この記事は、DIGIDAY[日本版]のバーティカルサイト、ビューティ、ファッション業界の未来を探るメディア「Glossy」の記事です。 スクリーンの中のファッションスタイル 俳優は明らかに、ファッションスタイルのインフル […]
この記事は、DIGIDAY[日本版]のバーティカルサイト、ビューティ、ファッション業界の未来を探るメディア「Glossy」の記事です。
スクリーンの中のファッションスタイル
俳優は明らかに、ファッションスタイルのインフルエンサーだ。ハリウッドのセレブリティが授賞式で着るものやソーシャルメディアに投稿するものが、ファッション業界に影響を与えていることは誰もが知っている。だが最近では、レッドカーペットに登場するのと同じくらい、スクリーンのなかのファッションも人々に影響を与えることが多くなっている。
番組内で着用された服を同時に販売
6月、カリフォルニアのサーフブランド、クイックシルバー(Quiksilver)は、ノスタルジックな80年代アパレルのフルコレクションをデザインした。これは、Netflixの番組『ストレンジャー・シングス 未知の世界(Stranger Things)』の衣装デザインチームとのコラボレーションで制作されたものだ。同番組からインスピレーションを受けたデザインだけでなく、先日公開された第4シーズンでは、スクリーン上で複数のキャラクターがそのアイテムを着用している。
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たとえば、ローラーリンクのシーンでフィン・ウルフハード氏が演じるマイクが着ている、ビーチにぴったりな黄色のボタンダウンシャツと、裾まわりが黄色いショートパンツが販売されている。また、登場人物のナンシーが着用しているデニムジャケットや、スティーブ・ハリントンというキャラクターが着用しているブルーの折り返しのパンツも製品となっている。
『ストレンジャー・シングス』は、登場人物が着用する80年代スタイルで特に有名になっている。クイックシルバーにしてみれば、これらのスタイルの中心的な提供者となって、シーズンのリリースと同時にオンラインでも購入できるようにするというチャンスを見逃すことはできなかった。
「1986年と1987年のクイックのアーカイブから、『ストレンジャー・シングス(シーズン4)』に合ったクラシックなスタイルを復活させ、キャストと消費者のために特別なアパレルを作ることができた」と語るのは、クイックシルバーで製品開発を担当するアンドリュー・ヘンリー氏だ。「カリフォルニアがサーフカルチャーの中心地とされ、エコービーチ(Echo Beach)の時代だった1986年は、まさにサーフィンとクイックシルバーの真髄ともいえる時期だ。『ストレンジャー・シングス』の衣装デザイナーであるエイミー(パリス氏)との密接なコラボレーションにより、『ストレンジャー・シングス』のプロットにとても自然にフィットする形で当時のクイックシルバーのファッションの影響を強化し、80年代を忠実に再現したシーズン4のキャラクター用アパレルを作成することができた」。
『ストレンジャー・シングス』は特にZ世代を中心に多くの視聴者を抱えており、第4シーズンは、6月だけで9億3000万時間視聴されるなど、公開以来11週連続でNetflixの視聴時間トップ10入りを果たしている。
成長産業となっているプロダクトプレイスメント
ニューイングランドのボートシューズブランドであるスペリー(Sperry)も、映画やテレビに参入している。スペリーは以前、ティーン向けミステリー番組『アウターバンクス(Outer Banks)』に着想を得たコレクションのために、ライセンス契約を通じてNetflixと提携していたが、それらの製品が実際に番組内で着用されることはなかった。しかし来年からは、Amazonプライムの番組『The Summer I Turned Pretty』の第2シーズンで、スペリーの製品が数多く着用される予定だ。
「(この番組は、『アウターバンクス』のような)もうひとつの沿岸部のヤングアダルト番組で、私たちの美学にとてもよくフィットしている」とスペリーのCMOエリザベス・ドローリ氏は述べている。「おかげで特に若い顧客を中心に、わくわくしてもらえると思う」。
『The Summer I Turned Pretty』もまた、多くのZ世代に支持されている番組だ。この番組のハッシュタグ「#thesummeriturnedpretty」は、TikTokで10億回以上視聴されている。
テレビにおけるプロダクトプレイスメントは、特にストリーミングテレビの時代には、230億ドル(約3.1兆円)規模の成長産業である。Amazonとピーコック(Peacock)は最近、ブランドが自社製品を番組内に後からデジタルで挿入できるツールを発表し、プロダクトプレイスメントの可能性をさらに広げているが、スペリーとクイックシルバーは同様のツールは使用していない。
番組とファッションブランドとの提携がむずかしい理由
とはいえ、番組に商品を登場させるのは必ずしも簡単なことではない。登場人物の絶妙な服装が広く注目されているHuluの番組『一流シェフのファミリーレストラン(The Bear)』で衣装デザイナーを務めているコートニー・ウィーラー氏とクリスティーナ・スピリダキス氏は、通常、キャラクターに着せる服をブランドの要望をもとに選ぶことはないと語った。
「それはあり得ることではある。アート部門がブランドと直接提携していて、契約が成立するような大規模な映画やテレビ番組なら、そうしたことが起こりやすい」とウィーラー氏は言う。「でも私たちには当てはまらない」。
そうではなく、ウィーラー氏とスピリダキス氏が考慮する唯一の事柄は、その服が登場人物にに合っているか、ストーリーにはまっているかという点だという。番組で使用されるのではと期待して、ブランドがふたりに無料で服を送ったとしても、多くの場合、そうした服はクリアランス品であり、背景のキャラクターに着せるだけで終わる。
スピリダキス氏によれば、ブランドは季節性も考慮する必要があり、これもまた小さな画面上にブランドの服を登場させる方法に支障をきたす要因となっている。
「私たちは、実際に番組が公開される1年前に作業をしていることもある」とスピリダキス氏は説明した。「雑誌やミュージックビデオのようにすぐに公開されるわけではないし、ブランドが現在のシーズンのアイテムを起用させることもできない。1年後まで公開されないものには、編集上の見返りがあまりない」。
クイックシルバーは『ストレンジャー・シングス』とかなり前から協力し、番組と同時にリリースできるように3年かけて衣装を計画し、デザインすることで、この問題を回避している。もっと即興的なパートナーシップは実現するのがかなり難しい、とスピリダキス氏は述べている。
最悪のインフレから隔絶されたラグジュアリーブランド
8月2週目に行われたラグジュアリーブランドの決算説明会では、高価格帯とより裕福な消費者のおかげで、インフレの影響はまったく見られなかった。
ラルフローレン(Ralph Lauren)とカプリホールディングス(Capri Holdings)は、いずれも前四半期の収益が8〜9%増加、在庫投資額もそれぞれ66%と47%増加している。
カナダグース(Canada Goose)では、前期に収益が24%増となり、特にD2Cの収益が20%近く伸びて好調だった。
これらのブランドはそれぞれ高所得者層を顧客としており、提供している格安品には価値の基準を置いていない。顧客は高価格に慣れており、品質やブランド名に対して対価を支払っている。H&Mのように低価格を売りにしているブランドとは異なり、これらのブランドは価格のわずかな上昇に影響を受けない。
カナダグースのエグゼクティブバイスプレジデントでCFOのジョナサン・シンクレア氏は、8月11日に行われた同ブランドの第1四半期収益報告会で、「我が社にはコストインフレーションを上回る価格を設定してきた長い歴史があり、それは当社製品が提供する品質と機能的価値に基づいている」と述べた。「垂直統合統合のメーカーとしての事業水準、またほとんどの製品がカナダで製造または購入され、平均単価が高いという我が社の差別化された事業水準も、インフレ圧力の一部を軽減するのに貢献している」。
[原文:Fashion Briefing: Brands are looking to streaming television for on-screen advertising]
DANNY PARISI(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)