多くのゲーム開発企業が、自社タイトルを、それに関心を抱く広告主のためのマーケティングの場へと変えるなかで、ライアットゲームズ(Riot Games)はより控えめなアプローチを取り、ゲーム内での直接的なブランド統合よりも他の形の広告インベントリを優先している。
この数年間、エピックゲームズ(Epic Games)やアクティビジョン・ブリザード(Activision Blizzard)など、さまざまなパブリッシャーが、ゲーム内広告インベントリーを提供し、こうしたトレンドを浮き彫りにしてきた。特に、ロブロックス(Roblox)やエピックゲームズが支持する実験的なタイプを通じては、コカ・コーラ(Coca-Cola)やアメリカン・イーグル(American Eagle)が、独自のバーチャル世界を構築してきた。
だが、ゲームを取り巻くブランド活動の大成功にもかかわらず、ライアットゲームズはおおむね、「リーグ・オブ・レジェンド(League of Legends、以下LoL)」や「ヴァロラント(VALORANT)」のような人気作にブランドを直接統合するのを避けてきた。これまでのところ、唯一の例外は、2021年のルイ・ヴィトンとのコラボレーションで、プレイヤーは、ルイ・ヴィトンのロゴが入った限定版のゲーム内キャラクタースキンをダウンロードできた。そして、この決定でさえも、ライアットゲームズの一部の意思決定者のあいだで反発を招いた。
ライアットゲームズはなぜ距離を置くのか
「ライアットゲームズの全員がそれについてすばらしいと思っているわけでも、理解しているわけでもない」と、ライアットゲームズでグローバルeスポーツパブリッシングを担当するバイスプレジデントのダン・サットン氏は話す。
「ルイ・ヴィトンは、それがいかなるものかを十分に理解していた中国と欧州という2地域では、かなり魅力的なブランドだ。他のいくつかの地域は、どういうものなのかを理解していなかった。『なぜこんなことをするのか?』といった感じだ」。
ライアットゲームズがゲーム内でのブランド統合に深入りしたがらないのには、いくつかの背景要因がある。
ライアットゲームズがさまざまな収益源を試すなかで、財務状況がそうした大きな決定の緩衝材となるのに寄与している。2022年に初めて四半期収益が減少したが、ライアットゲームズはまだ、中国の巨大コングロマリット、テンセント(Tencent)の支援を受け、eスポーツリーグは、アクティビジョン・ブリザードのような競合企業のものよりも多くの有名な広告主を抱えている。
今のところ、ゲーム内へのブランド統合により積極的に移行しているゲーム開発企業の一部とは異なり、財務状況は火の車という状況ではない。 [続きを読む]
多くのゲーム開発企業が、自社タイトルを、それに関心を抱く広告主のためのマーケティングの場へと変えるなかで、ライアットゲームズ(Riot Games)はより控えめなアプローチを取り、ゲーム内での直接的なブランド統合よりも他の形の広告インベントリを優先している。
この数年間、エピックゲームズ(Epic Games)やアクティビジョン・ブリザード(Activision Blizzard)など、さまざまなパブリッシャーが、ゲーム内広告インベントリーを提供し、こうしたトレンドを浮き彫りにしてきた。特に、ロブロックス(Roblox)やエピックゲームズが支持する実験的なタイプを通じては、コカ・コーラ(Coca-Cola)やアメリカン・イーグル(American Eagle)が、独自のバーチャル世界を構築してきた。
だが、ゲームを取り巻くブランド活動の大成功にもかかわらず、ライアットゲームズはおおむね、「リーグ・オブ・レジェンド(League of Legends、以下LoL)」や「ヴァロラント(VALORANT)」のような人気作にブランドを直接統合するのを避けてきた。これまでのところ、唯一の例外は、2021年のルイ・ヴィトンとのコラボレーションで、プレイヤーは、ルイ・ヴィトンのロゴが入った限定版のゲーム内キャラクタースキンをダウンロードできた。そして、この決定でさえも、ライアットゲームズの一部の意思決定者のあいだで反発を招いた。
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ライアットゲームズはなぜ距離を置くのか
「ライアットゲームズの全員がそれについてすばらしいと思っているわけでも、理解しているわけでもない」と、ライアットゲームズでグローバルeスポーツパブリッシングを担当するバイスプレジデントのダン・サットン氏は話す。
「ルイ・ヴィトンは、それがいかなるものかを十分に理解していた中国と欧州という2地域では、かなり魅力的なブランドだ。他のいくつかの地域は、どういうものなのかを理解していなかった。『なぜこんなことをするのか?』といった感じだ」。
ライアットゲームズがゲーム内でのブランド統合に深入りしたがらないのには、いくつかの背景要因がある。
ライアットゲームズがさまざまな収益源を試すなかで、財務状況がそうした大きな決定の緩衝材となるのに寄与している。2022年に初めて四半期収益が減少したが、ライアットゲームズはまだ、中国の巨大コングロマリット、テンセント(Tencent)の支援を受け、eスポーツリーグは、アクティビジョン・ブリザードのような競合企業のものよりも多くの有名な広告主を抱えている。
今のところ、ゲーム内へのブランド統合により積極的に移行しているゲーム開発企業の一部とは異なり、財務状況は火の車という状況ではない。
「プレイヤー体験こそが聖域」
財務状況の如何に関わらず、ゲーム内へのブランド統合に対するライアットゲームズの慎重なアプローチの最も大きな背景要因となっているであろう要因は、同社がプレイヤー体験を大事にしている点だ。「LoL」や「ヴァロラント」は膨大な数のプレイヤーを集めており、これらのゲームのファンタジー世界を妨げるものは何であれ、そうした微妙なバランスを崩しかねない。
「我々にとって、それは聖域だ。プレイヤーが当社を信頼しているのも、それが理由だ。当社がブランドパートナーを断ることが多いのは、プレイヤーにとって意味をなさないかもしれないからだ」と、同社のグローバルパブリッシング担当プレジデント、ライアン・クロスビー氏は語る。
「適切な意図を持っている適切なブランドを見つける世界もあり得るが、無分別に飛びこもうとは思わない。徐々に踏み入れることになると思う」。
eスポーツイベントでの成功
ライアットゲームズが他社と比べてゲーム内でのブランド統合をあまり行わないのには、知名度が高いeスポーツ事業のような多様なインベントリーという別の要因も影響している。ロサンゼルスで8月に開催された「ヴァロラント」選手権の会場は、マスターカード(Mastercard)のブランディングが目立ったのと同時に、特に盛り上がりを見せた場面では、レッドブル(Red Bull)やAmazonプライムのようなブランドの名が目に付いた。
「ライアットゲームズは、eスポーツのインベントリー販売に注力している。『LoL』のイベントではリフト(Rift)のバナー広告が掲載される。その方が理にかなっているとは思わないか? コミュニティのファンは、それを好ましく思わないかもしれないが、そうした提携が大きな取引だと理解している」と、REV/XPでシニアバイスプレジデントを務めるクリス・マン氏は指摘する。
ゲーム内でのブランド統合に対するライアットゲームズの現在のアプローチは、いつまでも続くものではないだろう。ブランドはゲームを、多くの、そして多様な消費者にリーチする手段と見なす傾向が強まっており、ライアットゲームズが好むと好まざるとにかかわらず、同社のゲームへのゲーム内統合を求め続けるだろう。
新しい体験を生み出すパートナーを求める
それに、ライアットゲームズのゲーム内へのブランド統合は成功している。ライアットゲームズがDIGIDAYと共有した社内データによると、ルイ・ヴィトンのロゴが入った2021年のキャラクタースキンのひとつである「True Damageセナプレステージエディション(True Damage Senna Prestige Edition)」スキンは、「LoL」の有名キャラクタースキンとして、これまでで最も高い評価を得たという。
「何がプレイヤーの心に響くのか、どうすればそれがプレイヤー体験やゲーム体験に意味をもたせることができるのかを考えたい」と、ライアットゲームズのバイスプレジデント兼ゲームパブリッシング担当責任者のサラ・シュッツ氏は語る。
「共に何かを共同で創造できるパートナーを探しており、取引が目的ではない。むしろ、『どんな新しい体験を一緒に生み出せるだろうか?』といった感じだ」。
Alexander Lee(翻訳:矢倉美登里/ガリレオ、編集:分島翔平)