アンダーアーマー は、なぜ D2C 事業で苦戦しているのか?

D2C(Direct to Consumer)ビジネスの強化に努める米スポーツ用品ブランド、アンダーアーマー(Under Armor)がいくつかの問題に直面している。

卸売業者に長らく依存してきたほかの多くのブランドと同じく、アンダーアーマーは現在、自社のウェブサイトおよび実店舗での販売による収益増を図っている。店舗数は370とかなり多く、そのうち263店がアウトレットストアだ。

だが、同社のD2Cビジネスはいくつかの理由から苦戦を強いられている。何と言っても大きいのは、北米における売上低下だ。アンダーアーマーの商品はパフォーマンスの向上を狙うアスリートをターゲットにしており、そのため高機能フィットネスギアが中心だが、消費者の嗜好はカジュアルなスポーツウェア/アスレジャーに移っている。2019年11月前半に開かれた第3四半期アーニングコールの報告によれば、収益は14億ドル(約1520億円)で、前年比1%減、卸売売上は2%減、D2C売上は1%減だった。D2C売上は第3四半期の収益の32%にあたる4億6300万ドル(約500億円)だった。

立て直し策とその見通し

さらに、同社は自社サイトでのディスカウントを削減し、マージン増を狙い、自社定価販売店への顧客の誘導を図っているが、その結果、短期的にではあるが、顧客離れが起きている。COOパトリック・フリスク氏によれば、第3四半期、自社サイトへのトラフィックは増したが、実店舗へのコンバージョン率は下がったという。

立て直しを図り、アンダーアーマーは定価販売店を新規オープンし、衣料品およびパフォーマンスウェアの技術革新を引き続き前面に押し出すとともに、新たなeコマースプラットフォームの構築を考えている。だが、それだけでD2Cビジネスの強化に繋がるかは、定かでない。

一方、最大のライバルであるナイキ(Nike)は、自社アプリを介さないと購入できない限定商品を増やすことで、D2Cビジネスの強化に乗り出している。ナイキを上回るプレミアム感を確立できないかぎり、アンダーアーマーが特定の店舗のみで、あるいは少数のロイヤルカスタマーのみに販売という同様の手法でD2Cビジネスを強化することは極めて難しいだろう。アンダーアーマーはさらに、ルルレモン(lululemon)といったアスレジャーにフォーカスするブランド勢に顧客を奪われるリスクにも晒されている。

「アンダーアーマーはスポーツにフォーカスするブランドであり、日常の買物リストには入りにくい」と、調査企業グローバルデータ・リテール(GlobalData Retail)のマネージングディレクター、ニール・ソーンダース氏は指摘する。

UA社における最大の問題

実際、アンダーアーマーは変化のときを迎えている。創設者ケヴィン・プランク氏は2020年1月にCEOを退くことになっており、 2019年11月前半には、証券取引委員会が同社の会計監査に入ると報道された。

この報道を受けて、ウォール・ストリート・ジャーナル(the Wall Street Journal)は11月第3週、アンダーアーマーが過去数年にわたり四半期末に実践してきた方策――定価販売店からオフプライスのアウトレット店への商品移動や、収益の即時的増加を図り、値引きを条件にして卸売パートナーに早期の仕入れを促すなど――を報じた

アンダーアーマーはこれに対し、「弊社の活動はすべて適切だと確信している」と述べ、証券取引委員会に協力する旨を発表。評論家らによれば、ジャーナル紙が報じた同社の慣行は、小売業界ではごく一般的なものだという。

だが、いずれにせよ、ジャーナル紙の記事はアンダーアーマーをはじめとするブランドが卸売からの脱却をますます目指す理由を浮き彫りにしている。スポーツ用品チェーン大手スポーツ・オーソリティ(Sports Authority)の倒産後、アンダーアーマーは米大手百貨店チェーンコールズ(Kohl’s)と提携したが、同社最大のパートナーの一社で同じくスポーツ用品チェーン大手のディック・スポーティング・グッズ(Dick Sporting Goods)は、これに対して不満を露わにしたと報じられている。D2C販売の割合を増やせば、理論上は確かに、こうしたしがらみから自由になり、自身の運命をコントロールしやすくなる。

ただし、D2Cビジネスは経費もかさむ。自社店舗およびマーケティングへの投資増が必要不可欠だからだ。結果的に、アンダーアーマーのD2C売上の多くは現在、低価格で販売するアウトレットストアでのものであり、それが同社最大の問題となっている。

復活劇は達成されるか?

そこで、同社は定価販売店の新規オープンを計画する一方、ディスカウントの規模縮小にも努めている。2019年の第1四半期はセール期間を3日縮めたと、フリスク氏は5月に語った。氏はさらに、第3四半期アーニングコールで「我々は再びプレミアブランドとしての地位を確立する。絶対に実現できると確信している」とも断言した。

そのための方策として、同社は現在、ステフィン・カリー氏やドウェイン・ジョンソン氏といった著名アスリート/セレブとの契約を進めるとともに、新たな看板商品の技術革新を前面に押し出している。遠赤外線テクノロジーを利用したトレーニングウェアの新ラインはそのひとつで、同社によれば、部分的に血流を高め、筋肉に送られる酸素量を増やす機能を有するという。さらに、一風変わったパートナーシップを通じた技術力のアピールにも積極的だ。 宇宙開発企業ヴァージン・ギャラクティック(Virgin Galactic)との提携はその一例で、2020年に予定されている宇宙旅行の乗客用の宇宙服を同社は開発した。

こうした動きに対し、スポーツマーケティングエージェンシー、リヴォリューション(Revolution)のチーフクリエイティブオフィサー、ブライアン・クォールズ氏は手厳しい評価を下す。「アンダーアーマーがいったい誰をターゲットにしているのか、私にはよくわからない。さまざまなスポーツにやみくもに手を出しているだけにしか見えない」。

Anna Hensel(原文 / 訳:SI Japan)