【一問一答】Googleの「 プライバシーサンドボックス 」とは?:Cookieの代わりとされる5つのAPI

Googleがサードパーティcookieの廃止を決めました。この決定に対する怒号が続くなか、Googleはそれに代わるものとして「プライバシーサンドボックス(Privacy Sandbox)」を盛んに売り込んでいます。同社はこの取り組みを、Chromeブラウザ内における広告ターゲティングの許可を継続しつつ、不適切なトラッキングを減らすための一手段であると断言しています。ところが広告業界からは、この提案には何か落とし穴があるのではないかと懸念する声があがっています。

Googleから何か大きな発表があるときは得てしてそうですが、このプライバシーサンドボックスに対しても、広告業界は興奮と混乱が入り混じった反応を示しています。プライバシーサンドボックスとは、いったい何なのでしょう? プライバシーサンドボックスのしくみはどうなっているのでしょう?

それでは、さっそく「一問一答」シリーズで、その基礎を勉強しましょう。

──Googleのプライバシーサンドボックスとは、いったい何でしょう?

Cookieレスな未来に向けて Googleは、プライバシーサンドボックスが設定する基準にもとづく、広告ターゲティングや測定、詐欺防止の実現を目指しています。プライバシーサンドボックスでは、5つのAPIがCookieの代わりとなります。広告主は各APIを使って、コンバージョン(自社広告のパフォーマンス)やアトリビューション(購入に貢献したエンティティ)などのポイントに関する集計データを受け取ることになります。プライバシーサンドボックスとは、Googleが広告業界に向けて提供する代替案で、個人のChromeブラウザ内の(Cookiesではない)非特定化されたシグナルを利用して、そのユーザーの閲覧傾向から利益をあげることを目指します。

PHDメディア(PHD Media)でアナリティクス担当ワールドワイド責任者を務めるポール・クックー氏は、こう語っています。「我々は次のふたつのエリアで最大の変化が起きると想定している。ひとつは、広告主とパブリッシャーの双方にとっての、ファーストパーティデータの価値の上昇。そしてもうひとつは、ユーザーと直接的な関係を持たないデータブローカーやパートナーをソースとするサードパーティオーディエンスデータ不足の増大だ」。

──そこには何が含まれるのでしょうか?

プライバシーサンドボックスは、まだはじまったばかりです。そのため、Googleはさまざまな機能を提案してはいますが、マーケターが適切な評価を下せるプラットフォームやコードはまだ存在していません。各APIについてこれまでにわかっているのは、次のとおりです。「トラストAPI(trust API)」は、Google版のCAPTCHAです。このAPIは、CAPTCHAに似たプログラムへの記入をChromeユーザーに一度だけ求めます。その後は、匿名の「トラストトークン(trust tokens)」を利用して、このユーザーが本物の人間であることを証明します。「プライバシーバジェットAPI(privacy budget API)」は、それぞれに「バジェット」を与えることにより、サイトがGoogleのAPIから収集するデータの量を制限します。Cookieに代わる「コンバージョンメジャーメントAPI(conversion measurement API)」は、ユーザーが広告を見たかどうか、そして最終的に商品を購入したかどうか、あるいは宣伝ページを開いたかどうかを広告主に知らせます。「FLoC(Federated Learning of Cohorts:コホートの連合学習)」は、機械学習を利用して、同じようなユーザーからなる各グループの閲覧傾向を調べます。そして最後が「PIGIN(referring to private interest groups, including noise[ノイズを含んだプライベート関心グループ])」です。ユーザーが所属すると思われる一連の関心グループをChromeブラウザに追跡させます。

「プライバシーサンドボックスに関してもっとも重要なのは、すべてのユーザーデータをChromeブラウザに移し、そこで処理・保存するというGoogleの提案だ。つまり、データはユーザーのデバイス内にとどまり、プライバシーに準拠する。これはいまや、やらなければならないことの最低ラインであり、プライバシーの黄金律だ」と、データマネジメントプラットフォームプロバイダーのパーミューティブ(Permutive)でマーケティングディレクターを務めるアミット・コテチャ氏は言います。

──最初にチェックすべき提案はどれでしょうか?

GoogleのコンバージョンメジャーメントAPIは、ここまででもっとも大きな議論をメディアバイヤーたちのあいだに巻き起こしてきました。これはまた、Chromeデベロッパーがテストの実施を決定した最初のAPIでもあります。Chromeにおけるページビューや購入への影響に対する広告の貢献度を測定できるようになれば、予算がチャネル間でどのように分配されるのか、アドテクベンダーがどのプロダクトを開発するのかなど、デジタル広告のあらゆる側面が影響を受けることになるはずです。コンバージョンメジャーメントAPIの今後の展開に目を向けていれば、プライバシーサンドボックスやデジタル広告全般に対するGoogleの構想がはっきりと見えてくるでしょう。

エッセンス(Essence)EMEAのプログラマティック広告担当責任者を務めるマット・マッキンタイア氏は、こう語っています。「コンバージョン測定がごく簡単なクリックベースのアトリビューションに限られるのであれば、それが意味するのは、ダイレクトレスポンス型の広告キャンペーンに対するフォーカスが大きくなるということかもしれない」。

──これらはどれも良い効果をもたらすのでしょうか?

Googleは広告主やChromeユーザーと協力して、プライバシーサンドボックスが自社の収益だけでなく、業界のすべてのステークホルダーの利益につながるようにすることを歓迎すると、同社は発表しています。ユーザーについて、どのような情報が集められるのかに対する懸念。自身についてどんな情報が収集されているのかをユーザーに知ってもらうためのいちばん良い方法についてのインサイト。これがGoogleが求めているフィードバックです。同社はまた、提案している各APIについての一般的なフィードバックも求めています。このプロセス全体の最終目標は、これらのAPIを、SafariやMozillaをはじめとするほかのブラウザのベンダーが採用することも理論上可能なオープンなウェブ標準にすることです。ここまでのところ、標準化団体のワールドワイド・ウェブ・コンソーシアム(W3C)がプライバシーサンドボックスの開発に関わっています。そのため一部の業界関係者は、これら5つのAPIがブラウザ間で一貫性を持つようになる道が切り開かれるかもしれないと考えています。

「最終的には広告主のほうが、エコシステム全体のユーザーに対して、より安定した見方をするようになるかもしれない」と、マッキンタイア氏は述べています。

──これら5つのAPIがGoogleによるユニバーサル識別子への道を切り開く可能性は?

プライバシーサンドボックスの開発によって、結果的にユニバーサル識別子が生み出される可能性はあります。ですがGoogleは、必ずそうなるとは断言していません。けれども一部の広告業界幹部は、ユニバーサル識別子こそブラウザを所有するこの広告企業にとっての究極の「詰め」であると考えています。ユニバーサル識別子の大半は現在のところ、サードパーティcookieを集中型情報データベースに結びつけて、個人に関する事実ではなく、ユーザーが特定のカテゴリーに所属しているという可能性に基づくIDを作成しています。

アドテクベンダーのスマートパイプ(Smartpipe)で最高プロダクト責任者を務めるタニヤ・フィールド氏は、「今回の動きで、Googleがそれに代わるものを独自開発し、ソリューションと予算の両方を自分のものにする可能性はある」と語っています。

──業界関係者が抱くほかの懸念は?

広告主はいま、プライバシーサンドボックスが本当にGoogleとその他の広告業界のあいだに機会の均等をもたらすのかどうかを見極めようとしています。Googleの社内には、広告に特化したチームが複数あります。これらのチームも今後、広告主やパブリッシャー、アドテクベンダーに提供されているのと同じプライベートサンドボックスの集計されたユーザーデータにしかアクセスできなくなるのかどうか、業界関係者は疑問を抱いています。それともGoogleは、自社のチームには例外を認め、詳細なレベルのユーザーデータへのアクセスを許可するのでしょうか? Googleは長きにわたって、自社の広告収入を守るために、自社の側にてんびんを傾けてきたのです

アドテクベンダーのパブマティック(PubMatic)でCEOを務めるラジーヴ・ゴエル氏は、こう語っています。「Google Chromeは先日、プライバシーサンドボックスによるさまざまな変更点を発表したが、AdWordsやDV360などのマーケティングソリューションの扱いについては、今後どうなるのかまだわからない。その他のエコシステムと同じ制限を持つことになるかもしれないし、自社ユーザー専用の特別なアクセスを持つことになるかもしれない」。

Seb Joseph (原文 / 訳:ガリレオ)