ファッション業界における新流行「アスレジャー」は、アスレチック(競技)とレジャー(余暇)を掛け合わせた造語。フィットネスクラブやヨガスタジオで着るスポーツウェアを普段着としても着用するスタイルだ。そのカテゴリーに入るヨガパンツは、いまや「新しいデニム」と呼ばれ、ジーンズ同様に公私で広く愛用されているという。
ブルームバーグは、ジーンズ大手の老舗リーバイスが、頭打ちのジーンズ需要と、女性がジーンズよりヨガパンツを選ぶ傾向に苦しんでいると伝えている。同記事によると、アスレチックパンツに限れば2010年から2014年の間に売上は62%伸びた。調査企業のNPDグループによると、2014年時点でアスレチックパンツとジーンズの販売数は並び、女性向けジーンズ市場は8%縮小したという。
本記事では、そんなアパレル業界におけるビッグトピックスについて掘り下げる。
米ファッションの新流行「アスレジャー」。アスレチック(競技)とレジャー(余暇)を掛け合わせた造語で、フィットネスクラブやヨガスタジオで着るスポーツウェアを、普段着として着用するスタイルを指す。主に「健康と運動に意識の高い」女性を惹きつけており、近年のさまざまなトレンドと同様、アスレジャーの流行にはソーシャルメディアによる情報拡散が大きな役割を担ったと言われている。
2000年の初めにヨガブランド「ルルレモン(Lululemon)」が、アスレジャーの雛形を考案。15年後の現在、ヨガスタジオに通い、オーガニック食品で健康を維持するライフスタイルが広く浸透している。いまやアスレジャーは、アパレル企業がもっとも激しい競争を繰り広げる市場となった。
本記事では、そんなアパレル業界におけるビッグトピックスについて掘り下げる。以下の6つが拡大するアスレジャー市場について知っておくべきことだ。
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1. そもそも「アスレジャー」とは何か?
アスレジャーとは、アスレチックとレジャー、一見異なる意味をもった言葉を掛け合わせた造語。メディアやファッション業界も、もはやレギンス、タンクトップやスニーカー(それぞれアスレジャーのカテゴリーに入るアイテム)は普段着の一部になっていると表現している。
「以前はハンドバッグがそうであったように、現在、スニーカーはタンスの必需品だ」とマーケティング企業のForward3dのCEOを務めるマーチン・マクヌルティ氏は話す。米国の10代では「ジーンズを捨てて、スポーティな服に切り替える」現象が起きているという。
2. SNSによる拡散で生み出された流行
社会的変化を反映しているアスレジャー。人々は健康的なライフスタイルにおいてだけではなく、普段着にも快適さと機能性を求めている。また、アスレジャーの流行は、ソーシャルメディアの拡散にも助けられているという。
「この流行はデジタルメディアによる情報の普及のおかげだと思っている」。デジタルエージェンシーのレイザーフィッシュでコマース戦略を担当するスティーブ・ホワイト氏は話した。「ファッショカタログ、インフルエンサー、ブロガーやPinterestなど、すべてがファッションの定義を広げ、パーソナライズされた」。
3. タイツをより高額で販売することができる
ルルレモンのレギンスは90ドル(約1万円)、デザイナーが手がけたレギンスは400ドル(約4万8000円)もする。こうしている間にも多くのレギンスが、さまざまな価格で販売されているのだ。
アスレジャーはスポーツ小売業者やスポーツデザイナーによって、熱心に商品開発されている。GAPから高級ブランドのシャネル、ケイト・スペード、そして従来的なスポーツブランドたちは、アスレチックウェアをよりクールにしようとしているのだ。
ルルレモンのアスレジャー商品
4.「新たなデニム」としての長期トレンド
このアスレジャーのトレンドはサッカーマム(子供にサッカーを習わせる教育熱心なアッパーミドル階級の母親)やミレニアル世代(1980年代から2000年代初頭に生まれた若年層)に限ったものではない。人々はアスレジャーを着て、エアロバイクに乗ったり、ヨガクラスに参加したりするだけでなく、パーティや重役会議にまで参加している。マーケットリサーチ企業のNPDによると、スポーツウェアを購入するおよそ半分の人たちはスポーツ目的で購入しているのではなく、カジュアルに着る普段着目的として購入しているという。
ナイキのCEOであるマーク・パーカー氏は、2014年の秋にニューヨークで行われた「Women’s Innovation Summit」にて「レギンスは新たなデニムである」と発言したが、少しも不思議ではない。
5. 右肩上がりの成長を続ける売上
これは単なる一過性のトレンドではない。激化する競合環境のなか、小売業界にとってアスレジャーは成長の舞台になるかもしれないのだ。市場リサーチ企業のユーロモニター・インターナショナル(Euromonitor International)によると、アメリカ国内におけるアウトドアや「スポーツに影響された洋服」なども含むスポーツウェアの売上は7.8%成長していて、2014年は910億ドル(約11兆円)の利益があったという。2007年と比べると27%以上の成長だ。
ブルームバーグは、ジーンズ大手の老舗リーバイスが、頭打ちのジーンズ需要と、女性がジーンズよりヨガパンツを選ぶ傾向に苦しんでいると伝えている。同記事によると、アスレチックパンツに限れば2010年から2014年の間に売上は62%伸びた。調査企業のNPDグループによると、2014年時点でアスレチックパンツとジーンズの販売数は並び、女性向けジーンズ市場は8%縮小したという。
6. 業界のリーダーは、ルルレモン
市場を創ったとも言えるルルレモンは、支配的な地位にあるようだ。ルルレモンはカナダ・バンクーバーに本拠を持つ、創業1998年のヨガブランド。時価総額90億ドル(1兆円)。ヨガにふさわしい素材のウェアを開発してきた結果、ランニングなどのフィットネス全般に利用されるようになった。同社は2006年から売上を急速に伸ばし、2014年の売上は18億ドル(約2100億円)に達している。
しかし、後続勢も手強い。アンダーアーマーは「コールドギア」「ヒートギア」の高機能ウェアで人気。同社は世界最大規模のフィットネスアプリを運営し、アパレルを販売するだけではなく、日常生活のなかにまで浸透しようとしている。ナイキ、アディダス、リーボックなどのスポーツ用品大手のほか、下着メーカーのビクトリアシークレットも参入。百花繚乱状態だ。
懐疑的な専門家もいる。マーケット調査企業フォレスター・リサーチのアナリスト、スチャリタ・ムルプル氏は「現在すでに大勢のプレイヤーたちが参入しているため、このアスレジャーの分野は飽和状態になっているかもしれない」と語った。
Tanya Dua(小嶋太一郎、吉田拓史:参考記事)
photo by Thinkstock / Getty Images