パンデミック拡大のなか、 Facebookライブ動画 の人気再燃

2016年、パブリッシャー各社がこぞってライブ動画の制作に目を向けるようになると、Facebookライブ動画(Facebook Live)は彼らが盲従するプラットフォームのシンボルになった。そして、その試みはまったくの無駄骨だったことを知った。

しかし、世界中の人々が新型コロナウイルスの感染拡大を抑えるために巣ごもりをするようになったいま、ライブストリーミングはかつてない人気を博している。感染対策のためのロックダウンにより、各種イベントは中止を余儀なくされている。しかしその一方で、バーチャルイベントにはFacebookライブ動画などのサービスを介して新たな命が吹き込まれている。

Facebookによれば、今年3月に同プラットフォームでライブ動画を視聴したアメリカ国内のユーザー数は、2月と比較して50%増加しているという。人々がコンサートにも動物園にも行けなくなったいま、Facebookライブ動画はこうした体験のバックアップ的手段から、ほかにはない手段のひとつへと変貌を遂げた。

広告エージェンシーのアイクロッシング(iCrossing)で検索、ソーシャル部門のグループディレクターを務めるジョン・テボールト氏は、「この1週間ほどのあいだに、Facebookライブ動画を利用する有名人や、その活用法を大きく取り上げる報道機関が目につくようになってきた。今後はこれが、クライアントと交わす会話の中心になるだろう」と語る。

テボールト氏のチームによるライブ配信の成否の事後分析が終われば、今後2カ月にわたって、このような会話がクライアントとのあいだで交わされるようになるだろう。

DJライブにゲームショー

イギリスのハウスミュージックレーベル、ディフェクテッドレコード (Defected Records) は今年3月から、バーチャルフェスティバル(Defected Virtual Festival)をFacebookライブ動画で配信している。3月27日、同レーベルに所属するDJ6人が自宅やスタジオから直接配信を行い、100万ビューを獲得した。ビュー数は前週のほうが多かった(150万ビュー)が、これは12時間の長時間配信によるものだった。ちなみに、BuzzFeed Newsが2018年に配信したFacebookライブ動画のなかには、ビュー数が5万を下回るものもあった

ディフェクテッドレコードの最高業務責任者を務めるジェームズ・カークハム氏は、「ライブフィードのことを話題にしている人々は世界中にいたが、Facebookライブ動画のような、これほど多くの人々を自身のコンテンツに一時に集めることができる場所は少ない」と語る。「Defected Virtual Festival」の人気はFacebookライブ動画が持つ集客力によるところが大きいと、同氏は分析する。

ディフェクテッドレコードは今後も、できるかぎりFacebookライブ動画やYouTube、Twitterでライブ配信を続けていくつもりだという。

アンハイザー・ブッシュ(Anheuser-Busch)のブッシュビール(Busch Beer)も同様の手を打っている。

同社は3月27日、ウィークリーゲームショー「Busch Trivia」のライブ配信をFacebookライブ動画で開始した。その目的は、新型コロナウイルスのパンデミックで厳しい状況に追い込まれているバーテンダーを救うための資金を集めることだ。オーディエンスはゲームに参加することで、ノベルティーグッズなどの賞品を獲得したり、全米バーテンダー協会(The U.S. Bartenders Guild:現在のパンデミック下のバーテンダーを支援するために発足)に寄付したりできる。

メディアエージェンシーのザ・アンド・パートナーシップ(The&Partnership)でイノベーション部門の代表を務めるオリバー・フェルドウィック氏は、「ここ2週間で、バーチャル体験の開発において、過去5年を上回る文化的・組織的な進歩が見られるようになった」と語る。

広告主に選ばせる理由

いまのところこうした試みの中心にあるのは、Facebookでライブ配信するコンテンツの制作であって、ライブ配信内の広告ではない。Facebookの有料フォーマットを介してライブ放送をプロモートする機会は以前から限られている。そのため、マーケターはオーガニックリーチに頼って成果をあげている。

メディアエージェンシーのゼニス(Zenith)で有料ソーシャル部門の責任者を務めるナタリー・カーダー氏は、「広告的な観点から言えば、多くの場合、Facebookライブ動画のオーディエンスリーチの大半はイベント後に獲得されていることがわかった。したがって、Facebookライブ動画の価値は慎重に検討する必要があった」と語る。同氏によれば、Facebookライブ動画を広告主に選ばせるのは、それが持つ「ライブ」要素というより、「オーディエンス参加型」の側面だという。

Facebookライブ動画に対する関心の再燃を有効活用すべく、Facebookは現在、新機能の開発と既存機能の改良に取り組んでいる。これらのアップデートにより、パブリッシャーとクリエイターが自身のライブ動画をマネタイズする、Facebookを利用していない人々にもアクセスしやすくなる、などといったことが可能になる見通しだ。

実際に、Facebookが広告主に向けたFacebookライブ動画の積極的な売り込みを再開する気配もある。カーダー氏によれば、Facebookは2016~18年にFacebookライブ動画のローンチをプッシュしていたが、シェアできるユースケースが大幅に増えてきたいま、同サービスを提案資料に戻す構えを見せているという。Facebookはすでに、ディフェクテッドレコードに対し、同レーベルのライブ配信をFacebookライブ動画のケーススタディとして使用することを願い出ていると、カークハム氏はいう。

FBライブ動画のたどった道

この状況は、Facebookライブ動画が昨年11月に置かれていた状況とは対照的だ。Facebookは同月、ライブ配信に友だちを追加する機能を廃止している。ライブ配信がシェアしにくくなったことで、Facebookライブ動画はもはや、同社にとっての優先事項ではなくなったかのように思われた。Facebookは自身の生活をリアルタイムで配信するあらゆる人々に大きく賭けたが、その賭けは少し遅すぎたようだった。Facebookライブ動画がローンチされたころには、若いFacebookユーザーたちはすでにインスタグラムやSnapchatへと移りつつあった。これらのプラットフォームでは、広告主が把握しやすいストーリーズ(Stories)やAR(拡張現実)などのフォーマットが提供されていた。

また、これらフォーマットの裏には、より明確なマネタイズ戦略もあった(少なくとも、ストーリーズについていえば)。反対に、Facebookのライブ動画の広告モデルは、同社のほかの動画フォーマットに見られるレベルには達していなかった。パブリッシャーと分かち合う有意な売り上げの欠如は、制作されるソーシャルライブの量を阻害する。理由のひとつは、それが金銭的な意味をまったくなさないからだ。

動画テックプラットフォームのグラブヨー(Grabyo)でCEOを務めるギャレス・ケイポン氏は、「これがキーポイントであるのは、質の高いライブ動画を制作するにはコストがかかり、コンテンツオーナーは、それがどのライブ動画プラットフォームであれ、時間とリソースへのこの投資を商業化するための明確な手段を持つ必要があるからだ」と語る。

「重要な時期を迎えている」

Facebookにとっての問題は、次に何が来るのかということだ。人気の再燃と新たなアップデートだけでは、先は見えている。結局のところ、さまざまな活動がFacebookライブ動画に流れ込んでいるのは、直接対面してそうすることができないからだ。Facebookライブ動画はかつて、警官によるアフリカ系アメリカ人の殺害や、テロリストによるイスラム教徒50人の大虐殺などの、メインストリームメディアでは禁止されるであろう動画のパイプだったということはいうまでもない。

メディアエージェンシーのPHDでグローバルクライアントリードを務めるケイシー・フィッツシモンズ氏は、「Facebookライブ動画は重要な時期を迎えているかもしれない」と語る。「Facebookのさまざまなプラットフォームの活用法は、人々が新たなつながり方に目を向け、新たなアプリを模索するのに合わせて飛躍的に成長してきたのだ」。

Seb Joseph (原文 / 訳:ガリレオ)