BBCグローバルニュースは テレワーク から何を学んだか?

BBCの商業部門であるBBCグローバルニュース(BBC Global News)は、3月にトラフィックや視聴率を記録的に伸ばした唯一の国際ニュースプラットフォームではない。だが、世界各地に4000人のジャーナリストを抱え、77都市に60の支局を構え、24時間放送のニュースチャンネルやさまざまなオンラインプラットフォームを手がけるほど規模の大きな同社にとって、リモートワークに移行しながらコンテンツを配信する取り組みは簡単ではなかった。

ウェブ分析を手がけるATインターネット(AT Internet)によれば、BBCグローバルニュースは3月に15億の月間ページビュー、6100万の月間動画視聴、1億7900万の月間ユニークブラウザ数を獲得した。人々に疲れが見えはじめた翌月以降は減りつつあるが、以前の平均値よりはまだ多い。

パブリッシャーの大多数はページビューの多さを売りにしているが、この指標はバニティメトリクス(虚栄の指標)といわれるように、収益に連動しないことが多い。それに対してBBCグローバルニュースは、異なる政党のあいだでも信頼できるニュースソースとして常に高い評価を得ている。そんな国際的なニュース企業である同社は、この数カ月間のリモートワークからどのようなことを学んだのだろうか。

人々は飛行機に乗れない状況でも旅行コンテンツを楽しめる

BBCのトラベルカテゴリは記録的な数値を達成した。4月には月間ユニークビジター数が3月から34%増加し、ページ滞在時間も9%増えている。4月にもっとも人気の高かった記事は、ページビューが100万を超えていた。

社内データによれば、オーディエンスは検索エンジン経由でニュースを読んだあとに、ニュース以外の5つのカテゴリで新型コロナウイルス以外の記事をさらに読む傾向があるという。パンデミック関連のニュースに対する需要が高まっていた3月の時点でさえ、ニュース以外のコンテンツがページビュー全体の3分の2を占めていた。

「いまの我々は常に自動車のハンドルを握っている状態だ」と、BBCグローバルニュースで編集コンテンツ責任者を務めるメアリー・ウィルキンソン氏はいう。「さまざま観光スポットの特徴をわかりやすく示して、関心を引き寄せることに集中した。たとえその場所に飛んで行けなくても、人々の関心が変わることはない。重要なのはホテルを訪れた話をすることではなく、その場所にまつわる物語、歴史、人々、文化を紹介することだ。人々は外出できずに時間を持て余しているので、どこか別の場所に連れて行ってもらいたいと考えている」。

人気の高い記事は、水中に沈んだ古代文明や、かつての賑わいを取り戻した都市のサクセスストーリーを取り上げたものだ。広告主はこのような非ニュースカテゴリを、ブランドメッセージを表示できる安全な場所とみなしている。サイトが全体としてウェブトラフィックに見合った広告収入を得られない理由のひとつがこれだ。ただし、アジアの国々では、ビジネスを再開してマーケティング活動を活発化する企業が見られるようになった。BBCグローバルニュースはいま、ロックダウン措置が緩和されたあとの本格的な活動再開について航空会社や旅行会社と話し合っているところだと、同社でCEOを務めるジム・イーガン氏は語る

緊急時対策プランは出発点に過ぎない

オンラインジャーナリズムをリモートワーク環境に移行するのは簡単だが、テレビのニュース放送を継続するのははるかに難しい。

「テレビにとっては、少しも気を抜けない困難な時期だった」と、ウィルキンソン氏は振り返る。「病気になったスタッフの割合に応じた対処方法を定めた緊急時対策プランはあったが、いまから思えば考えが甘かったようだ。人々は病気ではないにもかかわらず、職場に行きたくないと思っている。ニュースルームは人が密集しているため、出勤するスタッフの数を減らし、自宅で番組を制作しながらライブ放送を続けられるスタッフを把握する作業を迅速に行う必要があった。どんなときでも、話題性や重要性が高まって取材が必要になる出来事はたくさんあるのだ」。

放送スケジュールは大幅な簡素化を余儀なくされ、Zoom(ズーム)を使ったインタビューや、ソーシャルディスタンス(社会的距離)を保った少数のプレゼンテーターに頼るしかなかった。だが、危機的な状況であることが幸いし、視聴者は番組の質の低下を大目に見てくれた。また、世界的な指導者やビジネス界の大物経営者といった著名な人々が、以前よりも簡単に番組に出てくれるようになった。

BBCグローバルニュースは、5月中旬に新しい番組を開始した。「Coronavirus: Your Stories」という名のシリーズ番組で、アナウンサーのフィリッパ・トーマス氏が世界各地の人々を取材し、新型コロナウイルスが人々の生活をどのように変えたのかを伝えるというものだ。

ポストプロダクションには時間がかかる

リモートワークで時間がかかるのは、チーム内などで行う作業だ。BBCの場合は、編集作業とポストプロダクションに時間を取られている。動画の質の低さをカバーする必要があるからだ。また、関係する人たちが大勢いる場合にも編集作業が増えることになる。

「次のステップは、(放映するために)番組送出システムに送ることだ」と、ウィルキンソン氏はいう。「建物内にいないときにこの作業を行うことはできない。そのため、いまは通常より時間がかかっており、これがちょっとした技術的ハードルのようになっている」。

問題は規制を緩和するタイミング

世界全体で見ると、5月に同社のサイトでもっとも多く読まれた記事は、すでに新型コロナウイルスの話ではなくなっていた。もっとも読者を集めたのは、北朝鮮の金正恩委員長が久しぶりに公の場に姿を見せたという5月2日付けの記事だった(ただし英国では、いまも新型コロナウイルス関連のニュースが上位にランクインしている)。

「現時点では、このニュースが大勢の人々から非常に大きな関心を集めている」と、ウィルキンソン氏はいう。「今後は、人々がもう十分だと感じた瞬間を見逃さないようにすることが課題になるだろう」。

当然ながら、これからは完全に停滞した世界経済やその状況がさまざまな社会に与える動揺が報じられることになる。「楽観的なニュースになるとは思えないが、重要な話だ。また、ロックダウンが今後も続くことになれば、そのことも私にとっては懸念すべき問題になる。ジャーナリズムにとって、直接会って取材することに勝るものはない」。

Lucinda Southern(原文 / 訳:ガリレオ)