ラグジュアリーグループのリシュモン（Richemont）がeコマース企業、ユークス・ネッタポルテ（Yoox Net-a-Porter、以下YNAP）の買収に50億ドル（約6830億円）以上を費やして4年、リシュモンは赤字でYNAPを売却することになった。

リシュモン、YNAPをファーフェッチに売却

リシュモンは、8月24日の朝、YNAPの支配権をファーフェッチ（Farfetch）に約10億ドル（約1365億円）の評価額で売却すると発表した。これは、リシュモンがYNAPを買収したときと比べるとわずかな金額である。この売却と引き換えにリシュモンは4億4000万ドル（約600億円）相当のファーフェッチ株、そして今後2年間でさらに2億5000万ドル（約341億円）を受け取ることになる。

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競合相手のラグジュアリーeテーラー、ファーフェッチの成長と比較して、YNAPは大きな損失を出しており、パンデミックのあいだ、リシュモンにとって重荷になっていた。この売却は、特にリシュモンが27億ドル（約3684億円）の評価損を主張しているため、リシュモンがYNAPの費用を負担することなく財務を改善するのに役立つと思われる。

ラグジュアリーeコマース業界、ファーフェッチの独断場になるか

一方、ファーフェッチはネッタポルテを獲得できるのである。ネッタポルテは、オンラインラグジュアリーeコマース分野におけるファーフェッチの数少ない真の競合他社の1社だ。また、YNAPはメンズマーケットのミスターポーター（Mr Porter）やオフプライスプラットフォームのアウトネット（The Outnet）などの関連会社も所有しており、3月までの会計年度には2億1000万ドル（約290億円）の損失が報告されている。さらに、ファーフェッチのeコマース技術はこの取引の一環としてリシュモン下の複数のブランドのオンラインストアを強化して、ラグジュアリーeコマースにおけるファーフェッチの優位性をさらに強固にする。水面下ですでにファーフェッチのeコマース技術を使用しているブランドには、シャネル（Chanel）、ブルネロクチネリ（Brunello Cucinelli）、トムブラウン（Thom Browne）などがある。

ラグジュアリー業界全体の中立的なプラットフォームを

リシュモンの会長であるヨハン・ルパート氏は、この売却はYNAPをラグジュアリー業界全体のプラットフォームとして機能させるという総合的な計画の一環であると考えている。

ルパート氏はプレスリリースで次のように述べている。「今日の発表は私が2015年に最初に表明した夢の実現に向けた重要な一歩である。それは、ラグジュアリーブランドと高い鑑識眼を持った顧客の双方にとって非常に魅力的な、ラグジュアリー業界向けの独立した中立的なオンラインプラットフォームを築くという構想だった。デジタル化が進む中で業界の運命をコントロールして、ラグジュアリー業界の独自性を守りたいのであれば、協働が必要なことは当時から理解していた。このタスクは大きすぎて1社だけで担うことはできなかったからだ」。

しかし、リシュモンがYNAPを買収して以来、ラグジュアリーオンライン小売業者の支配的な地位にあるのはファーフェッチである。同社は昨年、23億ドル（約3138億円）の収益を上げ、Amazonのラグジュアリーストア（Luxury Stores）やTモール（Tmall）のラグジュアリーパビリオン（Luxury Pavilion）ら競合相手を上回った。ラグジュアリーパビリオンはファーフェッチと提携中である。ファーフェッチCEOのジョゼ・ネヴェス氏によると、リシュモンの全ブランドが今後そうなるように、バックエンドのeコマーステクノロジーにファーフェッチを利用するブランドを増やすことが次のステップになるということだ。

ハードラグジュアリーに注力するファーフェッチ

ネヴェス氏は声明で次のように述べている。「ファーフェッチマーケットプレイス上でのリシュモンメゾンのeコンセッションのローンチは、（ジュエリーや時計などの）ハードラグジュアリーに対する当社の戦略の変革である。ハードラグジュアリーは世界のラグジュアリー業界の20％以上を占めているが、ファーフェッチでは売上のわずか3％だ」。ファーフェッチの売上の大部分はプレタポルテ、シューズ、革製品などのカテゴリーである。「ハードラグジュアリーは、現時点までで供給と比較して顧客の需要がはるかに強い分野だ」。

［原文：With Richemont deal, Farfetch further establishes luxury e-commerce dominance］

DANNY PARISI（翻訳：ぬえよしこ、編集：山岸祐加子）