プログラマティック広告の透明化に取り組む組織が増えているいま、エージェンシー、ブランド、パブリッシャー、ベンダー、それに業界団体が、サプライチェーンの浄化を求めて騒ぎ立てています。こうしたなかで、アドテク業界で最近騒がれているソリューションがあります。「ads.txt」という名前が付いたテキストファイルです。
プログラマティック広告の透明化に取り組む組織が増えているいま、エージェンシー、ブランド、パブリッシャー、ベンダー、それに業界団体が、サプライチェーンの浄化を求めて騒ぎ立てています。こうしたなかで、アドテク業界で最近騒がれているソリューションがあります。「ads.txt」という名前が付いたテキストファイルです。
今回の「一問一答」シリーズで取り上げるads.txtは、インタラクティブ広告協議会テックラボ(IABテックラボ)が5月にお披露目した新しい構想です。インベントリー(在庫)のアービトラージ(裁定取引)を行ったり、別ドメインに成りすまそうとする不適切な売り手を、広告の買い手(広告主・代理店側)が避けるのに役立つものです。
まだよくわからない? では、以下で詳しく説明します。
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――それで、ads.txtとは何なのですか?
権限のないインベントリー販売の防止を目的にした、IABが承認したテキストファイルです。
――仕組みは?
パブリッシャー側はウェブサーバーに、インベントリーを販売する権限のある会社すべてを列挙したテキストファイルを置きます。プログラマティックプラットフォーム側も、インベントリー販売の権限を与えられているパブリッシャーを明確にするため、ads.txtファイルを統合します。これにより買い手側は、購入するインベントリーの有効性を確認できるわけです。
――買い手は、販売の権限を確認するとき、ads.txtをどう使うのですか?
エクスチェンジと、エクスチェンジが代理しているパブリッシャーが、それぞれads.txtを採用している場合、入札者はそれぞれのタグでads.txtファイルの存在を確認し、エクスチェンジとパブリッシャーが確かに互いにつながっていることを検証できます。
――権限がある売り手をads.txtで確認する方法はほかにもありますか?
はい。たとえば、ハフポストのインベントリーを購入したものの、インベントリーの出どころであるエクスチェンジが疑わしいとしましょう。ハフポストがads.txtを使っている場合、買い手は「huffpost.com/ads.txt」にアクセスして、そのエクスチェンジがハフポストのインベントリーを売る権限があるところとして挙げられているのかを確かめることができます。以上の説明は、インデックス・エクスチェンジ(Index Exchange)のパートナーサクセス担当バイスプレジデント、ステイーブ・サリバン氏によるものです。
IABテックラボは5月30日、パブリッシャーのWebサイトからads.txtファイルを迅速に引っ張ってこれるクローラーを公開しました。IABテックラボのGM、アランナ・ゴンベール氏は、複数パブリッシャーのads.txtファイルを確認したい場合、効率化にこのクローラーが役立つと語りました。
――なぜ重要なのですか?
権限のない再販売は、プログラマティック広告の大きな悩みの種になっています。これまでは、買い手側が、パブリッシャーのインベントリーを販売する権限があるサプライサイドプラットフォーム(以下、SSP)を知るには、パブリッシャーに直接連絡するしかなかったと、サリバン氏は指摘します。権限のある売り手を集めたリストを作れば、買い手側(広告主)が、求めるインベントリーへの正当なアクセス権のあるプログラマティック企業を判断するのに役立つはずです。
――マイナス面はありませんか?
それは尋ねる相手次第です。SSPは密かに再販売をすることで大きくなったベンダーです。買い手側(広告主)が彼らSSPのそうした行為に対して牽制するような動きがあれば、それはSSPのビジネスの一部をカットすることになるでしょう。
「理論的にいえば、正当なものだとラベルされていないインベントリーを受け取った場合、そのリクエストは無効にするべきだ」と、米SSP大手、ルビコン・プロジェクト(The Rubicon Project)のCTO、トム・カーショー氏は語っています。
――健全な会社へのマイナス面はどうですか?
パブリッシャーとエクスチェンジの大半は、すでに開発リソースが不足しています。そうしたなかで、Web開発者をテキストファイルの統合に割り振ることが必要になります。また、権限のある売り手のリストをパブリッシャーがいつ変更するかわからないなかで、そのテキストファイルを監視することが必要になります。
「それでも、作業量としては小さいものだ」と語るのは、ビジネスインサイダー(Business Insider)のCRO、ピート・スパンデ氏。同氏はads.txtファイルを、詐欺を減らしはするものの排除するわけではないクレジットカードのチップになぞらえます。「権限のない在庫の再販売は、パブリッシャーのブランドを大きく損なう恐れがある。我々は各自の役割を果たす必要がある」。
――いい話に聞こえますが、実際に効果があるのでしょうか?
それは状況によります。ads.txtの成功はネットワーク効果次第です。というのも、パブリッシャーとエクスチェンジが一体となって採用してはじめて、買い手(広告主)にとって信頼できる迅速な確認手段になるからです。6月19日まではパブリックコメントの段階であり、エクスチェンジへの統合はまだ途中なので、広告業界でどれくらい普及することになるのかはまだわかりません。
メディアエージェンシーのメディアスミス(Mediasmith)のCEOデビッド・スミス氏は、「(ads.txtの採用は)適切だ。我々としては、買っていると考えている相手から本当に買っているのかどうかを知りたいからだ」と述べます。「しかし、IABがパブリッシャーを参加させられるかが鍵になるだろう」。
Ross Benes (原文 / 訳:ガリレオ)
Image from GettyImages