ビールブランドであるステラ・アルトワ(Stella Artois)のバイス・プレジデント、ハリー・ルイス氏はクリエイティブの評価をするとき、サラウンド音響や4K画質を使ったりはしない。なぜなら、スマートフォン上で視聴するからである。理由は簡単。多くの人々がスマートフォンで動画を観ているからだ。
モバイル上に特にリソースを費やし、競争しているブランドはステラ・アルトワ以外にも多く存在している。あらゆるニュースフィード上にさまざまなブランデッドビデオが溢れかえっているいま、各ブランドが消費者の時間を少しでも獲得するために争っている。そんななかでステラ・アルトワはどのように差別化を図ろうとしているのか。
ビールブランドであるステラ・アルトワ(Stella Artois)のバイス・プレジデント、ハリー・ルイス氏はクリエイティブの評価をするとき、サラウンド音響や4K画質を使ったりはしない。なぜなら、スマートフォン上で視聴するからである。理由は簡単。多くの人々がスマートフォンで動画を観ているからだ。
テレビの視聴者数は停滞する一方で、モバイルでのビデオ視聴は増加し続けている。ゼニスオプティメディア(ZenithOptimedia)は、モバイルでのビデオ視聴は2016年、さらに19%増加すると予測しているという。
ルイス氏は「我々は消費者がモバイルでどれだけ時間を費やしているか知っている。モバイルは右腕くらい重要な存在になっており、我々はそこに入っていきたいと考えているのだ」。ステラ・アルトワのWebサイトのページビューを見てみると、なんと67%はモバイルのユーザーからのトラフィックとなっているそうだ。これはこの1月からずっと変わらない傾向である。
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モバイル上に特にリソースを費やし、競争しているブランドはステラ・アルトワ以外にも多く存在している。あらゆるニュースフィード上にさまざまなブランデッドビデオが溢れかえっているいま、各ブランドが消費者の時間を少しでも獲得するために争っている。そんななかでステラ・アルトワはどのように差別化を図ろうとしているのか。
教育的なコンテンツ
グローバル市場におけるシェア拡大を目指すベルギーの酒類メーカー・アンハイザー・ブッシュ・インベブ(Anheuser-Busch InBev)は、若くてオシャレな世代で流行っているクラフト・ビールに対抗するため、ステラ・アルトワを主戦力としている。
競馬のアスコットとテニスのウィンブルドンのスポンサーシップ、また、さまざまな企業の社会責任に関する活動を通じて、ステラ・アルトワは上昇志向で、プレミアム感のあるブランドの実現を目指す。また「ステラ」という略称は、かつてあった「無責任な大酒飲み」というイメージと結びついてしまったため、いまではどのような場面でも「ステラ・アルトワ」と呼ばれるようになっている。
A fine host has an eye for presentation. And there’s no better way to present Stella Artois than in a Chalice.https://t.co/spQomIEKhI
— Stella Artois (@StellaArtois) 2016年5月18日
ルイス氏によると、同ブランドはビデオを使って、ターゲットであるミレニアル世代のオーディエンスに向けて、教育的なコンテンツを届けている。たとえば、上のツイートではステラ・アルトワの正しい注ぎ方を9段階のステップで紹介。またブランドの創業者であるセバスチャン・アルトワの歴史や、製造法にまつわるコンテンツを作ることで、伝統的なイメージ想起も狙っているという。
「我々にとってオーディエンスにリーチすることが最重要だが、それを越えたところで、ブランドとより深い関係を築き、時間を過ごして欲しいと考えている」と、ルイス氏は語る。
Facebookライブ動画
ステラ・アルトワはFacebookのライブ動画機能も活用して、消費者のエンゲージメントを獲得しようとしている。若くて将来有望なシェフやバーテンダーにビデオへ登場してもらい、ブランドのファンによるインタビューを行う計画だ。
また、ステラ・アルトワの体験型イベントにおける、舞台裏映像も届けられる。同社の夏の超大型パーティ「ル・サボワール(Le Savoir)」が、2016年8月に予定されているが、その裏側も覗けるという。
そのイベントにおける、シルク・ドゥ・ソレイユによるパフォーマンスや「食べられる壁」を催した屋台といった見世物を、ユーザーは遠隔で鑑賞することができるようになる。とはいえ、まだまだ多くが実験段階。どのようなアイデアがうまくいくか検証しながら発展させていくことになる。
Facebookのライブ動画機能に早い段階で取り組むことにはメリットがあるという。Facebook自身がこの新しい機能と、そのユーザーを熱心にプロモートしているから、「Facebookが我々のコンテンツをプッシュしてくれるので、タイムライン上で非常に価値のある場所を得られている」と、ルイス氏は語る。
「触れる」ビデオ
ファッションメーカーのエイソス(ASOS)やテッドベイカー(Ted Baker)といったリテイラーによって試されている「ショッピングまで出来るビデオ(ショッパブルビデオ)」は別名「触れるビデオ(Touchable video)」と呼ばれている。これに関してエージェンシーであるウィー・アー・ソーシャル(We Are Social)のストラテジー責任者であるリゼ・ピネル氏は「一番のチャンスは、ファッション業界とビューティー業界にある」と米DIGIDAYに語った。
「ブランドのストーリーテリングが(消費者の)ダイレクトな反応と組み合わさると、信じられないほど強力になる」と強調する。ステラ・アルトワはビデオ戦略にテクノロジーをどんどんと投入してはいるものの、売上を伸ばすことよりも、ライフスタイルに専念したコンテンツをプロモートすることに主眼を置いているそうだ。
「触れるビデオ」のプラットフォームであるシネマティーク(Cinematique)上で、ステラ・アルトワはビデオシリーズを2016年8月1日に公開する予定だという。そこではビール醸造マスター・セバスチャン・アルトワや料理を使ったアート作品で有名なボンパス&パー(Bompas & Parr)についての物語を伝えている。ビューワーは再生中のビデオのなかに写っているいろいろな物をクリックすることで、ほかのコンテンツについて知ることができる。
Grace Caffyn(原文 / 訳:塚本 紺)