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米・大都市圏で進む、食料品デリバリーサービスの再編:アホールド・デレーズがフレッシュダイレクトを買収

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オランダの食料品チェーンであるアホールド・デレーズ(Ahold Delhaize)は、フードライオン(Food Lion)、ストップ・アンド・ショップ(Stop and Shop)、ジャイアントフード(Giant Food)といったさまざまなブランドの店舗1900店以上を米国で展開している。だが、現在の食料品配送ビジネスは、ニューヨークやワシントンDC、フィラデルフィアといった大都市圏が鍵を握る。

11月第4週、アホールド・デレーズは1999年創業のオンライン専門食料品配送ブランドのフレッシュダイレクト(FreshDirect)の株式の過半数を取得した。フレッシュダイレクトはニューヨーク発祥の企業で、今も同州を最大の市場としている。また、同社は北東部および中部大西洋沿岸地域の合計7州でも事業を展開中だ。

アホールド・デレーズがオンライン食料品配送ブランドを買収したのはフレッシュダイレクトが初ではなく、中西部で1989年に創業した食品配送スタートアップのピーポッド(Peapod)も買収している。だが、アホールド・デレーズは2月にピーポッドの中西部地域における事業から撤退し、東海岸へと重点を移した。これは同社の食品配送分野における戦略の転換点となった。同社はフレッシュダイレクトを買収するとともに、ユーザーが多い東海岸の人口密集地域と、アホールド・デレーズの既存店舗が集中している都市部を基軸に据えるようになったことが見て取れる。また、同市場でフレッシュダイレクトおよびピーポッドを活用して、なるべく多くの顧客を獲得しようという戦略に出ている。一方、ウォルマートやクローガー(Kroger)といった競合他社は、既存店舗のある南部や中西部地域に力を入れている。

eマーケター(eMarketer)のECアナリスト、アンドリュー・リップスマン氏は「食料品配送事業で利益を上げるのは容易ではない」と語る。「実際に採算を合わせるには、人口密集地域での展開が不可欠だ」。

買収される側の思惑

今回の買収を発表したプレスリリースで、アホールド・デレーズは、フレッシュダイレクトは買収手続きを終えたあと、「ブランド名は維持し、7名の役員の管理下に入りつつも、ニューヨーク市のオフィスで独立して事業を継続する」としている。フレッシュダイレクトのCEO、デイビッド・マキナーニー氏はウォールストリート・ジャーナル(Wall Street Journal)に対し、具体的な収益は明かせないが、同社が黒字であると述べている。

マキナーニー氏は、アホールド・デレーズへの売却を決定した理由として「同社が世界最大規模の食品小売グループであること」を挙げている。「フレッシュダイレクトは食料品業界に精通し、パートナー企業などリソースにも事欠かない。時に熱心なサポートを受けることもあるうえ、地元ブランドをどう維持すべきかについても熟知している。今回の統合により、その高いポテンシャルを最大限に引き出せるようになるだろう」。

今回の買収は、コロナ禍により米国で食料品配送が一気に普及したなかで行われた。コンサルティング企業のブリック・ミーツ・クリック(Brick Meets Click)によれば、米国では8月におよそ3750万世帯がオンラインの食料品宅配サービスを利用しており、これは前年比で133%増である。そして、食料品ブランドは需要に応えようと激しい競争を繰り広げている。アホールド・デレーズは、8月に行われた第2四半期の業績発表で、2020年中に米国内における食料品のオンライン提供量を70%増やす方針で、下半期にはショップインショップの旗印のもと、配送フルフィルメントセンター4施設を開設する予定としている。

採算面の取り組み

食料品配送の需要は確かに増えているが、消費者が店舗で商品を購入するより、商品を配送する方がコスト高である事実は変わらない。業績発表で、アホールド・デレーズはコストのかさむ配送サービスの負担を補填するため、クリック&コレクト(ネットで注文し、自宅以外の場所[店舗やドライブスルーなど]で受け取る仕組み)型のサービスにも力を入れていくとしている。

同社のCEOのフランス・ミュラー氏は、「クリック&コレクトは、配送サービスよりもはるかに成長が速く、収益性に貢献している」と述べた。ミュラー氏は、同社が今年末までに1100施設でクリック&コレクトを展開予定としている。

しかし、同社は配送についても重要視しており、そのためにフレッシュダイレクトの買収は必然だった。「人口が密集する大都市圏では、収益性の高いモデルがすでに確立している」とミュラー氏は語る。フレッシュダイレクトはこの事業モデルに適合するブランドだ。

また、手広く展開するのではなく、対象地域を絞り込むことで、フレッシュダイレクトはフルフィルメントや配送サービスによりコストをかけられるようになる。同社は6月から、マンハッタンの一部地域で2時間以内に配送するサービスを開始した。

アホールド・デレーズの人口密集地域への配送を重視するという方針は、ピーポッドの中西部の事業から撤退するという決定からも見て取れる。アホールド・デレーズの米国における店舗の大半は、現在東海岸に展開されている。既存店舗のある市場で配送業務を展開する場合は、新たな倉庫を建てるかわりに既存店舗を活用し、一部の注文を処理することで、コストを削減することも可能だ。

コンフリクトに対する懸念

「フレッシュダイレクトは、アホールド・デレーズが展開しているピーポッドの配送事業とコンフリクトしないのか」という疑問に対し、カンター・コンサルティング(Kantar Consulting)でスーパーマーケットおよび食料品アナリストを務めるエリー・ピント氏は、「最寄りまたは付近の食料品チェーンの配送サービスを利用する消費者が多いため、そういった現象はあまり起きないのではないか」と回答している。

「それに、アホールド・デレーズは、今でもピーポッドブランドと自社のクリック&コレクトの両方を使っている。すでに2種類のフルフィルメントサービスを展開しているのだ。フレッシュダイレクトもまた別ブランドの、別のフルフィルメントサービスとして展開可能だろう」。

一方、ウォルマートもまたアホールド・デレーズと同様にオンライン食料品分野ではクリック&コレクトを重視しており、配送よりも早い段階で実装を開始している。また、クローガーをはじめ、ほかの食料品チェーンでは独自のフルフィルメントセンターの立ち上げに大規模な投資を行っているところもあるが、これはコストのかかるアプローチだ。実際、クローガーの利益率は昨年、2四半期連続で縮小した。これはフルフィルメントおよびサプライチェーンへの投資が増えたことに起因する。

アホールド・デレーズは、数字の上で適切なバランスとなる方針を見定めようとしている。ミュラー氏は次のように述べている。「米国における当社のオンライン食料品サービスは、当初は100%がピーポッドを通じた配送サービスとなっていた。だが5月の時点で、クリック&コレクトが50%近くのシェアを獲得するほどに勢いをつけている」。

[原文:With FreshDirect acquisition, Ahold Delhaize is doubling down on East Coast grocery delivery

Anna Hensel(翻訳:SI Japan、編集:長田真)