Googleは2月にサードパーティCookieを廃止していくことを発表した。それ以来、エージェンシーや広告主のあいだでパブリッシャーによるブランディングの調査への期待が高まっている。調査やパネルといった昔ながらの測定方法を見直す動きも出てきているのだ。
Googleは2月にサードパーティCookieを廃止していくことを発表した。それ以来、エージェンシーや広告主のあいだでパブリッシャーによるブランディング調査への期待が高まっている。
広告主はサードパーティCookieをほかの広告機能とあわせて参照することで、サイト間のアトリビューションを特定し、広告を見たオーディエンスが最終的に行動に移すかを把握できる。ChromeはサードパーティCookieを問題視しており、規制当局が同意の取得について厳しい目を向けるなかでマルチタッチのアトリビューションやサイト間追跡は難しさを増す一方だ。これを受けて広告主のあいだで、調査やパネルといった昔ながらの測定方法を見直す動きも出てきている。
ニュースUK(News UK)の商業部門でオーディエンスとデータ担当リーダーを務めるベディール・アイデミール氏は「今後半年ほどのあいだ、こうした動きは間違いなく強まっていくと考えている」と語る。「こういった調査は難しい。大半の企業はいまだマルチタッチのアトリビューションシステムを導入できていないのだ」。
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20万ポンド(約2500万円)を超えるブランデッドコンテンツのパートナー契約のような大規模キャンペーンの場合、パブリッシャーはキャンペーン前後の分析を提供する場合も少なくない。こういったブランディング調査では、ブランドの知名度、購入検討、優先度、購入意志といった指標の変化を追跡する。これによりパフォーマンスよりも如実にキャンペーンの効果を測れるというわけだ。広告主のあいだでいま、キャンペーンの規模を問わず、こういった調査への要望が高まっている。クリック数だけを見るアトリビューションは、もはや時代遅れになりつつあるのだ。
「ブランドベースのキャンペーンをするなら、ブランドベースのKPIを測定しなければならない」と、アイデミール氏は語る。「とりわけファネル中間部でキャンペーンの影響度が分かると、非常に喜ぶパブリッシャーがほとんどだ」。
分析コストが目下の課題
そんななか、パブリッシャーにとって課題となっているのがコストの問題だ。ブランディングの調査に3万ポンド(約380万円)を請求する調査企業も少なくない。技術提供企業のレゾネンス(Rezonence)でCEOを務めるプラッシュ・ナイドゥ氏によれば、調査費用がキャンペーン自体より高額になる場合もあるという。同氏はパブリッシャーと提携して、ペイウォールや登録不要でコンテンツの収益化に取り組んでいる。
「パブリッシャーにコストを押し付ける広告主やエージェンシーが多い」と、あるパブリッシャー役員は語る。「小規模キャンペーンにおいて、我々が効率的であると示せるのは良いが、コスト面では厳しい」。
パブリッシャーによるキャンペーンは、規模やターゲティングの面でGoogleやFacebookにはかなわない。そんななか、多忙なエージェンシーのメディアプランナーたちを相手に、両社よりも効果的なキャンペーン結果が得られると説得するのはこれまで長いこと容易ではなかった。パブリッシャーはキャンペーンの効果を示すため、サイト上でのリターゲティングやより高度なパネルを活用するようになっている。いずれも効果を明らかにしたり「追跡して明らかに」したりするより堅実な手法とされている。
Cookie問題とは別ニーズ
TIメディア(TI Media)でオーディエンスデータと分析担当リーダーを務めるアドリアーナ・テイラー氏は「パネルを分析のリソースとして考える人は増えている」と語る。
ここで指摘しておかなければならないのは、ブランドベースの分析はGoogleによるCookieの発表前から進められてきたという点だ。パブリッシャーや広告主はパフォーマンスのみのデジタルキャンペーンから少しずつ距離を取るようになっていた。調査はキャンペーンへの付加価値として行われ、ほかの測定と合わせて結果のより正確な把握に貢献した。そこで得られた情報を今後の計画やデータ戦略、ターゲティングに活かすというわけだ。だが、Googleの発表によって、これに緊急性が加わった。
「1〜2週間のあいだにブランディング調査について5件の問い合わせが舞い込んだ」と、ナイドゥ氏は語る。「こうした問い合わせはそれまで一度もなかった。『こういった取り組みをしている』と市場に伝えていなかったのにも関わらずだ」。
足並みが揃っていない状況
子育てフォーラムのネットマムズ(Netmums)は今年に入ってから、消費財のクライアント向けに4つのサイト上調査を実施した。キャンペーンの規模を拡大する取り組みとして、この調査にかかる費用は3万ポンド(約380万円)以上となっている。ネットマムズで英国のプログラマティック販売ディレクターを務めるバル・シン氏によれば、調査ではクライアントがオーディエンスに対し、ライバル企業について質問できるようになっているという。ネットマムズのあるクライアントは、この調査を主な理由として、今月同社への支出を倍増したと語る。
「規模が大きいため、3万の回答を1週間で集められる」と、シン氏は語る。「クライアントは非常に喜んでくれている」。なかにははるかに包括的な分析を行う調査企業もあり、150名の回答者あたり5000ポンド(約63万円)の費用となっている。特に小規模キャンペーンでは高額すぎるようにも思える価格だ。ほかにも障害となっているのが、調査企業の大半がいまだサードパーティCookieに基づいた追跡とターゲティングを行っているという点だ。
「その場合誤差が生じる」と、シン氏は語り、次のように述べた。「同じオーディエンスがひとつの広告を5回、10回と見たとしても分からないのだから」。
Lucinda Southern(原文 / 訳:SI Japan)