小売業者は、都市部のショッピングセンターや新しい地域に進出するための手段として、従来型の大型店舗のレイアウトとは大きく異なる外観の新店舗をオープンしている。
メイシーズ(Macy’s)は10月初頭、モール外のショッピングセンターに最大30店舗の小型店舗を新たにオープンする計画を発表した。イケア(Ikea)は以前、米モダンリテールに対し、従来型の大型店舗が所在していない地域に参入する試みとして、小型店舗を開発中だと、語った。家庭用収納・商品小売のザ・コンテイナー・ストア(The Container Store)は、2023年度に新たに6店舗の小型店舗の運営を開始することをめざしていると語った。
その名が示すように、大型店舗は十分な土地面積が必要だが、これは交通量の多い都市部のショッピングセンターや地域には適していない。そのため、これらの大型小売店舗は伝統的に都市部から離れた場所に設置されてきた。これらの大型店舗を運営している小売業者は、小型店舗を利用することで、これまで機会を逃してきた地域に店舗を開設し、より多くの買い物客にリーチすることができる。続きを読む
この記事は、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です。
小売業者は、都市部のショッピングセンターや新しい地域に進出するための手段として、従来型の大型店舗のレイアウトとは大きく異なる外観の新店舗をオープンしている。
メイシーズ(Macy’s)は10月初頭、モール外のショッピングセンターに最大30店舗の小型店舗を新たにオープンする計画を発表した。イケア(Ikea)は以前、米モダンリテールに対し、従来型の大型店舗が所在していない地域に参入する試みとして、小型店舗を開発中だと、語った。家庭用収納・商品小売のザ・コンテイナー・ストア(The Container Store)は、2023年度に新たに6店舗の小型店舗の運営を開始することをめざしていると語った。
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その名が示すように、大型店舗は十分な土地面積が必要だが、これは交通量の多い都市部のショッピングセンターや地域には適していない。そのため、これらの大型小売店舗は伝統的に都市部から離れた場所に設置されてきた。これらの大型店舗を運営している小売業者は、小型店舗を利用することで、これまで機会を逃してきた地域に店舗を開設し、より多くの買い物客にリーチすることができる。
既存市場でのプレゼンスを維持・拡大
「交通パターンには逆らえない」と語るのは、調査企業ガートナー(Gartner)でマーケティング実践を担当しているディレクターアナリストのブラッド・ジャシンスキー氏だ。「これらの小売業者の多くは、買い物客が自然と足を運ぶような、人口の多いエリアに近い場所に移行してきている」。
メイシーズは、これらの小型店舗を利用することで、既存市場でのプレゼンスを維持・拡大できるとともに、不採算店舗の入れ替えを可能にすると、最高店舗責任者のマーク・マストロナルディ氏はビデオ発表で述べた。このコンセプトは2020年に取り入れられ、現在ではメイシーズとブルーミーズ(Bloomie’s)の小型店舗を合計11店出店している。
近年の百貨店は、モールをベースとしているという評判を払拭しようと試みてきた。メイシーズは2022年度第4四半期に、ブルーミーズというコンセプト店舗のひとつがほかの店舗より業績が良かったことを公表した。この四半期にブルーミーズの既存店売上高は12%増加した。
「これまでのところ、売上は順調に伸びてきた。顧客は厳選された商品の品揃えを好んでおり、場所がモール外であることは、メイシーズのブランドをより多くの人々に広めるため役立っている」と、CEOのジェフ・ジェネット氏は10月初頭に投稿された動画で語っている。
新規顧客にリーチする
実際に、小型店舗は小売業者が新しい顧客にリーチするのに役立つ可能性がある。ザ・コンテイナー・ストアのCEOを務めるサティシュ・マルホトラ氏は、2月の決算発表で、ニューハンプシャー、ニューセーラムの小型店舗を開設から1週間以内に訪れた顧客の70%は、同ブランドで買い物をするのがはじめてだったと述べている。同様に、コロラドスプリングスの小型店舗を開設から1週間以内に訪問した顧客の58%は、ザ・コンテイナー・ストアで買い物をするのがはじめての顧客だった。
コンサルティング企業のザ・パーカー・アベリー・グループ(The Parker Avery Group)のプレジデント兼マネージングパートナーであるクレイ・パーネル氏は、小型店舗を利用する小売業者は、在庫を戦略的に管理する必要があると語る。たとえば、イケアは以前米モダンリテールに対し、小型店舗では、キッチン、バスルーム、ベッドルーム用品に特化し、店舗周辺に住む人々の共感を得られるような商品を扱うと語った。
「大型店舗の小売業者は、売り場面積が広すぎることで、ある意味甘やかされている。たとえ収益性や生産性が低くても、特定のカテゴリーを好きなだけ、広く、深く取り扱うことができるのだ。小型店舗では、必ず行わなければならないことを誠実に行う必要がある。つまり、扱うべき商品の品揃え、そしてどの程度広い範囲の商品を扱う必要があるかを考えないといけない」と、パーネル氏は語る。
ビーディーオー(BDO)の再構築および転換サービス実践の全国リーダーを務めるデビッド・バーリナー氏は、小型店舗は一般に在庫も少ないため、小売業者はコストを削減できると話す。さらに、小型店舗では必要な店員の数も少なくなる。スプラウツファーマーズマーケット(Sprouts Farmers Market)は、バージニアのマナサスにある小型店舗のモデルで、従来の店舗フォーマットと比べて利益率が大きくなり、労働力コストが減少し、建設コストが20%削減されたと、グロッサリーダイブ(Grocery Dive)に語った。
顧客の失望を招く恐れも
しかし、小型店舗は完全無欠というわけではない。小売業者が小型店舗の運営を開始して拡大するにつれ、近くにある既存の店舗を共食いするリスクを冒すことになると、バーリナー氏は語る。また、小型でより精選された店舗のコンセプトは、顧客が望みの商品を見つけられなかったとき、顧客の体験として失望を招く恐れもある。
小型店舗のコンセプトは決して新しいものではなく、早くは2019年にターゲット(Target)が小さな店舗を開設している。しかし同社は今年3月、「何年も業績改善に取り組んできた」あとで、小型店舗4店舗を閉店すると発表した。これらの店舗はワシントンD.C.、ミネアポリス、フィラデルフィアの大都市圏に位置していた。
「最初は期待されるが、すべての店舗がうまくいくとは限らない。大型店舗ではなく小型店舗を開設するわけだから、一部の店舗は、これまで取り扱っていなかった市場に小さいリスクで拡大できるチャンスになる。しかし、その新しい市場で顧客を獲得できるという保証はない」とバーリナー氏は述べている。
Maria Monteros(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Macy’s