ブルーミングデールズ(Bloomingdale’s)は、高級志向の消費者により強くアピールするため、CEOの交代を発表した最新の大手小売企業だ。
百貨店である同社は9月12日火曜日、これまでタイのセントラルデパートメントストア(Central Department Store)やロビンソンデパートメントストア(Robinson Department Store)でグローバルリテールのエグゼクティブを務めてきたオリビエ・ブロン氏が、11月にブルーミングデールズの指揮を執ることを発表した。ブロン氏はトニー・スプリング氏の地位を引き継ぎ、スプリング氏は2024年2月にブルーミングデールズの親会社メイシーズ(Macy’s)の新しいプレジデント兼CEOに就任する。
この記事は、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です。
ブルーミングデールズ(Bloomingdale’s)は、高級志向の消費者により強くアピールするため、CEOの交代を発表した最新の大手小売企業だ。
百貨店である同社は9月12日火曜日、これまでタイのセントラルデパートメントストア(Central Department Store)やロビンソンデパートメントストア(Robinson Department Store)でグローバルリテールのエグゼクティブを務めてきたオリビエ・ブロン氏が、11月にブルーミングデールズの指揮を執ることを発表した。ブロン氏はトニー・スプリング氏の地位を引き継ぎ、スプリング氏は2024年2月にブルーミングデールズの親会社メイシーズ(Macy’s)の新しいプレジデント兼CEOに就任する。
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新たな発想を取り入れる
この新しい人事は、ブルーミングデールズがほかの百貨店と同様、消費者の支出の低迷を受けて変革を進めているなかで発表されたものだ。同社は、親会社のメイシーズよりも良い業績を残すことができたたものの、第2四半期の純売上は3.6%減少し、既存店売上高も2.6%減少した。デザイナーブランドを販売する小売業者として、ブルーミングデールズは、富裕層の顧客向けであるが、そのような顧客の多くは激しいインフレのなかでも十分な可処分所得を保有している。しかし同時に、ラグジュアリー市場は売上が低迷しており、特に米国の買い物客は、第2四半期にデザイナーブランドものへの支出がこの数四半期に比べて減少しており、ケリング(Kering)やLVMHなどのブランドは、北米での需要の軟化を指摘してきた。
ブルーミングデールズと同様、メイシーズも財務的に厳しい状況にあり、その経済環境のなかで変化を起こそうとしている。これまでメイシーズは社内からCEOを雇用してきた。今回退任するCEOのジェフ・ジェネット氏はメイシーズで40年間勤務しており、スプリング氏はブルーミングデールズで36年間勤務してきた。ブロン氏のような外部の人物を招き入れることで、メイシーズは、これまでとは異なる手法や、業界内の人脈を持つ人物に門戸を開いていることを示していると、小売業界の専門家は米モダンリテールに語った。また、この分野におけるブロン氏の背景を考慮すると、この人事は、ブルーミングデールズがラグジュアリー部門におけるリーダーになることへの献身を確固たるものにするものでもあると専門家は述べる。
メイシーズは常に社内から採用してきたわけではない。前プレジデントのハル・ロートン氏はホームデポ(Home Depot)出身で、新しい最高顧客およびデジタル責任者のマッシモ・マーニ氏はマッキンゼーアンドカンパニー(McKinsey & Company)で勤務してきた。ブルーミングデールズの新しいCEOについて、「ラグジュアリーブランドについての経験を得るために、社外の人材を探す必要があったとは思わない。しかし、新たな発想を取り入れようとしていることが示されている」とアルームグループ(Allume Group)の創設者アンドレア・リー氏は米モダンリテールに語った。
プレスリリースによると、ブロン氏はブルーミングデールズのリテール戦略全般を統括するほか、「ブルーミングデールズ固有の厳選されたデザイナーブランド、先進的なコンテンポラリーブランド、独占的なプライベートブランドをさらに築き上げる」ことを担当する。
ブロン氏のグローバルな経験
ブルーミングデールズの品揃えは良好だが、さらに改善が可能だと、グローバルデータリテール(GlobalData Retail)のマネージングディレクターを、ニール・サンダース氏は述べる。「良いブランドを取り揃えている。商品の選択も適切だ。しかし、もっと差別化が必要だ。独占商品を増やし、若い有望なデザイナーも多くする必要がある。新しさが必要だ」と同氏は米モダンリテールに語った。
サンダース氏は、ブロン氏が自らの国際的なブランドとの関係を生かしてこの問題を解決できるかもしれないと指摘する。ブロン氏はブルーミングデールズに入社する前はセントラルデパートメントストアとロビンソンデパートメントストアでCEOを務め、パリのギャラリーラファイエット(Galeries Lafayette)のCOOも務めてきた。セントラルとロビンソンは、ブロン氏が実権を握ったとき、大幅な店舗の刷新を発表し、イベントへの注力を強化し、2021年から2026年に成長を倍増させるという目標を掲げた。ブロン氏は、後者において、「経営効率と戦略的な計画を推進するため極めて重要な役割を果たした」とメイシーズは語る。
メイシーズは、ブロン氏のグローバルな経験がブルーミングデールズにもたらす利益を認識しているようだ。スプリング氏は、ブロン氏の「グローバルな小売業での多くの経験と、ラグジュアリー市場についての深い知識は、我々がさらなる成長の機会を追求する上で貴重なものとなるだろう」と声明で述べた。
海外への本格進出の可能性
ブルーミングデールズは主に米国内でチェーン展開しており、カリフォルニア州、コネチカット州、バージニア州などに34店舗のブルーミングデールズと20店舗のブルーミングデールズ・アウトレットを保有している。前の四半期のアウトレットの業績は、フルラインの店舗よりも800ベーシスポイントほど高かったとジェネット氏は直近の決算発表で述べた。海外店舗は、ドバイとクウェートにある2店舗のみだ。
サンダース氏は、グローバル展開も探求すべきだと語る。「高級百貨店が事業の一部を海外に進出させてはいけないという理由はない。困難なことではあるが、その機会はあると思う。ブルーミングデールズにもっと独占的な商品ラインがあれば、オンラインで海外への販売を増やし、ほかの小売企業やプラットフォームと提携して商品を販売することも可能だろう」と、同氏は付け加えている。
ブルーミングデールズの競合他社は、世界中で店舗を増やしつつある。ブロン氏が以前勤務していたパリのギャラリーラファイエットは、今年インドに2つの店舗を新設する。一方でイギリスのハーベイニコルズ(Harvey Nichols)は、サウジアラビア、クウェート、ドバイ、カタール、香港でプレゼンスを発揮している。ただし、ロジスティクスや交渉に関する理由のため、すべての展開が長期的に続くわけではない。サックスフィフスアベニュー(Saks Fifth Avenue)はカザフスタンに店舗を構えていたが、2012年にサウジアラビア、2016年にはドバイから撤退した。
これに対してリー氏は、現在のところブルーミングデールズにとってグローバルな展開が正しい行動だとは考えていない。「正しい方向性とは思えない。まだ規模が小さく、適切な店舗形態を見つけようと試みている最中だ。それらの活動に集中している」と同氏は述べた。ブロン氏がその代わりに最優先すべきなのは、イノベーションと若い買い物客を獲得することだと同氏は見る。
「ブルーミングデールズには勝利する資格があると思う。しかし、基本を正しく理解する必要があるとも思っている」とリー氏は述べる。たとえば、QRコード、さまざまな店舗形態、若い層の顧客を引きつけること、店舗内のショッピングとオンラインショッピングをひとつの体験にすることなどを、さらに実験するべきだと同氏は述べる。結局のところ、「ブルーミングデールズを進むべき方向に導いていけるだけの構想とノウハウを、ブロン氏が保有しているかどうかが気になるところだ」と同氏は述べる。
[原文:With a new CEO, Bloomingdale’s signals that it is ready for a different playbook]
Julia Waldow(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Bloomingdale’s