大手小売業者が店舗受け取りをさらに重視しつつあることから、eコマースに特化した一部の業者のなかにも、 クリックアンドコレクトなど 宅配以外の選択肢を広げることを検討している企業が現れている。
こちらは、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です
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大手小売業者が店舗受け取りをさらに重視しつつあることから、eコマースに特化した一部の業者のなかにも、宅配以外の選択肢を広げることを検討している企業が現れている。
eBayは11月、英国で同社のサードパーティ出品者は今後、顧客の自宅まですべての商品を直接配送する必要がなくなったと発表した。オンラインマーケットプレイスである同社は、受け取りロッカーネットワークであるインポスト(InPost)と提携。このパートナーシップにより、出品者は商品をインポストのロッカーに預けておけば、インポストが商品を顧客の自宅か、自宅近くの受け取りロッカーまで配送してくれるようになる。インポストのネットワークには2500の受け取りロッカーがあり、多くはガソリンスタンド、あるいはテスコ(Tesco)やリドル(Lidl)といった大手食料品店の近くに置かれている。
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インポストとのパートナーシップは、小包運送業者と交渉できるほどの数量の商品を持たない趣味のeBay出品者を対象としているが、これはマーケットプレイスがオンラインに特化したブランドや小売業者に対して、新たな引き渡し方法の選択肢を与えようとする試みの例でもある。Amazonに加えて、超格安オンラインマーケットプレイスのウィッシュ(Wish)も、過去2年間に現地での受け取りプログラムを追加した。
これらのサービスの増加は、クリックアンドコレクト現象の増加と関連している。ファイナンシャルタイムズ(Financial Times)のレポートによれば、今年の米国におけるオンライン注文の20%近くは店舗での受け取りで、昨年の16.8%よりも増加している。eBayはウィッシュや多くのeコマースサービスと同様に、このモデルをはるかに広範囲のブランドで使用可能にすることをめざしている。これには、独自の実店舗を持たないブランドも含まれる。
店舗受け取りはこの2年間で急速に成長したが、これらの受け取り注文のほとんどは依然として少数の大手企業に流れている。2020年に、ウォルマート(Walmart)、ホームデポ(The Home Depot)、ベストバイ(Best Buy)、ターゲット(Best Buy)、ロウズ(Lowe’s)、メイシーズ(Macy’s)、ノードストローム(Nordstrom)は合計で米国におけるクリックアンドコレクトの売上すべての64%を占めていた。このような大規模小売業者の場合、クリックアンドコレクトは膨大な額のコスト削減となる。ターゲットは昨年、顧客が商品を自社店舗で受け取った場合、顧客の自宅まで配送するよりもコストが90%削減されると語っていた。
オンラインプラットフォームは新しいフルフィルメントオプションをテスト中
今になって、eコマースのマーケットプレイスもこの流れに加わりつつある。たとえば、超格安eコマースマーケットプレイスのウィッシュは、このプログラムでは、ウィッシュで購入したオンライン限定商品の受け取りセンターとして小規模事業者が登録できるウィッシュローカル(Wish Local)プログラムを推進してきた。
顧客はウィッシュで商品を購入し、現地のウィッシュローカルのパートナーストアに商品が到着すると通知を受け取る(2021年4月時点で、ウィッシュは全世界に5万を超えるパートナー店舗があると発表していた)。ウィッシュの小売パートナーはパッケージごとに0.50ドル(約57円)を受け取り、一方でウィッシュは、顧客が受け取りを選択するごとに配送コストを20%削減できると述べていた。
Amazonまでもが、自社のクリックアンドコレクトのサービスを小規模事業者や小売業者に広げるため動きつつある。同社は10月、ローカルセリング(Local Selling)プログラムを展開することを公表した。このプログラムの一環として、サードパーティの出品者はフルフィルメントオプションとして店舗受け取りを選択することができる。現在のところ、このプログラムは、eコマースに特化したサードパーティの出品者よりも、すでに実店舗を保有している出品者が主な対象になっている。
これに対して、eコマースのプラットフォーム企業であるビッグコマース(BigCommerce)は、ランデムリテール(RandemRetail)などのプラグインにより、実店舗を持つブランドが自社ウェブサイトに受け取りオプションを追加できるようにしている。ビッグコマースの収益成長担当バイスプレジデントを務めるシャロン・ジー氏は、クリックアンドコレクト用のプラグインの採用はビッグコマース全体として「着実に増加している」と語る。出品者は消費者が購入した商品を受け取るために可能な限り各種の方法を提供しようと試みている。「このような種類のソリューションを提供することでコンバージョンの増加を見込めるからだ」と同氏は述べている。
eコマース成長プラットフォームのプロフィテロ(Profitero)の戦略担当シニアバイスプレジデントを務めるキース・アンダーソン氏もこのアイデアに賛同している。同氏によれば、小規模事業者で受け取りを行えるようにするのは、「商品を自宅まで配達してもらうのに不安を感じるような顧客がいるかどうかという問題にほかならない」という。
オンラインブランドの参入
eコマース専用ブランドにより重点を置いているプログラムもある。たとえばFedExはFedExホールドアットロケーション(Hold at Location)というプログラムを提供。このプログラムでは、顧客が注文した商品を有料で直接自宅に発送してもらう代わりに、FedExの拠点で受け取ることを選択できる。ソフトウェア会社のシッパーHQ(ShipperHQ)など一部のテクノロジーシステムは、FedExホールドアットロケーションと統合されており、顧客がショッピファイ(Shopify)やビッグコマースの店舗でチェックアウトする際にFedExホールドアットロケーションをオプションとして選択できるようにしている。
商業施設への配送は、それぞれの顧客の自宅まで商品を運ぶより、消費者と企業の両方にとって確かにコストの節約になる。多くの配送会社はラストマイル配送について住宅地追加料金を徴収する。ほとんどの住宅地追加料金は、注文ごとに4ドル(約456円)前後だ。特に安価な商品の場合、配送コストが4ドル減少するかどうかは、顧客が注文を行うかどうかを左右する可能性がある。
宅配サービスの新興企業であるビアデリバリー(Via.Delivery)も、より多くのオンライン専業ブランドで受け取りモデルを使用できるよう試みている。ビアデリバリーはショッピファイの店舗とチェックアウトを統合することで、消費者が近くの実拠点での受け取りを選択できるようにしている(同社はこの方法が「150を超える」店舗で使用できるとしている)。
ビアデリバリーの創設者であるミッチェル・ニキーチン氏は、同社には顧客が注文した品を受け取れるパートナーの実店舗が2万3000店あると述べている。これまでのところ、これらの受け取り場所のほとんどは、ウォルグリーン(Walgreens)、FedExのオフィスセンターや配送センター(FedEx Office & Ship Centers)など企業向けに受け取りサービスを提供していた大手チェーン店だが、ビアデリバリーは、注文の受け取りを引き受けることで客足を増やしたいと考えている小規模店舗との契約を増やすことに取り組んでいると語る。ニキーチン氏は、いくつかの企業に対して、店舗で受け取った荷物1個につき0.75ドル(約85.5円)以下の少額を定額で支払うことを提案しているという。
現在のところ、ビアデリバリーのクライアントはすべて自社の商品を実店舗に配送することを選択してきた。そして、商業施設に配送することで確かに住宅地の追加料金を節約することはできるが、最終的には地域をまたいだ配送料金を支払う可能性があることに変わりはない(ビアデリバリーは自社独自の配送サービスも提供しているが、今までのところ契約したクライアントはない)。
クリックアンドコレクトがブランドにとってどの程度の意味を持つかは、そのブランドが販売する商品とそのカテゴリーに強く左右される。ジー氏は次のように述べている。「コーヒーフィルターのようにマージンが非常に少ない商品のマージンを高く販売する場合、受け取りロッカーと顧客の自宅への配送の経済が大きく異なるものになる。これは完全に、マージンの大きさで決定されることだ」。
[原文:Why online marketplaces are trying to bring click-and-collect to small businesses]
Michael Waters(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)