コールハーン(Cole Haan)は2月10日、25%が再生材料で作られ、タンポポゴムを利用する、新しいアウトソールの技術を採用した、自社初となるサスティナブルなスニーカーをリリースした。コールハーンにとって、これらの採用は、自社製品の位置付けをひっそりと変更する動きの一部といえる。
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コールハーン(Cole Haan)は2月10日、25%が再生材料で作られ、タンポポゴムを利用する、新しいアウトソールの技術を採用した、自社初となるサスティナブルなスニーカーをリリースした。
コールハーンにとって、これらの採用は、自社製品の位置付けをひっそりと変更する動きの一部といえる。
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新しいゴムの技術は「フラワーフォーム(Flowerfoam)」と呼ばれ、同社が過去数年間にリリースしてきた多くの独自素材のひとつだ。ファッションのカジュアル化を受け、同ブランドは従来型のドレスウェアのルーツから、アスレチックフットウェア、高性能の素材、同社のドレッシーなスタイルのよりカジュアルなバージョンへと転換してきた。これらの製品の変更とともに、同ブランドはスニーカーに特化したグランドストア(Grandstore)と呼ばれる新しい店舗コンセプトも運用開始した。
コールハーンの新しいタンポポゴムのソールは2年以上をかけて開発されたと、ブランド担当プレジデントのデビッド・マドックス氏は説明する。同ブランドは通常、新しいフットウェアを15カ月で市場に送り出すことができるが、この比較的新しい素材には耐久性と緩衝性についてさらにテストが必要とされた。
マドックス氏は次のように述べている。「タンポポゴムについて興味深いのは、ゴム業界が長年にわたってこれを検討してきたことだ。実のところ、それは1940年代まで遡れる。それもそのはず、このゴムは優れた緩衝性を持ち、軽量。性能の点で我々が求めていたものだ」。
社内革新で生き残りを模索
コールハーンは1928年に設立された会社で、1988年にナイキ(Nike)により8000万ドル(約92億8000万円)で買収された。2012年になってナイキは、コールハーンを5億7000万ドル(約661億円)でアパックスパートナーズ(Apax Partners)に売却。コールハーンはこれによって、ナイキのようなはるかに大きなブランドが保有しているリソースにアクセスできなくなったが、社内で革新を進める別の方法を見い出した。
同ブランドが新素材の採用を試みたのはタンポポがはじめてではない。たとえば同社は2014年に最初のゼログランド(Zerogrand)シューズをリリース。これは、スニーカーとオックスフォードシューズをかけ合わせたような製品で、軽量の素材、柔軟性、高緩衝性を重視したものだった。それ以来同社は、ゼログランドテックの新しいバージョンを4つリリース。これらの新しいコレクションはソールのアップグレード、より高度な技術と素材に加えて、美観が向上している。
コールハーンの素材への投資は当初、アスレチックシューズよりもドレスシューズを重視していたが、それ以後に同ブランドはアスレチック用フットウェアにも展開するようになった。同社は2017年に、極端な気候に耐えられるようデザインされたハイキングブーツのコレクションをリリースし、2019年にはアスレチックトレーナーをリリースした。2021年には高パフォーマンスのゴルフとテニス用のシューズにも展開している。
加速するカジュアル化
エヌピーディーグループ(The NPD Group)でアクセサリとフットウェアのエグゼクティブディレクターを務めるベス・ゴールドステイン氏は、近年に多くのブランドで「スニーカーの美観、機能、快適性がほかの(よりドレッシーな)スタイルにも波及した」と、メールで説明した。たとえば、サンダル、オックスフォードシューズ、アンクルブーツなどのシューズにおける「スニーカーボトム」スタイルは、それらのカテゴリーのシェアと売上額を、そのスタイルを採用していない商品から奪ってきたと、ゴールドステイン氏は付け加えた。
これは、一部はパフォーマンスの移行だが、スタイルの移行でもある。あらゆるアパレルやフットウェアのカテゴリーのファッション小売業者は、消費者がフォーマルなアパレルにでも、よりカジュアルな美観を好むようになってきていることに対応を余儀なくされた。
エスエスエー・アンド・カンパニー(SSA & Company)のマネージングパートナーを務めるマシュー・カッツ氏は次のように述べている。「このトレンドについて私の記憶しているもっとも古い例は、スポーツイベントの専門家たちがスーツ姿にスニーカーを履いていたことだ。かつてはおさまりが悪い姿だったが、今では受け入れられており、実のところ最新ファッションだ」。実際に、コールハーンは多くのマーケティング画像で、パステルイエローのスーツと組み合わせることで新しいタンポポのスニーカーをプロモートしている。
パンデミックにより、自宅で作業するようになった労働者がスーツからスウェットに着替えたように、カジュアル化が加速はしたものの、このトレンドは何年にもわたってゆっくりと増加し続けてきたものだとゴールドステイン氏は語る。「パンデミック前の数年において、ファッションカテゴリーはすでにアスレジャーにシェアを奪われており、ファッションのなかでもドレス部門はカジュアルにシェアを奪われていた」と同氏は述べている。
新しい店舗コンセプト
コールハーンは、アスレチックへの新たな注力を支援するため、グランドショップ(Grandshop)と呼ばれる新しい店舗のコンセプトもテスト中だ。現在のところ、このような店舗はシリコンバレーと、日本の原宿の2カ所だけだが、どちらも同ブランドのゼログランド材料の構造スタイルに特化している。
店舗内のスクリーンにより、シューズのソールの構造が説明。商品のディスプレイにはQRコードがあり、店舗内の買い物客をコールハーンのウェブサイトに誘導する。買い物客はサイトで、これらのシューズの通気性や応答緩衝性に脚光を当てた詳細情報を見ることができる。「フロントドアをくぐれば、当社の顧客が実際に生活や勤務を行っている場所のように見え、感じられるだろう」と、マドックス氏は述べている。
同ブランドは次に、2022年にクウェートに開設する店舗のため、グランドショップの美観重視と、コールハーンの伝統的なストアフロントとを組み合わせたハイブリッドコンセプトに取り組んでいる。この店舗はふたつのセクションに分けられる。ひとつは同社の従来型スタイル、すなわちドレスシューズ、ハンドバッグ、上着に特化し、もうひとつの部分ではよりスポーティなスタイルを前面に押し出す。
マドックス氏は次のように述べている。「言うなれば、これは家を完成させるようなものだ。当社が店舗のデザインを行ってきた方法は、商品のデザインに取り組む方法とよく似たものだ」。
[原文:As footwear gets more casual, Cole Haan adapts with new materials and styles]
Maile McCann(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:黒田千聖)
Photo from Cole Haan