)がインスタグラムでのインフルエンサーマーケティングに充てられていた。だが、インスタスクリーナーによれば、インスタグラムに支出された14億ドルのうち2億5500万ドル(約277億円)は、フェイクフォロワーがいるアカウントに浪費されたという。
「エンゲージメント詐欺がブランドとエージェンシーのあいだで一様に懸念材料であるのは確かだ」と、デジタルエージェンシーで働く匿名希望のあるメディアバイヤーはいう。「とはいえ、エンゲージメント詐欺の懸念だけを理由にブランドがインフルエンサー戦術を敬遠することは推奨してこなかったし、そうするのを一般には目にしていない」。
インフルエンサーマーケティングを敬遠する代わりに、メディアバイヤーとブランドマーケターは、提携するインフルエンサーを選ぶ判断においてエンゲージメントは唯一の理由ではなく、ひとつの要因に過ぎないと見なしつつある。「成功の目安としてエンゲージメント率をまだ利用している」と、消費者向けパッケージ商品を扱い、インフルエンサーを利用している大手企業のマーケターは語る。
「マーケターは皆、この分野で適切な指標が何であるのか把握しようと努めている。実態分析のために『いいね!』やコメントに注目するが、売り上げにさらに密接につながるより高度な測定も利用している」と、前出のマーケターは述べた。同氏は、インフルエンサーマーケティングの成功の測定に自社が依存している高度な測定の詳細については明かさなかった。
「人々が規模に困惑する業界」
「提携しているインフルエンサーが当ブランドに関するフォロワーとの会話を誘導していることを確認したいので、エンゲージメントはまだ重要な指標だ」と、360iでソーシャル及びインフルエンサーマーケティング担当バイスプレジデントを務めるクリスティン・マーベリック氏は、メールに書いている。「ブランドがインフルエンサーのオーディエンスの共感を呼び、検討とコンバージョンを促しているか確認するために、コメントを徹底的に調べている」。
「だが、全容を把握するためにほかの指標も見る。顧客のeコマースサイトでの『DoubleClick Campaign Manager』(DCM)のトラッキングによる売上追跡データや、ディスカウントコード、有料ソーシャルメディアの検索結果など、さまざまなツールを利用する」と、マーベリック氏は付け加えている。
インフルエンサーマーケティングエージェンシー、ビレッジマーケティング(Village Marketing)の創業者であるヴィッキー・シーガー氏は、エンゲージメント率は、マーケターがインフルエンサーマーケティングの効果の評価に利用するにはふさわしくない測定結果だと指摘する。そのかわりに、マーケターはストーリーの閲覧数やステッカーのタップ数を共有するようインフルエンサーに頼むべきだという。シーガー氏の顧客はアフィリエイトコードも利用し、マーケターが売上データをインフルエンサーマーケティングによるものと考えることができるようにしている。
「インフルエンサーマーケティングは、人々が規模に困惑する業界だ。インフルエンサーを見て、彼らが(顧客のために)していることを理解するのは実に難しい。マーケターは適切な質問をして詐欺と闘う必要がある。過去のストーリーのスクリーンショット数やストーリーの平均閲覧時間を問えばいい。先週と1カ月前の数字を訊いてほしい」とシーガー氏はいう。
長期的な指標の分析が重要
エージェンシーと広告主は、インフルエンサーマーケティングに関する考え方を全体的に調整する必要があると指摘するメディアバイヤーもいる。インスタグラムでインフルエンサーを利用して、特定のタイミングに直販を実現するのではなく、もっと「長期的な焦点」を保ち、インフルエンサーの活動を利用して、自社ブランドや消費者が求めるものについてもっと理解すべきだと、ザ・ベリアブル(The Variable)のソーシャルメディア担当ディレクター、ローレン・デュビンスキー氏は語る。クロロックスカンパニー(The Clorox Company)がインフルエンサーのアドバイザリー会議を設置するなかで、いま実現しようとしているのは、そういうことだ。
焦点をシフトして長期的な指標を分析することが、マーケターにとって重要な可能性もある。「インフルエンサーマーケティングの世界では、ブランドとクリエイターの関係が依然としてカギだ。ブランドが適格で熱心なオーディエンスがいるとわかっている代弁者を見つけられれば、そうしたクリエイターとの長期的な関係に取り組むことが、より良いコンテンツや、支出が無駄になっていないことを把握しているという確信につながる可能性がある」と、前述のメディアバイヤーは語った。
Kristina Monllos(原文 / 訳:ガリレオ)