ゼクシィに学ぶ、Instagram「ストーリーズ広告」活用術:コンバージョン2.1倍の背景

急速にアカウント数を伸ばし、広告媒体としても注目を集めているInstagram。なかでもいま勢いがあるのはストーリーズ広告だろう。

すでにInstagramユーザーにはお馴染みとなっている、24時間で自動消去されるストーリーズ投稿。そのあいだに差し込まれるストーリーズ広告は、スマートフォンの全画面に展開される没入感が特徴となっている。特に魅力的なのが、ランディングページへの誘導やアプリインストールを促す、コール・トゥ・アクション(Call to Action:以下、CTA)を柔軟に設計できるところだ。

Instagramは2016年8月にストーリーズの機能提供を開始し、2017年3月に同広告をリリース。当初はブランディング広告のみの対応だったが、次いで5月にはCTA機能も導入され、ダイレクトレスポンス(以下、DR)にも利用できるようなった。

マットレス会社キャスパー(Casper)のストーリーズ広告で利用されたCTAの例。下部の「Shop Now」をスワイプすると、詳細ページを閲覧できる

マットレス会社キャスパー(Casper)のストーリーズ広告で利用されたCTAの例。下部の「Shop Now」をスワイプすると、詳細ページを閲覧できる

 

このCTA導入のニュースをいち早くキャッチし、リリースからわずか1週間で配信を開始したのが、リクルートマーケティングパートナーズのゼクシィだ。アプリインストールへの誘導をCTAとして設け、既存のフィード広告メニューのみを利用した場合と比較し、インストール数が3.1倍になったという。さらに、ストーリーズ広告を通じて最終的に式場のブライダルフェア予約・見学予約をした件数も、フィード広告メニューのみとの対比で2.1倍となり、質の高いユーザーを獲得できていることが確かめられた。

ゼクシィを企画制作するリクルートマーケティングパートナーズの鎌田静一氏と久保田聖良(せら)氏が、この精度の高いクリエイティブに込めた工夫は、フェイスブック ジャパンで栗山修伍氏と田内真惟人(まいと)氏が現在とりまとめている、DRキャンペーンにおける、ストーリーズ広告の効果向上セオリーとよく合致している。両社への取材から、ストーリーズ広告のDR活用の可能性と効果向上のカギが見えてきた。

左から、フェイスブックの栗山氏と田内氏、リクルートマーケティングパートナーズの久保田氏、鎌田氏

左から、フェイスブックの栗山氏と田内氏、
リクルートマーケティングパートナーズの久保田氏、鎌田氏

「#プレ花嫁」で情報交換

20〜30代の「プレ花嫁」を中心に、これから結婚する女性層に長く支持されているゼクシィ。今年で創刊25周年を迎える本誌以外に、近年はSNSアカウントやアプリの運用を通して、時代に合った情報提供に取り組んでいる。各プラットフォームのユーザー層の違いや受け入れられる投稿などについて、ノウハウを蓄積しながら日々アプローチを改善してきた。

同社ではInstagramにおいて、多くのターゲット女性が「#プレ花嫁」というタグを通して活発に情報交換をしており、ほかのプラットフォームに比べて感度の高いユーザーが多いと把握していたという。ゼクシィをはじめ複数サービスのWebマーケティング全体を統括している、リクルートマーケティングパートナーズの鎌田氏は「直近で国内月間アクティブアカウント数が2000万超という規模にはインパクトがあり、この場をもっと活かせないかと模索してきた。ゼクシィ事業で重きを置いているユーザーと結婚式場のマッチングという観点から、Instagramでは質の高いユーザーをもっと捉えられるのではと考えていた」と語る。

Instagramのフィード広告に以前から出稿するなか、2017年5月に新たにストーリーズ広告がDR目的に対応していくことが発表された。ここにいち早く着目したのが、鎌田氏の下でDR系広告を担当する久保田聖良(せら)氏だ。その数カ月前、ストーリーズ広告がブランディング広告から提供されたときから注目していたという。すぐに、アプリのインストールをCTAに設けるストーリーズ広告を鎌田氏に提案した。

ABCの3パターン

「それには即決でGoを出した」と、鎌田氏は語る。判断の決め手になったのは、まずこれだけリーチの大きいInstagramのなかで、ファーストビューの最上部を占めるストーリーズアイコンの存在感と、タップ後に全画面に拡張するストーリーズ配信面の没入感。あわせて、実際にターゲットに親和性の高い身近なカスタマーがストーリーズを積極的に利用しているという定性的な情報だ。「広告配信のセオリーと周囲の活用状況を掛け合わせたとき、効率的な獲得が見込めたので、すぐに活用を決めた」。

「ストーリーズ広告は、高い効果が見込めた」と鎌田氏

「ストーリーズ広告は、高い効果が見込めた」と鎌田氏

 

一連の企画提案から実行までを手がけた久保田氏は、フェイスブックからも助言を得ながら、わずか1週間でクリエイティブを制作したという。これまでのInstagramフィード広告で蓄積した知見、さらにオーガニック投稿のチームや「プレ花嫁」を知り尽くしているゼクシィ編集部とも密に意見を交わして、クリエイティブをABCの3つのパターンに絞り込んだ。

AとBは、モデルを変えたドレス一本訴求。そしてCは、ドレスも指輪も式場も見られるゼクシィアプリ、と複数を訴求するもの。このうちサブ案として設定したCは、予想通りあまり効果が上がらずに配信数日でストップし、モデルを変えたA案B案ではより効果の高かったA案に絞り、配信を行った。

「実施前にフェイスブックサイドから、海外の事例を参考に『広告っぽくなりすぎない、オーガニック投稿とも距離感が近い内容』『CTAをわかりやすく』という具体的なポイントを聞いた。これを社内と制作会社とで咀嚼し、人気のある投稿なども参考にクリエイティブを作成した。素材はドレスのカタログをもとにした静止画だが、スキップされないようにズームの動きをつけて、アニメーションで手書き文字が書かれていくように仕立てた」と、久保田氏は話す。起用するモデルや、そのポーズ、ドレスの色といった細かい部分も、これまで蓄積したユーザーの反応を検証しながら緻密に設計していった。

「ほかのチャネルのデータも参考に、細かい検証を実施した」と久保田氏

「ほかのチャネルのデータも参考に、細かい検証を実施した」と久保田氏

「大きな手応えを感じた」

その結果、これまでのInstagramフィード広告と比較してCTRは4倍に。ストーリーズ広告導入直後のアプリインストール数は、フィード広告のみだったときと比較して3.1倍、式場のブライダルフェア予約・見学予約も2.1倍に跳ね上がった。同時に、インストール単価は既存広告メニューに比べて37%も抑えられた。既存のフィード広告より成果が悪かったらすぐ撤退することを決めていたが、その心配は杞憂だった。

前述の通り、ゼクシィの事業ではユーザーと式場の適切なマッチングを行うことが重要になる。そのため、「ダウンロードのみならず、式場のブライダルフェア予約・見学予約件数も伸びたことには、特に大きな手ごたえを感じた」と、久保田氏は率直に語る。

これらの一連の結果について、InstagramやFacebookでの広告クリエイティブに関するコンサルティングを行う、同社Creative Shop(クリエイティブショップ)の栗山修伍氏は、「まず、訴求内容がひとつに絞り込まれていた点が、成果の大きな要因だと考えている」と語る。同組織では直近で、昨年展開されたDR広告事例の効果を分析したレポートをまとめている。これによると、フィード広告とストーリーズ広告に共通するクリエイティブのポイントは「ワンメッセージ」「ベネフィットの明示」「メッセージとビジュアルの一貫性」の3点だ。

加えてストーリーズ広告の場合は、確実にCTAへ誘導する設計が重要になる。「ゼクシィの事例は、いずれも当社が昨年を通して導き出した仮説の条件に合致する。複数の訴求軸で制作し、配信しながら最適なクリエイティブを検証していくことはフェイスブックでも推奨している手法」と栗山氏。実際、これらのポイントは普段のフィード広告でも久保田氏が経験上で意識してきたことだそうだ。

「検証を繰り返して、効果的な仮説を導きだすことが大切」と栗山氏

「検証を繰り返して、効果的な仮説を導きだすことが大切」と栗山氏

タテ型動画の衝撃

ストーリーズ広告を出稿した感触として、久保田氏は「何よりタテ型動画であることが大きかった」と強調する。特に、「プレ花嫁」のさまざまな関心事項のなかでも1、2を争うドレスの訴求に絞ったことが、ここで効いてきた。横やスクエアの画角では、ドレスをアップにすると見切れてしまい、全体を入れるとモデルが小さくなってしまうからだ。「その葛藤を超えて、ストーリーズのタテ型動画がバッチリはまった」と振り返る。

ゼクシィのストーリーズ広告の配信は現在も継続中だ。一定の手応えを得た現在、広告主としてストーリーズ広告の利点をどのように捉えているのだろうか。鎌田氏は、「これまでほかのプラットフォームでも動画広告に取り組んできたが、ゼクシィはベンチマークした他業界の指標に届かないことが多かった。動画広告には、掴みに刺激的な表現が必要なことが多く、ゲームアプリなどと違ってゼクシィはその点が難しいからかと考えていた。だが、ストーリーズ広告は自分たちの世界観を発揮した動画で、確実な成果を得ることができた。ここなら、ゼクシィの動画広告も十分に機能すると感じている」と語る。

こうした意見を受けて、Creative Shopでデータサイエンティストを務める田内真惟人(まいと)氏は、「たしかに刺激的な動画広告はCTRが高くなる傾向はあるが、伝えるべきメッセージとの関連性がない場合、最終的な目標となるCVまで結びつかないケースも多い」と、補足する。同社では以前から、最終目的を見据えたクリエイティブと配信の設計を推奨してきた。「あくまで、アプリやサービスの内容のベネフィットをしっかり伝えることが、企業が追求するビジネスゴールへの近道だと考えている」。

「刺激的なクリエイティブは、最終的な結果に繋がるとは限らない」と田内氏

「刺激的なクリエイティブは、最終的な結果に繋がるとは限らない」と田内氏

ストーリーズ広告の特徴

フィードとストーリーズ、両広告の使い分けについて、栗山氏は「基本的な考え方は同じだと捉えている」と話す。CTAの設定はストーリーズ広告の大きな特徴だ。また、全画面のタテ型動画であることも大きい。これは、同社がストーリーズを没入感のあるフォーマットと位置づける要因でもある。

ブランディング広告利用が先行したストーリーズ広告だが、この没入感に加えてCTAの仕組みが、DRに大きく効果を発揮した。この特徴をさらに有効活用すべく、たとえばスワイプ時のLPが画面下部に一部見えるような仕掛けやアテンションを高めるための点滅、フォロワー獲得が目的の場合は、プロフィールアイコンへのクリックを誘導するためにアイコンへCTAを仕掛けたりと、柔軟な工夫を凝らした取り組みがすでにはじまっている。

さらに、昨年「インスタ映え」という言葉が流行した一方で、24時間で消えるストーリーズのオーガニック投稿の仕組みも拍車をかけ、「Instagram全体が以前の『きれいな写真』『かっこいい写真』が集まる場という位置づけより、もっと気軽に自分の身近なものを投稿する場へと徐々にシフトしている傾向がある」と、田内氏は語る。広告でも、オーディエンスに共感してもらえるものを見せることが、より大切になっていく。その点を押さえれば、ブランディングに留まらずDR含めた広告全般への反応が一層高まるだろう。

ゼクシィでは、引き続きDR広告を続けるほか、今回の成果をブランディングのチームにも共有し、今度はブランディング広告の展開も検討しているという。フェイスブックでは今後も事例の分析を重ね、広告運用やクリエイティブの知見を広告主に還元していく。

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Written by 高島知子
Photo by 渡部幸和
Image courtesy of Zexy(トップ画像)