トピカルズ(Topicals)のCEOで共同設立者のオーラマイド・オロウ氏は、ソーシャルメディアプラットフォームを「議論の場」と位置づける。これを念頭に、オロウ氏はここ数カ月に渡り、自社のTwitterアカウントを活用して、顧客に対し製品の原料に関する啓発を実施してきた。
先日、立ち上げから間もないスキンケアブランド、トピカルズ(Topicals)は、誰の口の端にも上らないようなテーマについて複数回ツイートした。そのテーマは「須毛部仮性毛包炎(剃毛による、持続的な刺激が炎症を起こす毛髪疾患)」だ。同社のツイートによると、PFBとも呼ばれるこの皮膚疾患は「硬毛が生える部位に生じるもの」だという。また、そのスレッドは硬毛の定義(頭皮、顔面、脚、腕、陰部に生える毛)や、PFBの原因(ホルモン)についても説明している。
15件のツイートから成るこのスレッドは、須毛部仮性毛包炎について深掘りし、(本稿の執筆時点で)188件の「いいね」、49件のリツイート、2件の引用ツイートを獲得しているが、ハッシュタグは一切使っていない。このキャンペーンはトピカルズのソーシャルメディア戦略の好例であり、現在その大部分を担っているがTwitterだ。
トピカルズのCEOで、共同設立者のオーラマイド・オロウ氏は、ソーシャルメディアプラットフォームを「議論の場」と位置づける。これを念頭に、オロウ氏はここ数カ月に渡り、自社のTwitterアカウントを活用して、顧客に対しプロダクトの原料に関する啓発を実施してきた。また、Twitterは同社にとって、コミュニケーションの手段だけではなく、直接的な収益増の推進力にもなっている。オロウ氏はSNSの追跡機能を搭載したShopify(ショッピファイ)のダッシュボードを見ながら、「ある日のTwitter経由の売上は、全体の70%を占めていた」と説明する。なお、全期間の平均値は50%前後だという。現在、トピカルズのTwitterアカウントのフォロワーは、昨年6月の数千人から、現在は1万200人をやや上回るまでに増加しているという。
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トピカルズは、これまでにない新しいブランドだ。23歳の有色人種の女性ふたりが2年前に思い描いたブランドは、今日、湿疹をはじめとする、ごく一般的だがときに恥ずかしい思いをさせられる皮膚疾患にフォーカスし、スキンケア製品を開発している。同社は昨年7月、ベンチャーキャピタルのレアラーヒポー(Lerer Hippeau)や、NetflixのCMOを務めるボゾマ・セイントジョン氏らから100万ドル(約1億円)を調達。この8月には、トピカルズ初のプロダクトを、自社サイトとノードストロム(Nordstrom)で発売し、それらはほんの数日で完売した。
売上の70%を占める日も
Twitterを主要な成長エンジンとして活用することは、とくに美容・スキンケア業界の企業にとっては興味深い決断だ。
美容・スキンケア業界はいま、成長分野であることは間違いない。実際、米市場調査会社のNPDグループ(NPD Group)は今月、スキンケアはコロナ禍においても回復力の高い美容カテゴリーのひとつであり、実際、パンデミックの勃発以降も、その消費量が増えていると報告している。しかし、美容・スキンケア業界におけるブランドコンテンツの大半は、Twitterではなくインスタグラムに依存している。ビジュアル重視のプラットフォームであることを考えれば、それも想像に難くない。
だからこそ、Twitterの魅力が際だつとオロウ氏は見ている。「拡散力では、インスタグラムよりもTwitterの方が上だ」。Twitterでは、ひとつのテーマに特化しているアカウントがそれほど多くない。またTwitterは、インスタグラムの投稿が持つ、ピカピカに磨き抜かれた化粧板のような美しさはなく、素朴で飾り気がないが特徴だ。「自分のページで何をどうリツイートしようと、見かけについてあれこれいう人はいない」。
しかし、Twitterでスキンケアを話題にしているブランドは、トピカルズだけではない。SNSには、スキンケアに関する投稿が溢れており、多くのエキスパートや売り出し中のインフルエンサーも、Twitterを活用してプロダクト情報や使い方を発信している。ソーシャルリスニングツールのブランドウォッチ(Brandwatch)のデータによると、スキンケアはもともと、Twitterで人気の高いトピックではあるが(2018年1月以来、スキンケアへのメンションは1400万件を超えている)、この4月以降、さらにその勢いは増しているという。
また、トピカルズのユーザー属性はZ世代が中心だ。彼らの多くは、TwitterよりもTikTokとインスタグラムをフォローする年齢層だが、にも関わらず、トピカルズはTwitterでターゲットユーザーのエンゲージメントを獲得している。オロウ氏はその理由について、「飾らない対話を求める人が増えているのだろう」と説明する。
公開性を重視した戦略
とはいえ、Twitterを活用して新しいブランドを育てるというのは、あまり前例がない。D2C戦略の専門家であるアジャ・シンガー氏はそう指摘する。多くの場合、リーチを伸ばしたいブランドにとってのメインチャネルは、インスタグラム、場合によってはピンタレスト(Pinterest)だと同氏はいう。「Twitterの名前が上位に上がることはほとんどない」。
しかし、トピカルズはエンゲージメントの件数を伸ばしている。ブランドウォッチによると、同社はこの6月以来、1万8000件以上のメンションを獲得しており、そのうち4000件以上は9月に集中している。ブランドウォッチで、コミュニケーションディレクターを務めるケラン・テリー氏は、米DIGIDAYの姉妹サイト、モダンリテール(Modern Retail)に宛てた電子メールでこう述べる。「トピカルズは、(Twitterを活用して)自身に関するメンションを増加させたり、センチメントを構築している。実際同社は、Twitterにおける美容・スキンケア関連のやり取りで、もっともメンションされるアカウントで、これはあまりないケースだ。というのも、多くのブランドはオンラインのオーディエンスをうまく管理することができない」。
トピカルズのTwitter戦略は、主に会話と啓発にフォーカスしている。顧客は頻繁に質問を投稿し、トピカルズはその質問に対する回答を投稿する。現在同社は、こうした啓発活動を推進するにあたり、専属の責任者をアサインしている(オロウ氏はこの人物について「スキンケア分野の主要なオピニオンリーダー」と説明している)。
「インスタグラムでは、顧客との対話のほとんどは、ダイレクトメッセージで行われる」とシンガー氏。「インスタグラムでもコメントは見られるが、率直で中身のある会話は、水面下でおこなわれる」。一方Twitterでは、率直な意見も、ダイレクトメッセージではなくタイムラインでやり取りされる。こうした点から、トピカルズの戦略は見た目を取り繕うよりも、公開性を重視したものになっている。
Twitterだけではない
オロウ氏は以下のように続ける。「もちろん、トピカルズがフォーカスするチャネルはTwitterだけではない。Twitterは立ち上げ当初から、数カ月間に注力してきたチャネルにすぎない」。同社は創業当初、インスタグラムも試してみたが、トピカルズにはTwitterのほうがフィットすると判断したのだという。とはいえ、TikTokもインスタグラムも照準の範囲内ではあるようだ。「その辺ついては、現在計画している最中だ」とオロウ氏は明かす。「TikTokは、とりわけZ世代の自己表現に対する熱量が、今後さらに高まる可能性があることを教えてくれた」。
とはいえオロウ氏は、Twitterで達成したエンゲージメントに満足しており、このまま好調ぶりが続くことを願っているという。「重要なのは、ソーシャルメディアチャネルを自社の顧客の行動様式にフィットさせることだ」と同氏は述べる。「トピカルズは、しばしば美容のスタンダードを茶化したりからかったりするが、インスタグラムのユーザーは堅くて生真面目だ」。
[原文:Why skin-care startup Topicals uses Twitter as a growth engine]
Cale Guthrie Weissman(翻訳:英じゅんこ、編集:村上莞)