[ DIGIDAY+ 限定記事 ]ブラウザのトラッキング対策、データ保護法の強化によって、データプライバシーファーストの戦略へと向かうことが明白になってきている。そして、波及効果として、今後、市場で入手できるデータは減少する見通しだ。大きな変化が起きると、必ず勝者と敗者が生まれる。代表的な勝者と敗者を紹介しよう。
[ DIGIDAY+ 限定記事 ]デジタル広告が新たな夜明けを迎えようとしている。
ブラウザのトラッキング対策、データ保護法の強化によって、データプライバシーファーストの戦略へと向かうことが明白になってきている。そして、波及効果として、今後、市場で入手できるデータは減少する見通しだ。プログラマティック広告の売買は依然として、大部分がサードパーティCookieに依存しているが、そうした状況も変化するだろう。
大きな変化が起きると、必ず勝者と敗者が生まれる。代表的な勝者と敗者を紹介しよう。
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勝者 / Winner
コンテクスチュアルターゲティング : コンテクスチュアルターゲティングの魅力が再び増している。広告業界の幹部たちはいまも、2018年春にオラクル(Oracle)がコンテクスチュアルアドテク企業グレープショット(Grapeshot)を3億2500万ドル(約344億円)で買収したことを引き合いに出し、コンテクスチュアルターゲティングには未来があると断言している。結局、これほどの高値で買収されるアドテク企業が続出することはなかった。2018年5月、一般データ保護規則(General Data Protection Regulation:以下、GDPR)が施行されたことで、コンテクスチュアルターゲティングが買われ、パブリッシャーはわずかながら、思いがけない収入を得た。メディアエージェンシーがあえて安全策をとり、個人情報に依存しないターゲティング手法の予算を増やしたためだ。しかし、そうした用心は比較的短命に終わった。そして現在、オーディエンスターゲティングと同等の効果を大きな規模で得られる高度なコンテクスチュアルターゲティングを見つけるための競争が繰り広げられている。パブリッシャー、メディアエージェンシー、アドテクベンダーがこぞって、分け前を狙ってくるだろう。
認証、同意を得た広告の購入 : ユーザーから本物の同意を得たインベントリー(在庫)が貴重な存在になるだろう。サードパーティCookieを使うことなく、パブリッシャーがユーザーの同意を得られればなお良い。複数のアドテク企業幹部が、一部のアドテクベンダーはGDPRの罰金を回避するため、ユーザーの同意がないインベントリーを売買できないようにすると予測している。メディアエージェンシーはいずれ、ユーザーの同意を得ていることを確認するため、これまでより高いCPMを喜んで受け入れるようになるかもしれない。
大規模なログイン戦略 : サードパーティCookieは過去のビジネスモデルになろうとしている。未来のビジネスモデルはファーストパーティCookieなど、データプライバシー法に準拠した同一人物の測定、追跡方法だ。サブスクリプション型のパブリッシャーはすでに、こうしたアプローチと歩調を合わせており、正式登録までの準備期間として、無料登録の仕組みを確立している。ドイツのパブリッシャーは、マーケターや国内のライバルを含む他社とログインアライアンスを結成している。
消費者 : 消費者がデータプライバシーをどれくらい気に掛けているかは、盛んに議論されている問題だ。プライバシー活動家たちはとても気に掛けており、広告内で個人情報が悪用されることについて、GDPRの監督機関に懸念を伝えている。ただし、一般市民の関心度については、業界の意見は割れている。オープンエクスチェンジで広告が売買される際、個人情報がどれくらい使われているかをきちんと理解することにより、一般市民の関心がどれくらい高まるかについても同様だ。しかし、いずれにせよ、消費者が行動を起こすかどうかにかかわらず、消費者に個人情報の用途に関する選択肢と支配権をもたらすことが、こうした取り組みの目的だ。消費者が気に掛けていることを示唆する証拠は増えている。ケンブリッジ・ アナリティカ(Cambridge Analytica)の一件のような注目されたスキャンダルはもちろん、情報を漏えいし、その結果、GDPRに違反したブリティッシュ・エアウェイズ(British Airways)など、巨額の罰金を科された有名ブランドの報道も消費者の認識を高める後押しとなっている。
敗者 / Loser
リアルタイム入札 : リアルタイム入札(Real-time bidding:以下、RTB)はある種のターゲティングを促進する仕組みにすぎないかもしれないが、リアルタイムのオーディエンスターゲティングをもっとも効果的にもたらす手法の座を失いつつある。その大きな要因は、個人情報を悪用した広告配信の手法として英国の個人情報保護監督機関、情報コミッショナーオフィス(Information Commissioner’s Office)の調査が入り、GDPR違反の疑いをかけられていることだ。プライバシー活動家たちも規制当局に申し立てを行った際、RTBとそのGDPR違反を問題の核心として挙げている。GDPRでは、企業はRTBで個人情報を使用することの正当な利益を主張できないと定められており、これもRTBへの圧力が高まっている原因となっている。
サードパーティCookieへの依存 : AppleがSafari(サファリ)ブラウザ上でのサードパーティCookieによる追跡に無慈悲の対応をしたことで、Safariではプログラマティックによるマネタイズが時代遅れと化している。Firefox(ファイヤーフォックス)、Brave(ブレイブ)も同様の方針を打ち出している。GoogleはサードパーティCookieによる追跡を無効化するかどうかをユーザーの選択に委ねているが、無効化しなければ、Google製品の使い勝手が変わるという状況もあり、ユーザーが無効化を回避する理由は見当たらない。どのような影響が出るかは時間が教えてくれるだろう。いずれにせよ、ブラウザ主導のトレンドにGDPRなどのデータ保護法が加わり、ターゲティングに個人情報を使用することが難しくなっており、その結果、広告主が入手できるデータが減少している。パブリッシャーは先を争うように、サードパーティCookieを用いるデータ管理プラットフォーム(DMP)から撤退し、ファーストパーティデータをベースにしたプラットフォームに乗り換えている。今後、勝利を収めるのは、個人情報やサードパーティCookieに依存しない形のターゲティングだ。ただ静観する企業、進化しない企業、サードパーティCookieに代わるものを提供しない企業は苦労を強いられるだろう。
Jessica Davies(原文 / 訳:ガリレオ)