- 9月第2週の全米オープンテニスでのココ・ガウフ氏の初勝利をはじめ、女子スポーツの視聴数が急増。マーケティングおよび広告の分野に影響を及ぼしている。
- シューズブランドのウーフォスはオリンピック金メダリストのドーン・ステーリー氏との提携や全米体操選手権の協賛を実施。金融サービス企業アリーはディズニーと提携し、スポーツへの投資額の90%を女子スポーツに。
- エージェンシーは女子スポーツ専任チームを設置し始め、消費者が透明性や多様性を重視するなか、この動きは「正しい方向への第一歩」と評されている。
9月第2週、全米オープンテニスでココ・ガウフ氏が初勝利を収める模様を300万人以上が観戦した。これは、四大大会の女子決勝戦では米国のスポーツ専門チャンネルESPN史上最大の視聴者数であり、女子スポーツの人気および視聴数の急騰および急増を示す顕著な一例でもある。そして、視聴者の目が行くところには当然、広告主が付いてくる。
女子スポーツへの注目度が高まり続けるなか、ブランド勢はその観戦者らにリーチするべく、マーケティング費と広告費をなおいっそう喜んで投じている。この好機を存分に活用しようと、たとえば、ポートランドが拠点の広告エージェンシーであるレイン・ザ・グロース・エージェンシー(Rain the Growth Agency)はことし6月、女子スポーツ専任の社内チームを設立した。
8人からなる同チーム、ハイプハー(HypeHer)が提供するのは、戦略/調査、メディアバイイング/プランニング、メディアパートナーシップ、ソーシャルメディア/インフルエンサーマーケティング、クリエイティブ、そして分析/効果測定だ。
女子スポーツ観戦者数の急増がマーケティングに火を付ける
「多くのブランドと広告主は男子スポーツにフォーカスしているが、我々は女子スポーツを将来有望な巨大機会と捉えている」と、同社インテグレーテッドメディアインベストメント&プランニング部門EVPであるロビン・コーエン氏は話す。「入場者数は増え続けており、好機だと考えている」。
ガウフ氏の歴史的勝利は実際、女子スポーツへの関心急騰を示す一例に過ぎない。8月には、女子スポーツ大会における入場者数の新記録をネブラスカ大学女子バレーボールチームが樹立。同大学のアメリカンフットボールアリーナは、じつに9万2003人もの観客で膨れ上がった。また、米女子サッカー代表チームもこのほど、入場者数記録を塗り替えている。
「こうした女子スポーツ観戦者数の急増は、同分野におけるマーケティングおよび広告へのクライアントの関心に火を点けている」と、コーエン氏は指摘する。この動きはまだ始まったばかりであり、同エージェンシーも現在、「ハイプハーの諸サービスをクライアントに売り込んでいる段階だ」と言い添える。
パブリッシャーからブランドまで波に乗る
そうしたななか、シューズブランドのウーフォス(Oofos)など、一部のクライアントは少なくとも2022年から女子スポーツマーケティングキャンペーンに投資している。ウーフォスはオリンピックで金メダルを3度獲得し、現在はサウスカロライナ大学でバスケットボールチームのゲームコックスの監督を務めるドーン・ステーリー氏と提携するとともに、2022年の全米体操競技選手権に協賛した。
「彼らはさまざまな女子スポーツに参加および投資し、自身のブランドとさまざまなスポーツとの相性や可能性を探り、今後資金を注ぎ込む先を見定めている」と、コーエン氏は話す。「スポーツを種目ごとにふるいにかけ、この先、我々が成功を収められるのはどこなのか、見極めている」。なお、ウーフォスの女子スポーツへの具体的な投資額は開示されなかった。
パブリッシャーからブランドまで、業界全体がいまや、女子スポーツが見せている成長の波に[続きを読む]
- 9月第2週の全米オープンテニスでのココ・ガウフ氏の初勝利をはじめ、女子スポーツの視聴数が急増。マーケティングおよび広告の分野に影響を及ぼしている。
- シューズブランドのウーフォスはオリンピック金メダリストのドーン・ステーリー氏との提携や全米体操選手権の協賛を実施。金融サービス企業アリーはディズニーと提携し、スポーツへの投資額の90%を女子スポーツに。
- エージェンシーは女子スポーツ専任チームを設置し始め、消費者が透明性や多様性を重視するなか、この動きは「正しい方向への第一歩」と評されている。
9月第2週、全米オープンテニスでココ・ガウフ氏が初勝利を収める模様を300万人以上が観戦した。これは、四大大会の女子決勝戦では米国のスポーツ専門チャンネルESPN史上最大の視聴者数であり、女子スポーツの人気および視聴数の急騰および急増を示す顕著な一例でもある。そして、視聴者の目が行くところには当然、広告主が付いてくる。
女子スポーツへの注目度が高まり続けるなか、ブランド勢はその観戦者らにリーチするべく、マーケティング費と広告費をなおいっそう喜んで投じている。この好機を存分に活用しようと、たとえば、ポートランドが拠点の広告エージェンシーであるレイン・ザ・グロース・エージェンシー(Rain the Growth Agency)はことし6月、女子スポーツ専任の社内チームを設立した。
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8人からなる同チーム、ハイプハー(HypeHer)が提供するのは、戦略/調査、メディアバイイング/プランニング、メディアパートナーシップ、ソーシャルメディア/インフルエンサーマーケティング、クリエイティブ、そして分析/効果測定だ。
女子スポーツ観戦者数の急増がマーケティングに火を付ける
「多くのブランドと広告主は男子スポーツにフォーカスしているが、我々は女子スポーツを将来有望な巨大機会と捉えている」と、同社インテグレーテッドメディアインベストメント&プランニング部門EVPであるロビン・コーエン氏は話す。「入場者数は増え続けており、好機だと考えている」。
ガウフ氏の歴史的勝利は実際、女子スポーツへの関心急騰を示す一例に過ぎない。8月には、女子スポーツ大会における入場者数の新記録をネブラスカ大学女子バレーボールチームが樹立。同大学のアメリカンフットボールアリーナは、じつに9万2003人もの観客で膨れ上がった。また、米女子サッカー代表チームもこのほど、入場者数記録を塗り替えている。
「こうした女子スポーツ観戦者数の急増は、同分野におけるマーケティングおよび広告へのクライアントの関心に火を点けている」と、コーエン氏は指摘する。この動きはまだ始まったばかりであり、同エージェンシーも現在、「ハイプハーの諸サービスをクライアントに売り込んでいる段階だ」と言い添える。
パブリッシャーからブランドまで波に乗る
そうしたななか、シューズブランドのウーフォス(Oofos)など、一部のクライアントは少なくとも2022年から女子スポーツマーケティングキャンペーンに投資している。ウーフォスはオリンピックで金メダルを3度獲得し、現在はサウスカロライナ大学でバスケットボールチームのゲームコックスの監督を務めるドーン・ステーリー氏と提携するとともに、2022年の全米体操競技選手権に協賛した。
「彼らはさまざまな女子スポーツに参加および投資し、自身のブランドとさまざまなスポーツとの相性や可能性を探り、今後資金を注ぎ込む先を見定めている」と、コーエン氏は話す。「スポーツを種目ごとにふるいにかけ、この先、我々が成功を収められるのはどこなのか、見極めている」。なお、ウーフォスの女子スポーツへの具体的な投資額は開示されなかった。
パブリッシャーからブランドまで、業界全体がいまや、女子スポーツが見せている成長の波にいち早く乗ろうとしているようだ。ESPNをはじめとするパブリッシャー勢は今年2023年、女子スポーツ放映権への投資額を増やしている。事実、一部のスポーツパブリッシャーの報告によれば、サッカー女子ワールドカップの試合中継は男子大会よりも広告収入が多かった。
また、1月には、金融サービス企業アリー(Ally)がディズニー(Disney)と提携し、投資額の実に90%を女子スポーツに割り当てると発表した。ビールのモデロ(Modelo)やスナック菓子のクラッカー・ジャック(Cracker Jack)といったブランド勢も、消費者の注目度の高まりを受けて、女子スポーツ関連のマーケティング努力にさらに力を入れている。
「我々はメディアを見る際、全体として、消費者が何に注目しているのかを見ている。いまは、女子スポーツ全般に対する関心および興奮度がかなり高まっている」と、モデロのブランドマーケティング部門シニアディレクターであるローガン・ジェンセン氏は話す。同氏によれば、同社は以前から女子サッカーに投資およびフォーカスしており、2024年には新フォーマットでの初開催となる女子サッカー国際大会、CONCACAF女子ゴールドカップにも協賛する予定だという。なお、同スポンサー契約料などの詳細は開示されなかった。
女子スポーツへの投資は正しい方向か
クラッカー・ジャックの親会社であるフリトレー(Frito-Lay)は、NFL、NBA、WNBA、FIFA、女子ワールドカップとの長期提携を通じて、スポーツになおいっそう関わっていくと、同社ブランドマーケティング部門トップであるレスリー・ヴェスパー氏は述べた。たとえば、クラッカー・ジャックの場合、スナックブランドの新製品クラッカー・ジルをこのほど発売し、30秒広告を女子ワールドカップ中に放映した。
一方、レイン・ザ・グロース・エージェンシーといったエージェンシーらは今年、女子スポーツにフォーカスしたサービスを立ち上げるか、あるいは女子アスリートとブランドの提携を通じてそのフォーカスを前面に押し出す、といった動きを見せている。
DE&I(多様性、平等性、包摂性)が依然、業界中で取り沙汰されるなか、マーケターと広告主が女子スポーツに増資する動きは、「正しい方向への第一歩だ」と、米国広告業協会(4A’s)でタレント、エクイティ、ラーニングソリューションズ部門EVPを務めるタリシャ・ウィリアムズ氏は指摘する。とくに消費者がブランドパーパス、透明性、多様性を強く求めているいまは、大きな一歩だと言う。
「派手なだけの扇情的な広告の時代は、過ぎ去って久しい」とウィリアムズ氏が言う。というのもそれは、社会問題に対する真正な関心を欠く、一瞬で消える打上花火的なマーケティングのことだ。「人々はいま、マーケティングと広告にこれまでとは違う何かを求めている」。
レイン・ザ・グロース・エージェンシーは女子スポーツの未来について、メディア的視点だけでなく、マーケティング投資全体の視点から、すでに考え始めていると、コーエン氏は話す。「関心はそこにあるし、我々はクライアントがしっかりと考える一助になれるよう努める。いま起きていることだけに囚われるのではなく、未来にどう備えるのか、という視点で考える」。
[原文:Women’s sports marketing boom ‘huge up and coming opportunity,’ spurs new agency services]
Kimeko McCoy(翻訳:SI Japan、編集:島田涼平)