RETAIL REVOLUTION

ウォルマートの第3四半期は、コロナ禍による成長が鈍化:長期的な事業成長を見込む

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コロナ禍のなか、大きな成長を遂げたウォルマート(Walmart)。同社は、この伸びを長期的に維持させるための取り組みを続けている。

11月17日に発表された業績発表によると、ウォルマートの第3四半期の成長は前四半期より鈍化している。小売りチェーンとして米国で最大手の同社だが、鈍化の理由として、パンデミック初期と比べてパニック買いが減っていること、米政府によるCARES法(コロナ支援法)による経済対策の効果が薄れはじめていることなどがある。

しかし、鈍化したといっても同社は依然として堅調な成長を維持しており、第3四半期の決算からはポジティブな面が多く読み取れる。オンラインの売上高に限っていえば、第2四半期が前年同期比で97%増だったのに対し、第3四半期は同79%増と依然高い数値を維持。総売上高は、第2四半期が1377億ドル(14兆3000億円)だったのに対し、第3四半期は1347億ドル(約14兆円)と微減にとどまっている。また、既存店売上高は第2四半期に9.7%増、第3四半期は6.4%増と減少はしているものの、増加維持に成功している。

消費者が買い物に関してコロナ以前の行動パターンへと戻りつつあるなか、ウォルマートは特に生活雑貨や衣類等の高価格帯商品について、オンライン購入をいかに維持していくかを課題として据えている。その解決策として、同社は9月上旬に新たな会員制プログラムのWalmart+をローンチ。買い物の回数を減らす消費者が多いなか、買い物1回あたりの金額を増やすための取り組みのひとつである。

調査会社のグローバルデータ・リテール(GlobalData Retail)で、マネージングディレクターを務めるニール・ソーンダース氏 は、メディアに向けて「小売業には以前ほどの勢いはない。ブーム終焉の兆しも見て取れる」と分析している。「第4四半期以降に新たな景気刺激策が打ち出されない限り、小売各社はこの状況を乗り切るための取り組みに迫られるだろう。ただし、ウォルマートについてはこれを打破できるだけの力とビジネスモデルがある」。

ウォルマートの経営陣は、業績発表においてeコマースの伸長や、クリスマスシーズンにどのような準備を進めているのかを強調していた。今回は、その業績発表のハイライトを紹介する。

サードパーティマーケットプレイスの売上増とeコマース事業の利益率改善

ウォルマートUS部門のCEO、ジョン・ファーナー氏は業績発表において、eコマース分野で利益率の高い商品(特に生活雑貨)の売上が伸びたことにより、第3四半期の利益が向上したと述べている。また、生活雑貨以外にも、家電や玩具、衣料品などは、eコマースに限らず全体の売上高において5%から10%の伸びを記録。eコマースでは今四半期にサードパーティのマーケットプレイスの売上が増え、増収に繋がっている(サードパーティマーケットプレイスの具体的な売上高については明かされていない)と付け足した。

eコマース解析企業のマーケットプレイスパルス(Marketplace Pulse) は、7月の時点でウォルマートのマーケットプレイスにおける販売業者は5万を超えると算出している。ただ、世界中に数百万のサードパーティセラーを抱えるAmazonと比べれば、この数字は微々たるものだ。

ソーンダース氏は、米DIGIDAYの姉妹サイト、モダンリテールの取材に対し「ウォルマートのeコマース収益の伸びや利益率の改善は、眼を見張るものがある。同社は主力商品として利益率の低い食料品も抱えているため、達成が決して容易ではないからだ」と、その取り組みに賛辞を贈る。また同氏は次のようにも指摘する。「一方、衣料品の利益率は高く、しかもオンラインに強い。ただし衣料品市場の現状を考えれば、ウォルマートにとって短期間で成長路線に転換するのは難しく、改善は長期的な取り組みにならざるを得ないだろう」。

食料品分野の売上は鈍化したが、依然他社を凌ぐ規模

ウォルマートは第3四半期に食料品の売上高が5〜10%増加したと報告している。一方、競合する大手食料品チェーンのアルバートサンズ(Albertsons)とクローガー(Kroger)の第2四半期における売上高は、それぞれ13.8%、14.6%増となっている。

ウォルマートの業績発表のなかでファーナー氏は、食料品事業の伸びが競合他社と比べ、鈍化している点について説明を求められた。その際同氏は、パンデミックによる一部地域での営業時間短縮や、一部商品の品切れといった一時的な要素が起因していることを理由として挙げている。さらに、ウォルマートの食料品配達サービスには、すでに大きな需要が見込まれていることも補足した。

ムーディーズで、バイスプレジデント兼シニアクレジットオフィサーを務めるチャーリー・オシア氏は「米国の食料品業界において、依然ウォルマートは2番手のクローガーの2倍の売上規模を維持している」と推算している。同氏はウォルマートの成長の鈍化についても、食料品分野の鈍化を懸念材料とは見なしていない。さらに「こうした状況下では、小規模な企業の方が高い割合で成長するのが自然だ。逆にそうなっていない場合は、何かがおかしい」と指摘する。

春先のような規模のパニック買いは、もう起こらない

業績発表で、パニック買い再来の可能性や、商品在庫に対する考え方を尋ねられた、ウォルマートの社長兼CEOのダグ・マクミリオン氏は、「コロナ禍の度合いは地域によって異なるため、州ごとの状況に応じて対応を変えている」との見解を示した。現在、新型コロナウイルスの感染者数は米国の多くの州で増加傾向にある。かつ感染者の増加ペースも、春先以上に速い。

また、生鮮食品以外では、いまだに春先と同じように同一の商品を買い貯めするケースが多いと同氏は指摘し、次のように述べている。「当社は取扱商品のなかでも、特に売れ行き好調が予想される商品について、分析と在庫填補策に力を入れている。今回は上半期以上に良い対応ができると考えている」。

また、ウォルマートはクリスマスシーズンが近づくなか、春先のような生活必需品だけでなく、装飾品やプレゼントの購買需要の高まりにも余念なく備えているという。

またマクミロン氏は、「休暇に関して、この一年は多くの人にとって苦労の絶えない一年だった」と語り、さらに次のように付け加えた。「私も、家族とささやかながら感謝祭やクリスマス、新年を祝う予定だ。この惨禍のなかでも、例年と同じように家族と過ごせることを心から楽しみにしている。私のように、感謝祭やクリスマス、新年を祝おうとを考えている人々は、米国に限らず世界中にいると推測している」。

[原文:With sales growth slowing, Walmart is looking for more longterm business boosts

ANNA HENSEL(翻訳:SI Japan、編集:村上莞)