TikTok(ティックトック)はいまや、あらゆる業界の企業から、販売とエンゲージメント獲得をするために、欠かせないチャネルとみなされている。そんななか、TikTok活用をさらに推し進めているのが、はやくからTikTokを利用してきたウォルマート(Walmart)だ。
TikTokはいまや、あらゆる業界の企業から、販売とエンゲージメント獲得のために、欠かせないチャネルとみなされている。そんななか、TikTok活用をさらに推し進めているのが、はやくからTikTokを利用してきたウォルマート(Walmart)だ。
ウォルマートがTikTokを活用しはじめたのは、2019年10月。最近ではTikTok限定のライブコマースイベントを開催するなど、シームレスで魅力的なショッピング体験を顧客に提供しようとしている。2021年3月11日には、スプリング・ショップアロング:ビューティ・エディション(Spring Shop-Along: Beauty Edition)と呼ばれるイベントを開催し、350万人のフォロワーを抱えるギャビー・モリソン氏といったインフルエンサーを迎えて、美容製品のデモを行った。ウォルマートがTikTokでライブコマースイベントを行ったのは、12月のファッションプロダクトイベント以来2回目だ(12月のイベントは、小売企業がTikTokで開催したはじめてのライブストリームイベントだった)。さらにウォルマートは、#WalmartHolidayShuffleのような、TikTok向けブランドソングを作成したり、従業員に報酬を支払ってTikTokへの投稿を促したりしている。
美容分野は、TikTokで非常に有望なカテゴリーだと、ウォルマートのCMO、ウィリアム・ホワイト氏はいう。「このプラットフォームは、オーディエンスが最新の美容製品を見つけたり、お気に入りクリエイターのチュートリアル動画を見て、新しいスタイルを試したりする場になっている」と同氏は話す。ウォルマートはパンデミックの前から、ユーチューバーであるミンディ・マクナイト氏のヘアリテージ(Hairitage)といった限定ブランドやザ・リップ・バー(The Lip Bar)のような、新しい製品ラインを発表して、美容分野でポジションを確立してきた。また、昨年秋には、ムサブ・バルバレ氏を、美容オムニチャネル担当バイスプレジデントとして迎え、店舗体験とデジタル体験の統合を図っている。今回は、同社CMOのホワイト氏にTikTok戦略のロードマップについて話を聞いた。
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──ウォルマートが最初にTikTok戦略を展開した経緯は?
我々は、我々が顧客を理解し、彼らの生活に溶け込める方法を理解していることを示すために、顧客が好むチャネル、そして方法に従って交流することを、全体的なソーシャル戦略の中心に据えている。そのため、高品質な製品でも、「楽しく魅力的な方法」でそれらを紹介し、ブランド認知度を高める取り組みに注力してきた。TikTokについていえば、我々は2019年10月から同プラットフォームに参加している。ここで我々が重視しているのは、(TikTokの)最新トレンドを把握することだ。
また、オーディエンスがどんな楽しみ方をしているのか、どんな話をしているのかを理解するためには、リアルタイムのコミュニケーションが重要だ。これにより、オウンドコンテンツや1:1のエンゲージメントを通じて彼らの輪に加わり、製品に関してオーディエンスと対話することができる。
──TikTokがウォルマートにとって重要な理由は? 既存の顧客とつながるため、もしくはより若い世代の顧客獲得のため?
我々は、顧客との関係を築き、彼らがいる場所で接触することに注力している。TikTokはまさに、その場所になりつつある。顧客は、TikTokや同プラットフォーム内でのイベントに、インスピレーションを求めてやって来る。TikTokは、そうしたオーディエンスに、自社の製品ラインナップをアピールする機会を与えてくれる。我々がTikTokを活用するのは、当社のターゲットであるミレニアル世代や若いファミリー、それに当社のブランドを知らないZ世代など、重要な顧客にリーチするためだ。
また、我々は小売業界のリーダーとして、新しい分野を開拓したいと考えている。12月に実施したライブコマースイベントで、ショッピングのイノベーションの最前線に立つことができたのは、非常にエキサイティングな体験だった。今後もテストと学習を続け、ソーシャルメディアで急成長しているこのコミュニティで、ショッピングの可能性を追究していきたい。
──TikTokでのライブストリーミングは、販売とブランド認知向上、どちらが目的?
その両方だ。12月に行ったショッピングイベントで学んだもっとも重要なことは、みなTikTokでショッピングをしたがっていることだ。人々はこのプラットフォームで買い物をしたいと思っている。スプリング・ショップアロング:ビューティ・エディションでは、クリエイターのコンテンツを通じて紹介された商品をTikTokで購入できる機会を、オーディエンスに提供した。オーディエンスは、自分が購入したいプロダクトピンをタップするだけでいい。そうすれば、商品がカートに追加され、イベント中やイベント後にすぐに購入続きができる。
──美容製品のデモイベントでは、12月のファッションイベントでの経験をどう活かした?
12月に我々が学んだのは、クリエイターが自分の個性を発揮できる余地を、もっと増やす必要があるということだった。そこで3月のイベントでは、クリエイターの強みを活かし、彼らが得意とするやり方でオーディエンスとやり取りできるようにした。具体的には、クリエイターが自分のTikTokチャネルでやっているように、お気に入りの美容製品の使い方を伝える、チュートリアル動画をシェアできるようにした。次に我々が考えたのは、ダイナミックな体験を提供して、イベント終了までオーディエンスを飽きさせないようにすることだった。
また12月のイベントでは、オーディエンスから、商品が実際に使われているところを、もっと見せて欲しいというリクエストが寄せられていた。その商品が自分にとってメリットがあるかどうか、確かめるためだ。そこで、3月に開催した美容製品のデモイベントでは、クリエイターが商品テストを中継するコンテンツも用意した。
──TikTokで美容の分野に大きなチャンスがある理由は? また、ウォルマートがいまTikTokで押しているブランドは?
美容は、TikTokで非常に人気のあるカテゴリーだ。3月のイベントは、人々がインスピレーションを求めてやって来るプラットフォームで、我々の美容製品をアピールする最高の機会になった。そしてオーディエンスにとっても、ナショナルブランドやプライベートブランド、黒人ブランドの美容製品を発見し、購入するための新たな手段になったはずだ。
なお、我々が取り上げているブランドは、スキンケア、コスメ、ヘアケア、フレグランスなど多岐にわたる。ニックス・プロフェッショナル・メイクアップ(NYX Professional Makeup)、メイベリン(Maybelline)、ブリス(Bliss)、キム・キンブル(Kim Kimble)、ザ・リップ・バーなど、ウォルマートにあると知ったらオーディエンスが驚くような、さまざまなブランドの商品を購入できる。
また、3月のイベントで見られたエンゲージメントは、我々にとって満足できるもので、ユニーク視聴者数も12月より増えていたし、多くの新規フォロワーも獲得できた。
──TikTok活用のポイントは、ほかのソーシャルメディアと同じ?
我々は、定期的にクリエイターやパブリッシャーと提携し、彼らのプラットフォームや自社のプロパティで、さまざまな製品を宣伝するためのコンテンツを制作している。これは、Webサイトとソーシャルメディアの両方においてだ。その際、パートナーと提携して作成するコンテンツは、彼らにとって違和感のないものであるべきだと考えている。加えて、オーディエンスの共感を最大限に獲得しながら、商品を宣伝することも重視している。
また、インスタグラムのファッションインフルエンサーの投稿に購入リンクを追加したり、ライフスタイルサイトのレシピに従うだけで調理ができる、商品セットも考案した。あらゆる機会を活かして、顧客が商品を手軽に購入できるよう、工夫しているつもりだ。
[原文:‘Close to real-time moderation as we can’: Inside Walmart’s growing TikTok strategy]
PRIYA RAO(翻訳:佐藤 卓/ガリレオ、編集:村上莞)