ファストファッションをオンラインで販売するシーイン(Shein)に対し、不満を抱くアーティストや大手ブランド、競合他社などが7月に訴訟を起こした。その結果、同社の著作権侵害や労働慣行、競争行為に非難が集中することとなった。これらの法的なトラブルに先立ち6月にも、同社はインフルエンサーを工場に招待したことで注目が集まった。これらの課題が同社に影響を与えるか否かは、訴訟がどれだけ早く解消されるかにかかっている。
シーインは7月11日、RICO法(威力脅迫及び腐敗組織に関する連邦法)の違反を理由に、独立系アーティストに訴えられた。同じ週にファストファッション企業「ティームー(Temu)」も、反トラスト法(独占禁止法)違反でシーインを提訴した。そして7月24日にはH&Mが、著作権侵害で訴えている。
2023年5月の評価レポートによると、シーインの評価額は660億ドル(約9兆3,614億円)で、H&Mの127億ドル(約1兆8,011億円)を大幅に超えており、ザラ(Zara)のオーナーであるインディテックス(Inditex)の560億ドル(約7兆9,411億円)もわずかに上回る。競合するティームーの評価額は、3月時点で640億ドル(約9兆728億円)だった。
ファストファッションをオンラインで販売するシーイン(Shein)に対し、不満を抱くアーティストや大手ブランド、競合他社などが7月に訴訟を起こした。その結果、同社の著作権侵害や労働慣行、競争行為に非難が集中することとなった。これらの法的なトラブルに先立ち6月にも、同社はインフルエンサーを工場に招待したことで注目が集まった。これらの課題が同社に影響を与えるか否かは、訴訟がどれだけ早く解消されるかにかかっている。
シーインは7月11日、RICO法(威力脅迫及び腐敗組織に関する連邦法)の違反を理由に、独立系アーティストに訴えられた。同じ週にファストファッション企業「ティームー(Temu)」も、反トラスト法(独占禁止法)違反でシーインを提訴した。そして7月24日にはH&Mが、著作権侵害で訴えている。
2023年5月の評価レポートによると、シーインの評価額は660億ドル(約9兆3,614億円)で、H&Mの127億ドル(約1兆8,011億円)を大幅に超えており、ザラ(Zara)のオーナーであるインディテックス(Inditex)の560億ドル(約7兆9,411億円)もわずかに上回る。競合するティームーの評価額は、3月時点で640億ドル(約9兆728億円)だった。
Advertisement
「シーインは倫理や法律をきちんと守る、公正かつ合理的な企業であると自らをアピールすることに熱心だ。しかし残念ながら亀裂がいくつか生じ、同社の立場にも傷がついている」と語るのは、グローバルデータ社(Global Data)で小売アナリストを努めるニール・サンダース氏だ。サンダース氏は、インスタグラマーを招待した工場ツアーについてシーインのグローバル戦略責任者が取材に応じた点に言及する。さらにシーインは2021年に、環境・社会・ガバナンスの初のグローバル責任者としてアダム・ウィンストン氏を雇用している。
シーインのRICO法違反はクリスタ・ペリー氏(@kristerpelly)、ラリッサ・ブリンツ氏(@larissablintz)、ジェイ・バロン氏(@jaybaron)が訴えたもので、巨額の罰金を伴う。この3名のアーティストは、イラストやデザインといった知的財産をシーインが模倣し、意図的に販売したと主張する。このような告発は通常、大規模な違法行為による荒稼ぎに対して行われることが多い。
彼らは訴訟のなかで、著作権侵害はシーイン傘下の「事実上の団体連合」によるものだと主張する。シーインが「著作権を故意に侵害しており、関与した著作権侵害については十分に承知の上で実行された」と訴状に記載されている。また、同社の経営陣はペーパーカンパニーや関連会社、国際的な持株会社などが集まる複雑な企業構造を作り、これが不正行為への責任追及を難しくしている点についても言及されている。
RICO法の違反について、シーインは「侵害に関するすべての申し立てを、真摯に受け止める」としている。
「正当な知的財産権の所有者からの申し立てには、迅速な措置を講じている。私たちはこの訴訟に対して、そして妥当でないあらゆる申し立てについても、自分たちを精力的に弁護していくつもりだ」とシーインのスポークスパーソンはeメールでコメントした。
一方でティームーは、シーインが中国国内にある独立系の製造業者8,338社と独占契約を結び、ティームーとの協業を妨害したと訴える。そのため米国の消費者が「価格競争に直接参加することができず」、売上が大幅に減少したのだという。ティームーは、売上について詳細を語らなかった。同社は2022年に米国市場に参入して以来、域内で最もよくダウンロードされているアプリのひとつとなった。Z世代とアルファ世代の消費者をターゲットに、低価格やプレゼント企画を展開している。
ティームーの訴訟について、シーイン側は電子メールでこのようにコメントしている。「この訴訟に妥当性はないと考えており、自分たちを精力的に弁護していくつもりだ」。
シーインはすでに2022年12月からティームーと裁判で争っている。このときはシーインについての「誤った欺瞞的な情報」を広めるためティームーがインフルエンサーに費用を支払ったとして、シーイン側がティームーを訴えた。ティームー側はこの訴えを否定し、告発を取り下げるよう要求した。
シーインの最新の訴訟は、H&Mグループによるものだ。ストックホルムに本拠を置く同社は不定額の損害賠償と、シーインによる著作権および商標権侵害行為の差し止めを求めた。訴訟は2022年9月に起こされたもので、香港で審理が7月21日に行われ、まだ解決には至っていない。
「シーインはこれらの訴訟への対応に時間をかける必要があるだけでなく、悪評による企業評価の低下にも対処する必要がある」とサンダース氏。「これらすべては、IPO(新規株式公開)を視野に入れ、評価を高めたいと考える企業にとって、有益とはいえない」。
今年5月には米議員の超党派諮問委員会が、シーインの中国での労働慣行を問題視した。米国での免税措置適用や、個人情報漏洩についても懸念を表明している。シーインはIPOの検討についても、強制労働についても否定している。
毎日1万点以上の新商品を投入するシーインは、これまでにも工場での労働条件、著作権侵害、衣服に有害化学物質が含まれることなどが批判されてきた。ティームーのグループ会社であるピンドゥオドゥオ(拼多多)も、中国で同様の疑いを持たれている。そして6月にシーインがインフルエンサーを招いた件も、工場の実際の労働環境を見せていないとして反発を招いた。その後、参加したインフルエンサーたちは、誤解を招く情報を公開したことを視聴者に謝罪している。
「同社の製造業務が環境や人間に悪影響を与えているという憶測を、抑えようとした施策が裏目に出てしまった」とサンダース氏は語る。「サンプル工場と思しき場所を訪れた先日のインフルエンサーツアーを、消費者は見抜いた。そしてこの失策により、実際の工場がどのような状況に置かれているのかという疑問をさらに生じさせてしまった」。
「シーインはH&Mに対し、不定額の損害賠償金の支払いや、著作権および商標権侵害行為の差し止めを命じられる可能性がある。RICO法違反でデザイナーに訴えられた件についても、同様のことが言える」と語るのは、法律事務所アレン・アンド・オーヴェリー(Allen & Overy)に勤めるブンミ・ジェンファ氏だ。「シーインの評判はすでに悪く、6月のインフルエンサーツアーでも躓いた。もしも訴訟に負ければ、同社への信頼性は著しく損なわれることになるだろう」。
また、RICO法違反の訴訟の重大さを見落としてはならないという。「この訴訟に敗れると、その影響でシーインは事業の閉鎖と清算を余儀なくされる可能性がある」とジェンファ氏。「被告への判決によって、企業は数百万ドルに及ぶ罰金や賠償金の支払いを命じられ、さらなる法的な影響が及ぶことが多い」。
シーインが米国に商品を発送する際に法律の抜け穴をつき、免税措置を利用していることも問題視されている。米国のデニミニス・ルールでは、800ドル(約114,000円)未満の商品は価値が低すぎるとみなされ、関税やほとんどの検査が免除される。シーインはこの制度を利用し、米国の消費者に向けて低価格の商品を直送している。2022年には約6億8,500万個のデニミニス貨物が、中国から米国に届けられた。シーインに入る注文額は平均11ドル(約1,500円)なため、一般税(16.5%)も中国からの輸入品に対する追加関税(7.5%)も免除される。現時点では法的な影響はないものの、米国議員らはこれを是正すべき問題だと主張している。
米中経済および安全保障審査委員会が今年4月に発表したイシューブリーフには、シーインやティームー、そして他の中国のeコマース企業の成功が「中国の既存のeコマースプラットフォームとスタートアップの両方に、このモデルを模倣することを促している。そして米国市場にアクセスする上での規制や法律、原則にリスクを及ぼし、難題を突き付けることになる」と記されている。
シーインは、ロビー活動に多額の資金をつぎ込んでいるわけではない。7月21日に提出された書類によると、米議会へのロビー活動に同社が費やしたのは、2023年の第2半期に60万ドル(約8,558万円)。これと比較すると、米国の小売大手ウォルマートの同時期のロビー活動費は、162万ドル(約2億2,553万円)である。シーインの提出書類によると2022年の第3四半期以降、同社はロビー活動を請け負うホバート・ハラウェイ&クウェイル・ベンチャーズ(Hobart Hallaway & Quayle Ventures)に50万ドル(約7,132万円)、エイキン・ガンプ・ストラウス・ハウアー&フェルド(Akin, Gump Strauss Hauer & Feld)に27万ドル(約3,851円)を支払っている。
[原文:Will Shein’s lawsuits hurt the company?]
ZOFIA ZWIEGLINSKA(翻訳:田崎亮子/編集:山岸祐加子)