FUTURE OF MEASUREMENT

Google の脱ラストクリックアトリビューションは正解か?:必ずしも歓迎されているわけではない理由

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Appleをはじめとする各社のブラウザ内で、ユーザーがブランドとどんなやりとりを交わしているのかを示すシグナルが消えようとしている。そしていま、Googleはラストクリックに基づく広告パフォーマンスの測定から広告主を遠ざけようとしている。分析モデルを使って広告結果を測定するアプローチへシフトしたほうがいいと、広告主の説得を試みるGoogleだが、必ずしも全社が首を縦に振るとはかぎらない。

また、プライバシーに配慮した測定をめぐる騒動を考えると、Googleはその新たな手法を成功させるべく、顧客データの保管場所をさらに広く開放するよう働きかけることが予想される。こうした動きについて一部のデジタル広告企業幹部らは、プライバシー保護から一歩後退する行為だと話す。

Googleは9月27日、検索とショッピング、ディスプレイ、YouTubeの各広告に対するデフォルトの測定法を切り替えると発表した。ラストクリックアトリビューションから、同社が直接確認できない情報に基づいてコンバージョンを推定する手法への切り替えだ。コンバージョンに含まれる可能性があるものには、たとえば、商品の購入やサブスクリプションの申し込みなどがある。

同社はこれを「データ駆動型」コンバージョントラッキング、推定コンバージョントラッキングと呼んでいる。これに自動入札プロセスを組み合わせれば、これまでのやり方よりも多くのコンバージョンを同じコストで広告主に提供できるようになると、Googleは述べている。それができるのは、ラストクリックの前にユーザーがブランドと交わすさまざまなインタラクションを考慮に入れながら、独自の予測分析とターゲティング広告の最適化ソースを駆使することによる。同社によれば、2022年初頭までに、この推定アトリビューションアプローチをGoogle広告の全アカウントに対して用いる予定だという。

ティヌイティ(Tinuiti)のクライアント各社は、自動入札と広告コンバージョン測定に対するGoogleのさまざまな推定アプローチを1年ほど前からテストしていると、同エージェンシーの分析およびマーケティングサイエンス部門でシニアバイスプレジデントを務めるアンドリュー・リチャードソン氏は話す。ティヌイティがフォーカスするのは、デジタルとソーシャルの大手プラットフォームで展開される広告主のキャンペーンだ。「マーケティング予算の10%をテストに割り当てることができれば、これらのシグナルの正体がだんだんわかってくるようになるはずだ」と同氏は語り、初期テストを行うことなく、こうしたモデル化された手法へ思い切って完全移行することに対して警告を発した。

ラストクリック否定派

ラストクリックアトリビューションには、購入をはじめとするコンバージョンに貢献した可能性があるメディアすべてが反映されるわけではなく、この問題をめぐっては、かねてから懸念が取り沙汰されてきた。したがって、Googleがラストクリックからシフトチェンジすることを、多くの広告主が良いことだと考えるかもしれない。「ラストクリックアトリビューションが与えてくれるのは、パフォーマンスマーケティングに対する極度にサイロ化された所見だ。そうした所見は間違っていることが多い。人間はオンラインサイロのなかで暮らしているわけではない。マーケティングがそれを装うのはナンセンスだ」と、デジタルマーケティングエージェンシー、アキュラキャスト(AccuraCast)のマネージングディレクターで創業者のファーハッド・ディベチャ氏は語る。「GoogleやFacebook、TikTokといった、競合するプラットフォームを比較できるようになること。それがマーケターの課題だ。彼らのデータ駆動型アトリビューションモデルは今後、それぞれが違う形になっていくことが予想されるからだ」。

一方、デジタルネイティブではないブランドや、ラストクリックアトリビューションを用いることに慣れきっているブランドの多くは、いまさらやり方を変えることに乗り気ではないかもしれないと、リチャードソン氏は話す。「会議の場でCMOがCEOに話しかけ、脱ラストクリックアトリビューションを試みている場面に何度も遭遇してきた」と、同氏は語る。マーケティングパフォーマンスの評価にラストクリックアトリビューションを用いてきた企業の場合、新たな測定システムを使用することによって、マーケティング結果が流動化するおそれがあると説明するのは、簡単なことではない。この点を幹部陣は懸念するかもしれないと、同氏は指摘する。「自社の事業を測定できる新たな手法が出てきたと取締役会に説明するのは非常に難しい。それが上場企業なら、そのことをウォール街に説明するのは非常に難しい」と、同氏は語る。

Googleとのデータ共有

Google広告のバイイング・分析・測定担当バイスプレジデントおよびゼネラルマネージャーを務めるビディヤ・スリニバサン氏は、9月27日付けのブログ投稿のなかで次のように述べている。Googleがラストクリックアトリビューションの代わりに導入しようとしているモデル化された測定技術は「高度な機械学習を用いることで、各マーケティングタッチポイントが特定のコンバージョンにどのように貢献したのかを、ユーザーのプライバシーを尊重しつつ、より正確に把握できる」。しかし、Googleは、その膨大な規模のユーザーベースに関する、自社所有の識別可能なデータを頼みの綱として、このモデル化された測定アプローチの精度の改善を試みている。同社は、推定コンバージョントラッキングの仕組みについての文書のなかで、次のように述べている。「Googleの質の高いログインユーザーベースにより、Cookie などの識別子を使用しなくても高度なモデリングを行うことが可能になっている。オプトインユーザーの代表的な行動データに基づいて、多様な場面におけるユーザーの行動を推測できる」。

その一方で、サードパーティCookieが消え去り、Appleがデータプライバシーに対する取り締まりを強化しつつあるいま、Facebookなどの企業と同じくGoogleもまた、広告主がユーザーに対するトラッキングとリターゲティングをウェブサイト全体で実施し、キャンペーンのパフォーマンスを直接測定できる体制の維持を試みている。Googleは自社のモデル化された測定が持つプライバシー関連の側面を強調しているが、同社がめざしているのは、さらに多くの顧客データを広告主から集めることなのだ。その目的は、ログインユーザーを直接測定するためだけでなく、自社の入札モデルと測定モデルにデータを供給するためでもある。事実、Google自らが、コンバージョントラッキングに関する文書のなかで「測定可能なデータが多いほど、モデルの品質は向上する」と述べており、Googleによる測定可能データ収集への協力を広告主に呼びかけている。その方法のひとつが、ファーストパーティの顧客データ(メールアドレスや名前、住所、電話番号など)を広告主に提供させる「拡張コンバージョン」測定プロセスだ。

Googleの広報担当者から話を聞いたところ、拡張コンバージョンは、ユーザーが承諾したうえで広告主に提供されたデータのみを使用するものであり、プライバシー重視の測定ソリューションに対する同社のコミットメントにも沿っているという答えが返ってきた。

だが、一部の人々はこのコミットメントを疑問視している。「以前なら、このような形でユーザーデータをGoogleと共有することはできなかった」と、ディベチャ氏は語る。「プライバシーの観点から見れば、拡張コンバージョンには一歩後退の感がある」。

Googleの推定アプローチは、測定の簡略化を促してくれる。「信頼できるデータ駆動型モデルを構築するのに十分なデータを持っていない小規模の広告主にとっては、特にそうだ」と、カスタマーデータプラットフォーム企業のレッドポイント・グローバル(Redpoint Global)でシニアプロダクトマーケティングマネージャーを務めるスティーブ・ジスク氏は語る。「だが、この『簡略化』は顧客と同じぐらいGoogle自身の役にも立つ。より大きなデータセットをGoogleのアルゴリズムに提供するからだ」。

Googleに頼って精密なモデルを構築し、自社広告を測定している広告主もまた、これらのモデル化された数字を信頼しなければならない。究極のパフォーマンスバロメーターとしてGoogleに目を向けるときには、広告主は注意を怠ることなく、ほかの情報を用いてその正しさを確かめる基本手段も検討すべきだと、リチャードソン氏は話す。

ジンク氏は次のように語る。「カスタマージャーニーのさまざまな側面は、どのようにコンバージョンに貢献しているのか? 実際のカスタマージャーニーとコンバージョンは、どのような仕組みでGoogleのモデルに正しく反映されるのか? これらをGoogleが示すことで透明性が高まれば、それが理想だ」。

[原文:Why some advertisers could be reluctant to get on board with Google’s modeled measurement train

KATE KAYE(翻訳:ガリレオ、編集:長田真)