ボストングローブ、広告収入は30%減もサブスクは35%増

米紙「ボストングローブ(The Boston Globe)」や「Boston.com」の発行元であるボストングローブメディア(Boston Globe Media)では、トラフィックが前年比で倍増しているにもかかわらず、広告収入が落ち込んでいる。この現象はもはや驚くには当たらない。

これも驚くには当たらないのだが、彼ら新しいビジターが定期購読者化している。ただし、同社にとって、未曾有の成長を示唆する数字ではない。ボストングローブメディアで最高営業責任者を務めるケイヴァン・サルマンプール氏によると、この10週間で、デジタル版のサブスクリプションは35%増加した。

サルマンプール氏の説明では、現在起きている大きな変化を背景に、読者のコミュニティを形成するような製品が生まれている。グローブの編集者たちも、このコミュニティで助言を提供したり、会話に参加したりする。

これらの製品を通じて、サルマンプール氏の部署では、従来のビジネスモデルでは獲得できなくなったスポンサー収入を回復しつつあるという。

サルマンプール氏は、「ニューノーマル」シリーズの最新記事で、ボストングローバルメディアが短期的に対処すべき課題や、コロナ以降も存続が予想される事業について語っている。

トラフィックは増加しても、オーディエンスはマネタイズできない

この3月、ユニークビジター数は前年同月比で2倍に増えたが、「皮肉なことに、広告収入は減っている」とサルマンプール氏は語る。

同氏によると、コロナ渦中、広告収入は全体で30%から35%程度落ち込んだ。プログラマティック広告への打撃はこれより若干小さく、20%から30%減にとどまっている。これは、トラフィックの増加が広告単価(CPM)の低下を相殺していることによる。ただし、ボストングローブの広告構成において、プログラマティックが占める比率は概して大きくない点にも、サルマンプール氏は言及した。

2019年には、10万ドル(約1090万円)を超える案件に増加傾向が見られたが、現在、「大口の案件は減っている」と同氏は打ち明ける。幸い、彼の部署では、小口に分割できる、比較的大型のコンテンツ企画が売れているという。

サブスクリプション戦略と成長

サルマンプール氏の説明によると、ボストングローブメディアは、10万人の定期購読者を獲得するのに7年かかった。20万人到達までには47週間を要した。一方、この10週間で、デジタルのサブスクリプションは35%伸びている。

広告収入が低迷しているいま、購読者収入は重要だ。それでも、ボストングローブは、サルマンプール氏がどこよりも気前が良いという6カ月で1ドルのサブスクリプションを提案しつづけている。というのも、このプロモーションを8カ月以上続けてきた結果、この提案を入り口として定期購読をはじめた読者のリテンション率(つまり生涯価値)が、目先の利益を犠牲にしても、十分見合うほどに高いからだ。

コロナ関連のコンテンツとニュースレター

典型的な新型コロナウイルス関連の記事は、1本当たり300人から800人の定期購読者を創出している。同氏によると、コロナと関係のない、従来の記事の3倍に相当する数字という。新型コロナ関連のニュースレター(定期購読者25万人)のコンバージョン率は明かされなかったが、コンテンツの性質上、定期購読者を獲得する力は大きい。

スケールしない商品

グローブの営業が中小の広告主をまわり、Slack(スラック)チャンネルに勧誘した。リソースやヘルプを求める中小企業が450社以上集まった。このSlackチャンネルに、経済担当の編集者が参加して、PPP(給与保護プログラム:新型コロナ対策の中小企業向け融資制度)や地方の条例について解説したり、タウンミーティングを主催したりした。サルマンプール氏の言葉を借りるなら、「グローブは会議主催者という新しい役割を担うことになった」。

このSlackチャンネルは、比較的大きなクライアントのひとつに販売する予定だとサルマンプール氏は言う。さらに、このメインチャンネルから、女性やマイノリティが経営する企業向けのサブチャンネルをつくってほしいというブランドも現れた。

「にわかスタートアップといった感じだろうか。価値を創造し、コミュニティを創造し、それを収益化する」と、サルマンプール氏は語る。「これらの製品は、数カ月後も存続しているだろうか? 私には分からない。分かっているのは、困窮するコミュニティにとても大きな付加価値を与えるという、新しい事業を試みているということだ。これをどうマネタイズすべきか検討している」。

顧客のニーズを満たす商品

「最初の2週間ほど、私たちの営業担当は、営業らしい営業を何もしていなかった。彼らはクライアントとのコミュニケーションについて、多くの助言や指示を必要としていた」。サルマンプール氏はそう説明する。そこで、彼ら営業員はそれまでのやり方を修正し、法人顧客から広告活動の目的や目標を正確に聞き取り、顧客のニーズに対応できる広告商品を開発することにした。

ボストングローブ紙の「看護師たちに感謝を(Salute to Nurses)」という企画も、この発想から生まれた広告商品で、フィーチャーする看護師を選び、広告主が費用を負担する。善意のコンテンツであることに加え、売上の10%が米看護師財団(American Nurses Foundation)に寄付されるという点も、広告主を集めるのにひと役買った。結局、この商品は、ほんの2週間で、特集記事や特別企画としては過去最高の広告収入を稼ぎ出した。

定着するものは?

「誰もが新型コロナウイルスを強力なアクセルペダルにたとえるが、グローブには年々下落を続ける事業部門も確かにある」と、サルマンプール氏は言う。特に顕著な例をふたつ挙げるなら、いわゆる三行広告と芸術面(主に活字)だ。同氏の担当部署では、特にこのふたつの今後について検討を重ねている。コロナ以前から低迷している製品が、かつての勢いを取りもどせるとは思えないと、同氏は言う。

グローブ主催のドキュメンタリー映画祭『グローブドックス(GlobeDocs)』も、「開催地がボストンという事実が、常にネックになってきた」という。世界31カ国から人が集まり、作品もグローバル化が進んでいた。出品されるドキュメンタリーの一部は、コロナ禍以前から、ストリーミングによる配信を開始していたが、全面的にオンライン化せざるをえなくなり、「ネックになっていた諸要因は、ある意味、マイナスというよりプラスに転じている」。

KAYLEIGH BARBER(原文 / 訳:英じゅんこ)