コネクテッドTVのアドバイイングは、いまのところ従来型テレビのダイレクトバイイングとほぼ同じだ。しかし、従来型テレビとOTTテレビで利用できるプログラマティックチャネルが着々と構築されている。その結果、テレビとデジタル動画でインベントリー(在庫)が重複するケースが増え、エージェンシーらは対応を迫られている。【※本記事は、一般読者の方にもnoteにて個別販売中(480円)です!】
コネクテッドTVのアドバイイングは、いまのところ従来型テレビのダイレクトバイイングとほぼ同じだ。しかし、コネクテッドTVプラットフォームやアドテク企業が、従来型テレビとOTT(オーバー・ザ・トップ)テレビで利用できるプログラマティックチャネルを着々と構築している。その結果、テレビとデジタル動画でインベントリー(在庫)が重複するケースが増え、エージェンシーのアドバイヤーは対応を迫られている。
従来型とデジタルの混線
従来型テレビのアドバイヤーは、テレビ会社のコネクテッドTVのインベントリーを、ほかの従来型テレビ広告を補完するものとして購入しているが、デジタルメディアのアドバイヤーは、質の高いデジタル動画インベントリーとして購入している。このような状況が、ひとつのエージェンシー内でも、広告主が契約したエージェンシー同士でも見られるという。
「誰が何を扱っているのか、(広告主の)デジタル部門と従来型テレビ部門のどちらが扱っているのかが、ややわかりにくい状況にある」と、デジタルエージェンシーのエッセンス(Essence)で北米地域のディスプレイアクティベーション担当バイスプレジデントを務めるマニー・エルナンデス氏は話す。
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マレンロー・メディアパブ(MullenLowe Mediahub)で動画とデータ駆動型投資担当シニアバイスプレジデントを務めるマイク・パイナー氏は、「コネクテッドTVは、まさにデジタルとテレビのギャップを埋める統合的なチャネルだ。だが、どこで扱われているのかがよくわからない」と述べている。
統合を試みるエージェンシー
エージェンシーのなかには、テレビとデジタル動画の統合に乗り出したところもある。たとえば、アールピーエー(RPA)は全米を対象とした投資チームを結成し、リニアテレビ(従来型テレビ)やアドレサブルテレビから、同社が「『VOD+』という社内用語で呼ぶ」メディアまで含めたあらゆるメディアに対応していると、同社のシニアバイスプレジデントで、全米対象の動画投資とブランデッドコンテンツのディレクターを務めるリサ・ハードマン氏は話す。アールピーエーのいうVOD+とは、ケーブルや衛星のオンデマンド動画からテレビ会社が手がけるデジタルメディアまで、あらゆるメディアを含んだ概念だ。「動画を利用して広告を配信できるすべての場所を指している」と、ハードマン氏は説明した。
だがいま、エージェンシー各社は、そのようなインベントリーにアクセスするための新しい手段を調整する必要に迫られている。ロク(Roku)やサムスン(Samsung)などのコネクテッドTVプラットフォーム、それにザ・トレード・デスク(The Trade Desk)、サイマルメディア(Simulmedia)、コムキャスト(Comcast)傘下のフリーホイール(FreeWheel)のようなアドテク企業は、広告主が複数のパブリッシャーのコネクテッドTVインベントリーを購入できる、自動化されたアドバイイングプラットフォームの展開を進めている。このようなプラットフォームを利用すれば、エージェンシーのアドバイヤーは、コネクテッドTVのインベントリーを以前より簡単に一括購入できる。だが、エージェンシー内の複数の担当者が同じ広告枠を争うケースが増える可能性もあるのだ。
「自社の複数のプログラマティックバイヤーが、同じセルフサービスプラットフォームを利用して、コネクテッドTVを含む複数のメディアに配信される動画を購入する。それから、全米担当の動画チームが、営業担当者に購入をもちかけられた広告プロダクトを、マネージドサービス経由でクロススクリーン広告として購入することになるのだ。いまも存在するこのようなサイロを破壊する必要がある」と、パイナー氏は語った。
サイロを打ち壊すために
エージェンシーは、こうしたサイロを打ち壊すため、プログラマティックに関する知識(特にテレビ関連の知識)を深めようとしている。アールピーエーなどのエージェンシーは、AT&T傘下の広告会社ザンドラ(Xandr)のような企業とミーティングを重ね、新しいテレビ広告購入モデルの構築を急いでいる。もちろん、こうしたミーティングがすぐに大きな変化を購入モデルにもたらすことはないだろう。だが、エージェンシーは、クライアントが大規模なテレビキャンペーン向けのプログラマティック予算を確保したときに、その機会を見逃さずに対応できる態勢を整えたいと考えている。
「市場や金額の規模はたいして大きくないが、そのようなときが来るのは間違いない。すぐには何も起こらないからといって、悠長に構えているわけにはいかないのだ。見て見ぬふりをするつもりはない」と、ハードマン氏は語った。
広告効果に関する疑問はさておき、当面のあいだは、コンピューターで取引できるテレビ広告が増えるほど、コミュニケーションの必要性も拡大する。アドバイヤーは、ディスプレイ広告がプログラマティックの登場によって複雑化したことを教訓にしており、ダイレクトバイイングの担当者とプログラマティックの担当者が同じインベントリーを争うような事態を避けたいと考えている。また、自分たちが購入しているインベントリーの内容を正確に把握できる状態を維持したいと考えている。
「我々は、広告がどこに配信されているのか、どのチームがその広告を購入したのかを把握する必要がある。それが難しくなるのは、みんなが同じ場所で最大限のインプレッションを獲得しようとしたときだ」と、パイナー氏は語った。
ほかにも注意したい点
エージェンシーの幹部たちは、アドテク企業から、人気テレビ番組の新しいエピソードの広告をプログラマティックに購入できると吹き込まれてきた。だが、その手のインベントリーは、テレビ会社にとって非常に価値の高いものだ。そこで、宣伝に疑いを持ったエージェンシーがアドテク企業に問いただしたところ、プログラマティックに購入できたのは、オンデマンド配信されている古いエピソードだったという話もある。
エージェンシーはまた、メディア企業、特にテレビ会社の担当者とのミーティングを増やしている。ダイレクトバイイングとプログラマティックバイイングで重複が起こるのを避けるためだ。これからは、エージェンシーがテレビ会社の「営業担当者」に対して、「インベントリーの監視を求めることもあるだろう」とハードマン氏はいう。「広告主Xと我々の両方がプログラマティックバイイングを行っているという話を耳にしたら、我々に警告してほしい。我々はそのようなことが起こらないように真剣に取り組んでいるのだから」と、彼らに依頼する可能性もあるとハードマン氏は語った。
Tim Peterson(原文 / 訳:ガリレオ)