バーチャルアシスタントで、約3億円の販売機会損失をカバー : マークス&スペンサーの挑戦

英国の小売企業マークス&スペンサー(Marks & Spencer:以下、M&S)がウェブサイトにバーチャルアシスタントを導入して1年、この技術の開発者のひとりは、これがなければ失っていたであろう200万ポンド(約2億9000万円)相当のオンラインセールスにつながったと言っている。

失っていた収益を奪還

2017年9月に発表されて以来、M&Sは、注文時に割引コードの使い方がわからない場合など、サイト全体でさまざまな機能をアシスタントに担わせてきた。コードの使い方がわからないと注文を止めてしまう危険があったが、バーチャルアシスタントの登場以前M&Sにはそうした瞬間に買い物客を支援する方法がなかった。いまでは、誰かが2度コードを入れ間違えると、アシスタントが一連の選択方式の質問を通じて買い物客を誘導し、問題解決を促す。

この種の介入によりM&Sは、これがなければ失っていたであろう売上を確保できたと、同社のエンタープライズアーキテクトであるアカシュ・パーマー氏はいう。2017年には食料品だけで59億ポンド(約8590億円)を販売するビジネス規模を考えるとこれはわずかな額だが、人々のオンラインでのショッピングの仕方に、このアシスタントが影響を与えはじめていることを反映していると、パーマー氏は話す。

「販促用コードが使えないからという理由で彼らがセールを諦めてしまったとしたら、我々はその売り上げを失ってしまっただろう。だからバーチャルアシスタントは、我々がそうした損失をするのを防いでくれる」。

技術の横展開も視野に

パーマー氏は、これまでに100万人いる顧客の4分の1がアシスタントを利用していると語り、問題の約7割については、人間の介入なしに解決できて満足していたと説明する。そうしたシーンの11カ所で、ユーザーが何をすべきか理解に苦しみそうだとM&Sが把握している特定のポイントでバーチャルアシスタントが起動する。たとえば、買い物客がM&Sの「スパークス(Sparks)」ロイヤリティスキームのオンラインでの使い方に苦労していたら、バーチャルアシスタントが出てきて、一連の質問をして何が問題かを理解できるようにする。返金についても同じことで、M&Sは主にチェックアウトプロセスやアカウントページにバーチャルアシスタントを配置している。

バーチャルアシスタント利用の多くはデスクトップで起こっているが、M&Sのトラフィックはほとんど(75%)がモバイルブラウザから来ている。それでもM&Sは、バーチャルアシスタントを拡大して専用アプリにしたり、エイソス(Asos)のような他の小売業者がテストしているように、Facebookの「メッセンジャー(Messenger)」チャットボットにしたりするつもりはないという。しかし、もし機会があって、Facebookやスマートスピーカーを念頭においてバーチャルアシスタントが作られるようになると、状況は変わりうる。

「バーチャルアシスタントをM&Sのサイトを越えて使う予定はいまのところない。だが、その背景にある技術スタックは、Facebookのような違うチャンネルに切り替えられるようになっており、顧客を前に進めるためにそれが正しいと考えるなら、声に出していく」と、パーマー氏は述べる。

いまや小売業界のトレンド

M&Sやエイソスのような小売業者がオンラインセールス奨励に向けたより早く、より経済的な方法を提供しようとしているなかで、バーチャルアシスタントは小売業界のトレンドとして広がっている。M&Sにとってこの動きは、2018年12月に同社初の最高デジタルならびにデータ責任者となるジェレミー・ピー氏の着任を前に、オンラインプレゼンスの広範囲にわたるオーバーホール作業の一部だ。M&S社内にはデジタルイノベーションチームがいて、2018年初頭からスタートアップインキュベーターのファンダーズ・ファクトリーと仕事を進めてきた。

Seb Joseph(原文 / 訳:ガリレオ)