ジェネレーティブAIの今後、そしてあるべきかたちについて多くの企業が議論を重ね、有効な活用法を模索するなかで、(ティンクスの名で知られる)クリエイター、クリスティーナ・ナジャー氏はその論調に逆らい、「AIには一切関わりた […]
ジェネレーティブAIの今後、そしてあるべきかたちについて多くの企業が議論を重ね、有効な活用法を模索するなかで、(ティンクスの名で知られる)クリエイター、クリスティーナ・ナジャー氏はその論調に逆らい、「AIには一切関わりたくない」と言う。
「AIは気に食わない。AIはおそらく人類を滅亡させる。目の前の云々よりも、そのほうが私にはずっと気になる。一部のクリエイターがもうAIを使っているのは、もちろん知っているが、私はまだ、創作過程のどの部分についても、過剰な自動化はしたくない」。
ナジャー氏は3年にわたり、インフルエンサーとしてブランド構築に取り組んできた。そしていまや、自身のブランド「Rich Mom(リッチ・マム)」をマーチャンダイズ化し、米デジタルラジオのシリウスXMで人気のポッドキャスト番組を持ちながら、TikTokやインスタグラムをはじめ、自身のSNSアカウントで複数のブランド契約を結ぶに至っている。
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米DIGIDAYでは、そんな同氏にAIとの距離感を聞いた。読みやすさを考慮し、発言には多少編集を加えてある。
◆ ◆ ◆
――ご自身とAIとの関係は?
とくにない。AIを使いたい場面は私には一切思い浮かばない。人とアイデアを交換し合うなど、これまでどおりのかたちでやっていく以外には考えられない。時代遅れだと言うなら、それでも構わない。AIには本当に興味がない。AIはいろいろな病気の治療法や地球温暖化の解決策を見つけるのに使うべきだ。創造分野における仕事はどれも、わざわざなくす必要があるとは、私にはまったく思えない。
――動画制作のブレインストーミングやコンテンツの生み出す一助として、ChatGPT(またはその類のツール)の利用をどう思うか?
それについては、ただただ興味がない。効率はよいのかもしれないが、それでも私は人と話して進めていきたい。少なくとも今のところは、私の世界にAIが入る余地は一切ない。
――では、音声コンテンツと動画コンテンツの違いについてはどうか?
オーディオはとても親密なものだ。誰かの耳のなかに直接届くのだから。聴いているときはたいてい、その人はひとりでいるし、そういう意味での親密さがある。つまり、その人は集中していると言える。たとえば、TVの前に座っていたり、TikTok画面をぼんやりとスクロールしていたり、授業の合間にインスタグラムをアップしたりしているときよりも、集中しているだろう。そういうときは一般的に、何かピンと来るものがあるかもしれない。
だからこそ、オーディオはより大きなアイデアを具体的にできる。また、自分のコミュニティと繋がれる絶好の機会だと私は考えている。一方でコミュニティの人たちが私に付いてきてくれるとも感じる。それができている私は、本当にラッキーだ。ただし、そこではあえて、いわば深いところまで行くようにしている。つまり、私のなかに何かがあって、それがたとえば深刻なものでなくても、30秒のインスタグラムのストーリーズでは足りない、もっと深く掘り下げたいものの場合は、私は発信にオーディオを選択する。
――チャネルとオーディエンスの違いに応じたコンテンツ制作の違いについては?
私はフォーマットについて、よく考える。自分はなぜTikTokを見るのか? なぜポッドキャストを聴くのか? 私の場合は、情報や知識が欲しいからだ。もちろん、楽しみたいとも思うが、「何かを持って帰りたい」という気持ちが強い。しかしながら、TikTokでは、ただただ楽しみたい部分もある。一方でインスタグラムでは、軽い現実逃避を求めることもある。だから、人はなぜ特定のプラットフォームやメディアに行くのか、その理由を考えるようにして、その答えに沿うかたちでコンテンツを届けるようにしている。
――ご自身の影響力と創造的判断とのバランスの取り方について
私は常に、自分が創るべきだと感じるものを素直に創るようにしている。それがおそらく、私が成功できた理由のひとつだ。ブランドを無理やり作り上げようとするのは見え透いている。そういう姿勢が見えた瞬間、私は完全に興味をなくす。だから、そういうふうに考えたことは一度もない。
――その心構えは、あなたが一緒に仕事をする広告主に対しても同じか?
私は基本的に、自分が心から好きだと思うブランドや商品としか仕事をしない。自分が本当に好きなもののことなら、いくらでも喋れる。そういう意味で、私たちは本当にラッキーだと思う。
[原文:Why Tinx thinks AI will ‘end humanity’ and refuses to use it in content creation]
Sara Jerde(翻訳:SI Japan、編集:島田涼平)