非接触型テクノロジー 、店舗営業再開で需要が増加中

全米のリテーラーが各地で店舗営業を再開しているが、多くは難題に直面している。顧客および商品との物理的接触を最小限に抑えるなか、どうしたら質の高いエクスペリエンスを提供できるのか? それが問題だ。

非接触ソリューションはたしかに、新型コロナ禍の発生前から複数市場に出ていた。たとえば、非接触決済やカーブサイドピックアップは何年も前からリテール界に導入されている。だがいま、新たな代替手段の早急な導入が業界の喫緊の課題となっている。

ショーフィールズの新アプリ

たとえば、テナントを頻繁に入れ替える新世代のデパート、ショーフィールズ(Showfields)は4カ月をかけて新アプリ、マジック・ワンド(Magic Wand)を自社開発し、7月第2週に導入した。このアプリを使えば、顧客はNYソーホーの同店舗において必要とされるほぼすべての行為を物理的接触なしで済ませられる。店内のディスプレイにスマートフォンをかざすだけで、各ブランドの詳しい情報が得られ、アイテムをスキャンすれば、詳細な商品情報が手に入る。店舗内を歩き回らずに全アイテムをブラウズでき、欲しい物はすべてバーチャルな買い物かごに入れられ、スマホ上で支払いもできる。購入した商品は梱包され、店内にいくつかあるピックアップコーナーに置かれる。必要ならば店員も呼べるが、すべてデジタルで行なえる。

来店客に接触を避ける選択肢をできるだけ多く提供したい、との思いから同アプリを開発したと、創業者タル・ズヴィ・ナサニエル氏は語る。家にいたいと思えば、買物はオンラインで済ませられるなか、店に足を運んでくれる人には物理的・社会的接触に関して安心感を与えたいと考えたという。

「新型コロナ禍前の世界にあった驚きや感動を、いかにしたらコロナ後の世界でも手に入れられるか? そこがポイントだ」と、ナサニエル氏はいう。「マジック・ワンド(魔法の杖、の意)は、伸縮自在な杖のようなものと捉えている。顧客はそれぞれが安心できるゾーンを自分で決めながら、店内を歩き、探索することができる。ある人はたとえば、ディスプレイされているシャツに自身が触れるのは構わないが、店員には近寄られたくない、そばで説明されたくはないと思う。そういう場合は、すべて自分で[このアプリを使い、情報を手に入れることが]できる」。

ナサニエル氏によれば、大半のリテーラーと同じく、ショーフィールドでもフットトラフィックの減少が顕著だという。ただ、顧客数は通常時の半分以下ではあるものの、コンバージョン率はコロナ禍以前の2倍に迫るほど高く、その理由は各々が明確な目的を持って来店している点にあると、氏は見ている。つまり、消費者心理に占める目的の割合が非常に大きくなっている、ということだ。

非接触型の採寸テクノロジー

こうした新たな非接触ソリューションを導入したリテーラーは、ショーフィールドだけではない。ブルックフィールド・プロパティーズ(Brookfield Properties)は6月末、デジタルサイジングツールを提供する企業、フィット:マッチ(Fit:Match)と契約を結び、シカゴ、ダラス、ロサンゼルスの3つのショッピングセンターにフィット:マッチ・スタジオを設置した。顧客が身体をスキャンしてサイズを測ると、提携ブランドの商品のうち、サイズに合うアイテムがデジタル表示される。購入品は各ブランドの店舗の外で受け取れる。

ブルックフィールドは2020年初頭、新型コロナ禍発生以前にこのパイロット版を試し、その結果を受けて今回の提携を決めた。同社によれば、現在までに4000人がフィット:マッチを利用しており、コンバージョン率は80%に上るという。

同じく非接触型の採寸技術を提供する企業、マイサイズID(MySizeID)は新型コロナ禍発生以来、利用数が800%増加したと、同社CEOロネン・ルゾン氏は語る。オンラインショッピング時の返品数の最小化と店舗における複数商品の試着を狙い、USポロアッスン(U.S. Polo Assn)をはじめ、多くのブランドが同社の技術を導入している。

フィット:マッチと同様、マイサイズIDも顧客の身体のデジタルプロファイルを作成し、それぞれのサイズに合う商品のみを表示する。これは複数のブランドを取り扱うリテーラーにはとりわけ有用だろう。あるブランドのアイテムはSサイズが合うのに、別のブランドではMサイズが合う、といったこともありうるからだ。

「進出できたのはコロナ禍のおかげ」

一方、米DIGIDAYの兄弟サイトであるモダンリテール(Modern Retail)によれば、QRコードに特化した企業シーク(Seek)においても、AR(拡張現実)およびQRコードソリューションに対するリテーラーからの需要が、この3月以来、600%の伸びを記録している。同社の技術を利用すれば、顧客は店舗に足を運ぶ前に、3Dレンダリングされた商品画像を見ることが可能だ。リテーラーのなかでは、最近、スペリー(Sperry)が契約したという。

「大いに進出できたのは新型コロナ禍のおかげだ」と、マイサイズIDのルゾン氏。「今回のことでリテーラーはようやく、店内にデジタルオプションを用意しておくことの重要性を理解してくれた。試着室が使えず、店内で何も試着できない状況下で、どうしたら店舗に集客できるのか? 実店舗が直面しているその大問題を解決できるデジタルツールはいくつもある」。

[原文:With retail reopening, demand for contactless technology is on the rise

DANNY PARISI(翻訳:SI Japan、編集:長田真)