この記事は、DIGIDAY[日本版]のバーティカルサイト、ビューティ、ファッション業界の未来を探るメディア「Glossy+」の記事です。 創業3年のスキンケアブランド、ワイルドキャット(Wldkat)は、美容のスタートア […]
この記事は、DIGIDAY[日本版]のバーティカルサイト、ビューティ、ファッション業界の未来を探るメディア「Glossy+」の記事です。
創業3年のスキンケアブランド、ワイルドキャット(Wldkat)は、美容のスタートアップが直面している高まる圧力に屈した最新ブランドである。
創業者のエイミー・ズズネギ氏は、5月24日にインスタグラムとTikTokに動画を投稿、CBDカテゴリーの衰退や美容のための資金調達機会の減少といった挫折を経てブランドを閉鎖すると発表した。5月中旬のエイサービューティ(Athr Beauty)閉鎖に続き、ワイルドキャットも閉鎖を発表するインディビューティブランドの波に加わった。
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「正直なところ、1年ほど前にこのブランドを閉じるべきだったかもしれない。『これはもううまくいかない』と思った。もう限界だった」とズズネギ氏はGlossyに語った。
CBDブランドが直面している課題
ネイキッドパレット(Naked Palette)などのカルト商品を手がけたことで知られるアーバンディケイ(Urban Decay)の元エグゼクティブであるズズネギ氏は、当初CBDスキンケアブランドとしてワイルドキャットをローンチし、その後キノコやコンブチャ、サフランなど話題の成分に方向転換した。同ブランドはターゲット(Target)、アルタ・ビューティ(Ulta Beauty)、エレウォン(Erewhon)、クレド・ビューティ(Credo Beauty)で販売され、バイオ樹脂サトウキビプラスチックとポストコンシューマーリサイクルプラスチックを使用したパッケージで、社会的意識の高い若い顧客層をターゲットにしていた。
ワイルドキャットは、ズズネギ氏の大麻に対する幅広いビジョンの一環として、2020年4月20日にローンチした。
「女性の消費に焦点を当てたカリフォルニア州の大麻ブランドというのが、ワイルドキャットの元々のコンセプトだった」と同氏は言う。複数の役員メンバーは美容ではなく大麻の世界の出身だったため、「最初から美容やスキンケアの会社という設定ではなかった」。2019年に美容レーベルを開発していたときは、大麻ブランドとしてのワイルドキャットとは別の存在として考えていたが、パンデミックが発生し、取締役会とズズネギ氏は美容事業だけに注力すると決定した。
だが、すぐにワイルドキャットは、広告の制限、主要な決済プラットフォームや主流の小売業者からの排除、高額な製造費用といった、近年すべてのCBDブランドが直面している課題にぶつかる。「価格変動が異様だった」とズズネギ氏は言う。
CBDの課題にうまく対処することは「完全な悪夢」だったと、ズズネギ氏は述べている。サンプルがラボから戻ってきたときに大麻成分THCの不可解な陽性結果が出て、DEAに通知されるという脅威も経験した。そのほかにも、製造業者がCBD製品から手を引いたため、すぐに新しい業者を見つけなければならなかったこともあった。
こうした経緯から、ワイルドキャットはCBDを製品から外して方向転換を図り、代わりにキノコなど他の原料に注力することにした。CBDなどの古い在庫は、TJマックス(TJ Maxx)を通じて売却された。リブランディング後、ワイルドキャットはアルタ・ビューティとターゲットとの小売パートナーシップを確保している。
セレブリティブランドへの転換の失敗
CBD美容業界全体の課題は今年に入ってから頭打ちとなっている。1月には大麻企業のクロノスグループ(Cronos Group)がクリステン・ベル氏のCBDスキンケアブランド、ハッピーダンス(Happy Dance)を終了し、CBD製品のロードジョーンズ(Lord Jones)の美容カテゴリーを縮小すると発表した。
ワイルドキャットの最初の資金調達は、VCやエンジェルマネーなど、大麻に特化した投資家から行われている。だが、リブランディングと全国展開する大手小売との規模拡大の決断にはコストがかかった。新たなパッケージに加え、新たな写真撮影、小売店への在庫発送、新しい広告、新規マーケティングプランの費用を負担しなければならなかった。CBDがないため、大麻の投資家はさらなる資金調達の対象からは外れていた。
ズズネギ氏は、セレブリティのスキンケアブームに乗り遅れないよう、有名人のパートナーを強く希望する潜在的な投資家たちとの交渉を開始した。
投資家候補から「セレブリティとの取引をやれという多大なプレッシャーがあった」と同氏は話す。「それがすばやく成功するためのいちばん簡単な道だと誰もが思っているし、実際にそうかもしれない。でも、これまでローンチされたあらゆるセレブリティブランドを考えると、本当にうまくいっているのは5つで、成功していないのはもっとたくさんある」。
「本当に興味を持ってくれるセレブリティを見つけるのは難しいし、そうしたセレブリティが私たちのようなブランドのために声を挙げてくれるほど有名なら、1日に10件も似たような依頼を受けている」。
ワイルドキャットはセレブリティのパートナーを確保できず、投資契約は結局破綻し、新しい投資家候補は今年の2月に撤退した。同月、ズズネギ氏の夫ががんと診断された。
美容ブランドが成功するのは難しい
インディビューティブランドは、事業運営にかかるコストの上昇、競合他社の飽和状態、資金調達の縮小など、昨今の厳しい市場に直面している。
ズズネギ氏は、美容業界の高いマージンは成功をやすやすと保証するものではないと起業家に警告している。
「ファッションの場合、エグジットマルチプルは1.5倍から2.5倍だが、美容では10倍から12倍だ」と同氏は言う。「多くの人がこの分野に参入してくる理由は非常にお金になると思っているからで、それはあり得ることではあるが、顧客にリーチし、雑音をはねのけるのは難しい」。
ズズネギ氏は次のステップとして、現在は創業者ではなく、ひとりのチームメンバーとして新たな美容スタートアップに取り組んでいる。
「自分が学んできたことを受け入れ、いまはブランドを所有するほかの誰かにそれを与えることができる」と同氏は語った。
[原文:Wldkat joins growing list of indie beauty closures]
LIZ FLORA(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)