警察官による残酷な事件への抗議が全米で続くなか、米国のマーケターはまたしても広告とチーム管理の見直しを余儀なくされている。そこで、米DIGIDAYでは、IBMのデジタル営業担当バイスプレジデント兼CMOのミシェル・ペルーソ氏に話を伺った。
コロナ禍に対抗するため、米国のマーケターは3月中旬からマーケティングと広告計画の一新を進めてきた。そしていま、警察官による残酷な事件への抗議が全米で続くなか、彼らはまたしても広告とチーム管理の見直しを余儀なくされている。
米DIGIDAYは、IBMのデジタル営業担当バイスプレジデント兼CMOのミシェル・ペルーソ氏に話を伺った。同氏は最近、危機を切り抜けるための指針と広告への支出が回復する時期についての記事を執筆した。
なお、以下のインタビューは内容を明瞭にするため若干の編集とまとめを行っている。
Advertisement
――現在、ご自身のチームを管理するため行っていることは?
ここ数日、本当に胸が張り裂けそうだった。先程も、アフリカ系のリーダーたちから胸が張り裂けるような話を電話で伺った。社員やクライアント、ブランド、デジタルと社会全体の位置づけについて、私たちは熱心に耳を傾ける必要がある。そして迅速に、なによりも素早く行動しなければならない。現代社会において、すべての行動を正しく行えるとは限らないのだ。
――物事を見つめ直すため、1日ほど休みを設けようと考えたことは?
事件の報道について私たちは皆、注意深く耳を傾けてきた。あの事件の前から、特にマーケティングチームに対して休むように勧めてきた。業務のデジタル化に向けて残業を続けてきた社員も多いためだ。パンデミックを乗り切るためのこうした取り組みを行いながら、彼らは子供の勉強を手伝い、自分たちの健康についても心配しなければならなかった。そんななか、今回の事件を受けて、一度休息を取ることはなおさら大切だと思う。
――コロナウイルスに引き続き、今回の事件でも広告を止める企業も出てきた。御社でも広告を停止したか?
広告は止めていない。だが、たくさんの話し合いを行い、状況を注視してきた。当然の怒りや感情、そして現状。そのバランスを取る必要がある。最新の正確な数字はわからないが、3600万人が失業していて、各社が営業再開に向けて努力している。これは融和のための挑戦だ。いま、マーケターは深い思慮を巡らせるべきだ。現状でできることはそういった話し合いだろう。「今後90日にこれを行う」といった決定はできない。
――少し話を戻して、コロナ禍の発生時は広告を停止したか?
広告をすべて新しく差し替えた。その取り組みのなかで、当社の広告がほとんど人目に触れなかった日も間違いなくあっただろう。だが、新しい広告は10日以内に配信された。移行は迅速に行われ、新しいメッセージが届けられたのだ。さらに新しいチャネルでの取り組みも進められている。いくつかの企業のように、大規模に広告を停止してはいない。デジタルでの配信はいまでも続けている。
――広告はどれくらい削減した?
もちろん、ニューヨークのエレベーターや屋外を対象にした広告を出すのは意味がない。だから、いくつかの広告は変更や撤去を行った。会議室や飛行機が舞台の広告もあったが、それも不適切に思われた。だからこそ、広告の内容を一新する必要があった。10日という期間のなかで、撤去と新しいコンテンツの登場が同時に進んだのだ。だが完全に沈黙したり、大幅に削減したりすることもなかった。削減の規模は小さかったといえる。変更は行ったが、支出を大きく減らすといったこともなかった。
――現状、広告費の削減について話し合いは行われているか?
マーケティング予算は固定すべきではないというのが私の信念だ。常に即応性のある対応が求められる。また文化的な問題について、非常に思慮深くあらねばならない。たとえばここ2日ほど、当社は支持を表明した以外はSNSでほとんど発言していない。新製品の発売などについて話してはいないのだ。現時点ではテレビCMの停止といった大きな決定は下していない。
――マーケターは、いま広告を出すべきかどうか、熟考していると思うか?
常にその思考を続けるのが良いマーケターだ。経済や、今回のような人種問題、#MeTooなど、社会的な問題は繰り返し訪れる。そのなかでセンシティブかつ思慮深く物事を進めなければならない。COVID-19と、それに伴う失業問題と、今回の人種差別への正当な怒りが同時進行するなかで、未来を正確に見通せる人は誰もいないだろう。私は毎朝、チームメンバーと話している。私たちは自分たちの置かれている現状について感覚を研ぎ澄ませ、把握し、理解しようとつとめている。それに加えて、役に立つデータをもとに、自分たちの取るべき行動を決めている。
――マーケターの支出は、いつごろ以前の水準に戻るだろうか?
それは業界と企業ごとに大きく変わるだろう。マーケターが制御できるのは、財務部門とどれくらい密に協力できるか、そしてどれだけ効果的な支出を行えるかだ。もしマーケティングの力が弱ければ、「マーケティング支出を減らして予算問題を解決しよう」というのは簡単だ。だがそれは長期的に見れば収益に悪影響を及ぼす。
KRISTINA MONLLOS(原文 / 訳:SI Japan)