ギャップ(Gap)は、事業の活性化と収益の回復を図るため、2人の新役員を迎えることになった。そのうちのひとりは、マテル(Mattel)社からの移籍だ。
同社は7月26日水曜日、マテルのプレジデントと最高執行責任者を務めるリチャード・ディクソン氏がギャップ・インコーポレーテッド(Gap Inc.)のプレジデント兼CEOに就任することを発表した。その2日前には、アロヨガ(Alo Yoga)のプレジデントであるクリス・ブレークスリー氏を、同社のアスレジャーブランド、アスレタ(Athleta)のプレジデント兼CEOとして招き入れた。前者は昨年7月から、後者は3月から、いずれもしばらくの間空席だった。ディクソン氏は8月22日に、ブレークスリー氏は8月7日にそれぞれ就任する。
この人事は、何カ月ものあいだ売上が伸び悩み、再起を図るギャップにとって重要な時期に行われたものだ。同社のポートフォリオには社名と同じギャップのブランドに加えて、オールドネイビー(Old Navy)、バナナリパブリック(Banana Republic)、アスレタがあるが、直近の4四半期のうち3四半期において純売上が前年同期比で減少したと報告した。またギャップは、在庫水準の管理にも苦戦しており、最高事業成長責任者の役割を3月に廃止し、9月と4月に大規模な人員削減を発表した。5月には、2023年度の純売上が「昨年の純売上156億ドル(約2兆2300億円)と比較して「1ケタ序盤から中盤の範囲で減少する」と予測した。
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ギャップ(Gap)は、事業の活性化と収益の回復を図るため、2人の新役員を迎えることになった。そのうちのひとりは、マテル(Mattel)社からの移籍だ。
同社は7月26日水曜日、マテルのプレジデントと最高執行責任者を務めるリチャード・ディクソン氏がギャップ・インコーポレーテッド(Gap Inc.)のプレジデント兼CEOに就任することを発表した。その2日前には、アロヨガ(Alo Yoga)のプレジデントであるクリス・ブレークスリー氏を、同社のアスレジャーブランド、アスレタ(Athleta)のプレジデント兼CEOとして招き入れた。前者は昨年7月から、後者は3月から、いずれもしばらくの間空席だった。ディクソン氏は8月22日に、ブレークスリー氏は8月7日にそれぞれ就任する。
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この人事は、何カ月ものあいだ売上が伸び悩み、再起を図るギャップにとって重要な時期に行われたものだ。同社のポートフォリオには社名と同じギャップのブランドに加えて、オールドネイビー(Old Navy)、バナナリパブリック(Banana Republic)、アスレタがあるが、直近の4四半期のうち3四半期において純売上が前年同期比で減少したと報告した。またギャップは、在庫水準の管理にも苦戦しており、最高事業成長責任者の役割を3月に廃止し、9月と4月に大規模な人員削減を発表した。5月には、2023年度の純売上が「昨年の純売上156億ドル(約2兆2300億円)と比較して「1ケタ序盤から中盤の範囲で減少する」と予測した。
マテル社でのディクソン氏の功績
投資家は、ディクソン氏がマテルや「バービー(Barbie)」ブランドで行っていたようなことを、ギャップでも行ってくれるのではないかと期待している。ウォールストリートジャーナル(The Wall Street Journal)によると、ブルーミングデールズ(Bloomingdale’s)の幹部候補生としてキャリアをスタートさせたディクソン氏は、マテルに在籍中、バービーのブランドはピンクの単色(パントン(Pantone)219番)を使用すると決定し、ライセンスを縮小して、さまざまな体形や人種の人形を取り揃えるべきだと判断した。
現在、バービーの小売は活性化している。この1年間で、ピンクベリー(Pinkberry)やAirbnb(エアービーアンドビー)などの大手企業が競ってバービーとのコラボレーションを締結しようとし、映画「バービー」は劇場で記録的な売れ行きを見せている。ディクソン氏は同ブランドのほかのIP(知的財産)もうまく活用している。マテルは「ポリーポケット(Polly Pocket)」や「ホットウィール(Hot Wheels)」などの人気フランチャイズを元に、さらに45本の映画を制作中だ。
ギャップ傘下のブランドも苦戦
ギャップ傘下の各ブランドは、それぞれ異なる課題に苦しんでいる。オールドネイビーは一般的に低所得者層向けのブランドだが、H&Mやシーイン(Shein)のようなファストファッション業者に顧客を奪われつつある。ギャップは前の四半期に驚異的な利益を報告したが、一方でこれまで主な販売チャネルだったモールでの出店は縮小した。バナナリパブリックも店舗を閉鎖し、現在は品揃えを拡大するためにベッドフレームや毛布などの家庭用品に傾注している。
アスレタもまた成長が鈍化し、刷新を必要としている。同社はかつて業界でも抜きん出ていたが、現在では、市場シェアを増やしてきたフェイブルティクス(Fabletics)やアロヨガ、長きにわたって市場を支配してきたルルレモン(Lululemon)などと競合しなければならない状況だ。前四半期にアスレタの純売上は3億2100万ドル(約459億円)と前年同期比11%減少だった。
「アスレタは長いあいだ、ひとり勝ちの状態だったと考えている」とエーラインパートナーズ(A Line Partners)の創設者であるガブリエラ・サンタニエロ氏は米モダンリテールに語った。「アスレタは長いあいだ、ファッションでは成功していない。一方でアロヨガは本当に成功している。女性や若い女の子なら誰でもアロヨガを欲しがっている。アロヨガはセット商品を発表し、そのパイオニアとして市場に浸透させた。同社はアスレジャーに、より現代的な感覚をもたらしたが、アスレタにもそれが必要だ」。
マテルとギャップの違い
同様に、アナリストたちは、ギャップにも大きな転換が必要だと言う。
ディクソン氏は、ギャップの以前のリーダーたちとは違い、これまで同社で働いたことがない。しかし、外部の人間を呼び込むことによって望ましい変化が起きる可能性があると、サンタニエロ氏は語る。内部の人間について、同氏は、「内部の人間は会社を知っており、会社とともに成長し、ブランドのDNAを理解していると考えてよい。しかしこれは、木を見て森を見ないというケースを生むこともある」と述べる。一方、社外から来た人間は、「まったく新しい新鮮なアイデアを持ち込んでくる可能性がある」と同氏は付け加えた。
マテルとギャップはカテゴリーが異なり、ギャップは独自の流通チャネルを保有している。同時に、マテルとギャップは思っているよりも共通点が多いと、BMOキャピタルマーケッツ(BMO Capital Markets)でマネージングディレクターとシニアアナリストを務めるシメオン・シージ氏は米モダンリテールに語った。「両社とも実体がある自由裁量の商品を販売している。ホリデー、ブランディング、顧客からの認知、そして、ストーリーテリングは、両社にとって重要だ。結局のところ、玩具とセーターの違いは、表面的に見られるほど大きなものではない」。
ギャップ最大の課題は商品の刷新
ディクソン氏が直面する最大の課題はギャップの商品を一新することだと、グローバルデータリテール(GlobalData Retail)のマネージングディレクターを務めるニール・サンダース氏は語る。「問題の核心は、まさにそこだ」と同氏は述べる。ギャップは在庫を一掃し、コスト意識の高い顧客の目を引くために、割引に強く依存してきたが、常に成功してきたわけではない。
「ギャップは、もっと消費者からの共感を得られるような商品を企画し、販売する必要がある。同社のブランドとその品揃えは代わり映えのないもので、毎年あまり変化が見られなかったが、これを完全に刷新する必要がある。もちろんこれが実現すれば、もっと効果的にブランドを表現し、マーケティングを行い、そしてふたたび消費者の注目を集める方法を考えられるようになるだろう」と、サンダース氏は述べている。
アプトス(Aptos)の小売マーケットインサイト担当ディレクターを務めるデイブ・ブルーノ氏も同様に、ディクソン氏が最初の職務として、ギャップの品揃え戦略を「厳しくチェック」するだろうと考えている。「どのようなブランドも、消費者から魅力的に見られるかどうかは、品揃えに左右される。ディクソン氏はバービーの商品ラインの拡大と強化にも成功しており、ギャップのブランドの品揃え戦略に大きな変化が起きることが予想される」と、ブルーノ氏は覚書に記している。
長期的で持続可能な成長に期待
ディクソン氏と同様、投資家たちもまた、ブレークスリー氏がアスレタを消費者にとってより魅力的な選択肢にしてくれることに期待している。アロヨガは、ブレークスリー氏のリーダーシップのもとで40店舗規模に成長し、2022年には売上が10億ドル(約1430億円)を超えた。ギャップの暫定CEOを務めるボブ・マーティン氏は、ブレークスリー氏のことを「アスレタを長期的で持続可能な成長に導いてくれるだろう」とプレスリリースで述べている。
人材を探すプロセスを考えると、ディクソン氏とブレークスリー氏の就任が、これほど近い時期に発表されたのは、ただの偶然かもしれない。同時にギャップは、「これがある種のリセット、そしてビジネスを本気で変革し、改造しようとする熱意として伝わることを望んでいるのだと思う」とサンダース氏は述べた。
「この改革が効果をもたらすかどうかはまだわからない。しかし、幸先は良いと思う。ギャップはようやく問題に向き合えたようだ」と、同氏は述べる。
[原文:With a major executive shuffle, Gap is attempting a major refresh]
Julia Waldow(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Gap News Room