[ DIGIDAY+ 限定記事 ]イギリスの酒類メーカーであるディアジオ(Diageo)が、誰から広告を購入しているかをより厳格にチェックする計画を各メディアオーナーに対して伝えてから2年、このスタンスによって広告主たちは、広告を買うパブリッシャーの数を絞るようになった。
[ DIGIDAY+ 限定記事 ]イギリスの酒類メーカーであるディアジオ(Diageo)が、誰から広告を購入しているかをより厳格にチェックする計画を各メディアオーナーに対して伝えてから、2年が経った。このスタンスによって広告主たちは、広告を買うパブリッシャーの数を絞るようになった。
ディアジオがロングテールのパブリッシャーパートナーを減らしたことには、よりコントロールしやすい、安全かつ閉鎖的な環境、いわゆる「信頼できるマーケットプレイス」に自社広告を置く意図があった。
このマーケットプレイスは、本質的にパブリッシャーの保護を明文化していて、パブリッシャーやプラットフォームが事前に合意された水準のパフォーマンスを出さない場合、ディアジオは公然と話し合いを要求できたと、ディアジオでグローバルメディアディレクターを務めるイザベル・マッセイ氏はいう。キャンペーン報告はそうした話し合いの範疇に含まれてきた。
Advertisement
パブリッシャーと直接対話
ディアジオがマーケットプレイスで実際に行っていることは、広告を購入するパブリッシャーのロングテールを評価することで、関連性があり、効果的なサイトを中心としたホワイトリスト作成に向けての第一歩を踏み出すことだ。「一緒に仕事をするパブリッシャーは減っているが、以前よりも多くのパブリッシャーとオープンな対話ができるようになってきた」と、マッセイ氏は話す。
ディアジオは、いくつかの市場で「メディアデー」を開催している。メディアデーはパブリッシャーの営業幹部らをオフィスに招き、10の基準を満たす彼らの能力について話し合う企画だ。10の基準のなかには、ディアジオの広告の70%はスクリーン上に表示されていなければならない、広告を表示していいのは18歳以上のユーザーのみ、ビューアビリティ(可視性)は、できればモート(MOAT)タグを使って計測される必要がある、価格モデルの透明性を確保しなければならない、などが含まれる。
マッセイ氏は、広告購入をやめたパブリッシャーの数を明らかにはしなかったが、彼らが排除されたあとも、ディアジオの広告のパフォーマンスに影響はでなかったと付け加えた。
広告品質は大幅改善
同社が購入した詐欺広告の数は、業界のベンチマークを「はるかに下回り」、結果として、全体のビューアビリティスコアは時間が経つにつれて改善してきたと、マッセイ氏は話す。その意味でいうと、業界団体であるトラストワーシー・アカウンタビリティ・グループ(Trustworthy Accountability Group)によると、詐欺率は欧州全体で0.53%程度に留まっている一方、インテグラル・アド・サイエンス(Integral Ad Science)によると、デスクトップ広告のビューアビリティは英国では63.4%に上昇しているという。
広告のパフォーマンスに影響がでなかったという事実により、ディアジオは、より少ない、選りすぐりのメディアオーナーに対して多くの予算を使うことにした。たとえばディアジオは、2018年上半期に6000万ポンド(約87億2500万円)を支出しているが、これは前年同期間の支出額より多くなっている。ディアジオの財務報告によると、同社はそれだけの現金を捻出するために、メディアや実験的プロモーションや店頭プロモーションなど、マーケティングのすべての領域で節約を行った。
「パブリッシャーに対する我々のコミットメントは、もっとも効果的で責任感のあるパートナーに投資し、より効果的で責任感のある仕事を続けていくことだ。我々は、その目的を達成するために適正な価格を支払う」と、マッセイ氏は語る。
エージェンシーの存在意義
ディアジオのエージェンシーはこうした基準を施行する責任を負い、ディアジオは、メディアエージェンシーであるカラ(Carat)のコアエグゼクティブを、ロンドンにあるディアジオ本社に常駐させている。
マッセイ氏はこう語る。「我々の信頼できるマーケットプレイスは、エージェンシーと共同所有されるべきだ。広告主とエージェンシーがそれぞれにこのスペースで作業できることには大きな意味があり、お互いに緊張感のあるチームを作ることが重要だ」。
プログラマティックに関する限り、まとめ上げたサイトリストの削除は臆病者にはできない。
アプローチに第3の柱
ディアジオがオープンマーケットで広告を購入する場合、サイトのホワイトリストを作成し、時間をかけて監視し削除していくのは簡単だが、パブリッシャーとのプライベートなプログラマティック取引は少々扱いにくい。広告主は、時間をかけてパブリッシャーと会い、契約IDのネットワークを設定して、プログラマティック広告を買うためのプライベートマーケットプレイスのネットワークを作らなければならない。
そうした種類の取引は、偽物だったり、見てもらえない可能性があり、ブランドイメージを傷つけたりするような購入を回避するための専門知識を持たないオープンマーケットプレイスでの広告購入を警戒しているディアジオのような広告主にとって、より一層魅力を増している。
「スケールが重要で、アプローチに第3の柱を作る必要があり、信頼できるマーケットプレイスの原理を十分吟味したパブリッシャーのリストをまとめられたマーケットでは、これによりいくつかの課題が生まれる」と、マッセイ氏はいう。「そこは複雑だが重要な領域で、我々が常に、一層の透明性に焦点を当て、アプローチを調整している部分でもある」。
広告主たちのトレンド
ディアジオのマーケットプレイスのような均衡と抑制は、大手ブランド広告にとって必要最低限のものになりつつある。P&G(プロクター・ アンド・ギャンブル)やユニリーバ(Unilever)、ボーダフォン(Vodafon)、ネスレ(Nestlé)は、効果を保証し、ブランドを守り、オープンな形でデータ共有を実現するパブリッシャーやプラットフォームへの投資にシフトしている広告主の一例だ。
「独自にメディアセラーをまとめている広告主の数は、この3年で増えている」と、WFA(The World Federation of Advertisers)のメディアおよびデジタル部門でグローバルリーダーを務めるマット・グリーン氏は話す。「詐欺が問題になったのが2015年、その翌年には広告ベリフィケーション企業が誕生し、続いて2017年にはブラックリスト方式からホワイトリスト方式へのシフトが起こり、広告主は、危険なドメインのロングテールからさらに距離を置くようになった」。
Seb Joseph(原文 / 訳:ガリレオ)