デジタルイベントを洗練させる、 NYT 専門チームの挑戦:この2カ月で30以上も実施

2020年を迎えるにあたり、ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)のイベント部門NYTライブ(NYT Live)のマネージングディレクターであるジェシカ・フラッド氏と、NYTライブのプログラム部門シニアディレクターであるエリザベス・ワインスタイン氏は、ニューヨーク・タイムズが抱える「ディールブック(Dealbook)」や「NYTクッキング(NYT Cooking)」といったフランチャイズを中心にコミュニティを構築するための40ほどのイベントを年間で計画していたと、フラッド氏は述べる。

3月9日の週には、彼らはこれらすべての計画がほぼ完全にやり直される必要があると判断した。そして23人のスタッフから構成されるイベント部門は、何がバーチャルイベントとして再利用できるかを検討しはじめたという。

いくつかのバーチャルイベントの機会を見つけている。3月9日以降、ニューヨーク・タイムズは30のデジタルイベントを制作し、90カ国以上からの10万人以上の参加者を集めたと、フラッド氏は述べる。さらに、4月の参加者の80%以上が、ニューヨーク・タイムズのイベントにはじめて参加した人たちだった。彼らは週末も含めて毎日ひとつのイベントを開催する方向性へ進めている。

延期にしたもの、収益化したもの

ライブイベントの計画の一部は破棄された。その一例がフードフェスティバル(Food Festival)だ。イベント内容があまりに現実での体験が重要であり、バーチャルでの実行は不可能なため、来年まで完全に延期となった。

現時点では、チケット販売による収益化も停止している。もしもB2Bスペースで大勢の参加者を集めるような「重要な時期」が存在すれば、今年後半にそこから消費者収益を得るようなことも検討するかもしれないと、フラッド氏は語った。

これらのイベントのうちのいくつかは、スポンサーシップを通じてマネタイズが行われている。ディールブックカンファレンス(Dealbook Conference)のスポンサーだったアクセンチュア(Accenture)は、バーチャルのディールブックイベントのスポンサーをしている。5月、生命保険のマスミューチュアル(MassMutual)はアンフィニッシュド・ワーク(Unfinished Work)と呼ばれる3部構成の対面形式イベントのスポンサーとなる予定だったが、このイベントは完全デジタルなプログラムとして変更され、マスミューチュアルがスポンサーとなる。

効率化するためのチーム運営

彼らの(バーチャル移行)対策本部は多くのテクニックを学んだ。業績の良い記事のライブバーチャル・バージョンの制作から、事前に録画した動画をイベントに導入する、といった具合だ。これらは今後もイベントビジネスの役に立つはずだ。さらにより迅速になるため、制作チームをイベントごと、もしくはイベントの種類ごとに再編成し、各チームを3人編成とした。

これらのチームの間での均質性を確保するために、成功例、プラットフォームごとの業務の流れサンプル、デジタルイベントのチェックリストを収めたガイドラインも制作した。

「相互に参加できる要素を取り入れ、イベントがよりダイナミックになる方法を探している」と、ワインスタイン氏は言う。

人気コンテンツをイベント化

3月中旬にはデジタルイベント対策本部が結成され、その他のバーティカルが抱えるイベントフランチャイズのうちバーチャルに移行できる要素を特定する助けを担うことになった。研究開発、マーケティング、ブランド、イベント、ニュース部門と、社内のさまざまな部門の6人のスタッフから構成される対策本部は、結成されてから週に1度、ミーティングを行っている。

対策本部が可能性を探ったひとつのモデルがある。それはタイムズが抱えるコンテンツから業績が特に良いものをバーチャルイベントへと移行させるというものだ。これはコンテンツが扱うトピックについて相互にやり取りができる側面を追加し、内容をさらに豊かにすることが目的だと、ワインスタイン氏は言う。

たとえば、現時点でパフォーマンスがもっとも良いデジタルイベントのひとつに、「NYTウェル(NYT Well)」の創始エディターのタラ・パーカー・ポープ氏が中心となった対話イベントがある。パンデミック中に10代の子どもたちが体験している不安について語ったこのイベントには合計で7000人の視聴者が参加した。たとえば、ニューヨーク・タイムズが行った最後の対面でのイベントは3月6日に行われた1619プロジェクト(The 1619 Project)関連のディスカッションだが、その参加者数はたった250人だった。

ニューヨーク・タイムズがこれまで開催しているデジタルイベントの多くは、カンファレンスコールのような中身になっている。彼らはブロードウェイのショーのオープニングナイトをバーチャルで再現するというプロジェクトを今後計画しているが、これはこれまでのデジタルイベントの内容を大きく超えるものとなる予定だ。「ライブ感」のある事前に録画された動画も組み合わせることで、このイベントは映像と音声の面で高いクオリティを確保すると、フラッド氏は言う。

デジタルイベントにおける課題

多くのパブリッシャーにとっての大きな課題は、販売価格の下落への対応と、これらのデジタルイベントが提供する新しいROIで広告を販売できるようにすることだ。

イベントマーケティングのプラットフォームであるスプラッシュ(Splash)のCEOであるベン・ハインドマン氏によると、バーチャルイベントにおけるスポンサーシップの価格は、生のスポンサーシップの価格と比較して4分の1ほどだという。デジタルイベントプラットフォーム企業のON24のマーケティング部門バイスプレジデントのテッサ・バロン氏は、約半分ほどだと語った。

「究極的には実際のスポンサーシップが1対1でデジタルに移行するだけだとは思わない」と、バロン氏は述べる。バーチャルイベントでは、参加者に関するデータを、生のイベントでは得られないような方法で得ることができるのだ。これは参加者の意図を理解するという点で、特に顕著といえる。

物理的なイベントでは、人々とやりとりをする方法はひとつしかない。各ブースで彼らの注意を引くといった方法だ。しかし、バーチャルなイベントでは、参加者は異なるレベルのエンゲージメントをスポンサーと選んで持つことができるチャンスが存在している。

Kayleigh Barber(原文 / 訳:塚本 紺)