複数カテゴリーに携わる小売企業は、多くの買い物客を引き寄せるため、ペット・カテゴリーを重視する傾向が強まっている。
ホームセンター大手のロウズ(Lowe’s)は、ペット用品店のペトコ(Petco)とのショップ・イン・ショップ(店舗内ストア)のパートナーシップを拡大することを発表した。これにより、年末までに300店舗近いロウズの店舗で、動物ケアおよびペット用品の販売が増えることになる。また、コールズ(Kohl’s)は直近の決算説明会で、いくつかの店舗でテストした上で、こうしたペットカテゴリーの専用エリアを拡大したと発表した。一方でウォルマート(Walmart)は、近年になってペットカテゴリーにより注力しており、2019年には一部の店舗に動物クリニックを設置するようになった。今年は、ウォルマートプラス(Walmart+)のメンバー特典としてバーチャル獣医に無料アクセスできるようにし、ニュージャージー州のシコーカスや、ルイジアナ州ハラハンの店舗を含め、ペット用品売り場を拡大した店舗を全国に展開している。
小売企業がマーチャンダイジング戦略を見直し、品揃えの規模を適正化するのは珍しいことではない。しかし、消費者が特にアパレルやホーム用品への裁量支出を切り詰めている今、一部の小売企業は人々が店舗を頻繁に訪れるよう、ペット用品の売り場面積を増やしている。小売企業の経営陣は、すでに売上が増加し、取引規模も増えたとしているが、ペットのブームがいつまで続くかはわからない。
この記事は、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です。
複数カテゴリーに携わる小売企業は、多くの買い物客を引き寄せるため、ペット・カテゴリーを重視する傾向が強まっている。
ホームセンター大手のロウズ(Lowe’s)は、ペット用品店のペトコ(Petco)とのショップ・イン・ショップ(店舗内ストア)のパートナーシップを拡大することを発表した。これにより、年末までに300店舗近いロウズの店舗で、動物ケアおよびペット用品の販売が増えることになる。また、コールズ(Kohl’s)は直近の決算説明会で、いくつかの店舗でテストした上で、こうしたペットカテゴリーの専用エリアを拡大したと発表した。一方でウォルマート(Walmart)は、近年になってペットカテゴリーにより注力しており、2019年には一部の店舗に動物クリニックを設置するようになった。今年は、ウォルマートプラス(Walmart+)のメンバー特典としてバーチャル獣医に無料アクセスできるようにし、ニュージャージー州のシコーカスや、ルイジアナ州ハラハンの店舗を含め、ペット用品売り場を拡大した店舗を全国に展開している。
Advertisement
小売企業がマーチャンダイジング戦略を見直し、品揃えの規模を適正化するのは珍しいことではない。しかし、消費者が特にアパレルやホーム用品への裁量支出を切り詰めている今、一部の小売企業は人々が店舗を頻繁に訪れるよう、ペット用品の売り場面積を増やしている。小売企業の経営陣は、すでに売上が増加し、取引規模も増えたとしているが、ペットのブームがいつまで続くかはわからない。
安定した成長を見せるペット・カテゴリー
「まだ結論には早いものの、これらの店舗では、1回の買い物あたりの購入量が増大しており、顧客は、利便性とともに、必要な訪問回数を減らせることを評価している」と、ロウズのマーチャンダイジング担当エグゼクティブバイスプレジデントを務めるビル・ボルツ氏は、ペトコとのショップ・イン・ショップのパートナーシップについて決算説明会で語った。
ロウズとペトコのショップ・イン・ショップのパートナーシップはもともと2022年の前半に約14店舗で開始した。ショップ・イン・ショップのパートナーシップにより、買い物客はペトコのプライベートブランドと、バークトイズ(Bark Toys)やブルーバッファロー(Blue Buffalo)といったペット用品のナショナルブランドが手に入るようになる。
ペットカテゴリーは従来から顧客が頻繁に訪れる傾向があると、ガートナー(Gartner)のディレクターアナリストを務めるブラッド・ジャシンスキー氏は述べる。「ペットカテゴリーは、それを追加しようとする多くの小売企業やその他の企業にとって、季節性が強い、またはなんらかの周期的な傾向があるほかのカテゴリーとのバランスを取るための手段になっている。家具やホーム用品は売上が周期的に増減する傾向があるが、ペットカテゴリーは全体的に安定した成長を見せる傾向がある」と同氏は述べる。
パンデミックでのペット飼育増加が追い風に
売上が減少しつづけるなか、一部の小売企業はたしかに安定した成長を追い求めている。再建計画真っ最中の百貨店コールズは、第2四半期に純売上が4.8%減少したことを発表した。コールズは収益のうちどれだけがペット商品からのものかを明確にしていない。しかし、一部の店舗で増設したペット用品売り場によって、ペットカテゴリーが「第2四半期の売上の成績を堅実なものにした」と述べている。
「昨秋に50店舗で行ったテストが成功したので、ペットカテゴリーの専用売り場をチェーン全体にわたって拡大した。この分野では、犬用ベッド、犬猫用アパレル、ペット用玩具などを販売している」と、コールズのCEOを務めるトム・キングスベリー氏は投資家やアナリスト向けに行われた決算説明会で述べた。
パンデミックのあいだにペットの飼育数が急増した後、ペット用品や獣医サービスへの需要が高まった。いくつかの小売企業は、ペットの飼い主のためのワンストップショップを提供することで、このトレンドを利用している。たとえばウォルマートは2021年以降ペット商品・サービスの取り扱いを積極的に拡大しており、ピュアバランス(Pure Balance)というプレミアムなペットフードのプライベートブランドまで立ち上げた。
拡大するカテゴリー、縮小するカテゴリー
ほかのマーチャンダイジングへの投資と同様に、ペットカテゴリーについても過度に楽観視することはリスクでもある。ピュブリシスサピエント(Publicis Sapient)の北米担当の消費者向け商品業界リーダーを務めるリズ・パパサクラリョー氏は、ペット商品を取り扱う場所を増やすため、小売企業はほかのカテゴリーの品揃えを縮小せざるを得ないと語る。
「ペットセクションを大きくするために、小売企業がどの分野を切り捨てるのかは興味深いところだ」とパパサクラリョー氏は述べる。買い物客も、ペット商品を優先してほかのカテゴリーを切り捨てた小売企業に対して失望するする可能性もあると同氏は付け加えた。「ほかのカテゴリーを軽視することで、そのカテゴリーのトラフィックを失うかもしれない」。
小売企業は今後数カ月、顧客のトレンドの変化に適応しながら、ほかにどのようなニッチなカテゴリーに成長の余地があるかを模索するようになるだろうと、アナリストは述べている。小売企業によるペットへの投資が実を結べば、ペットの健康やウェルネスといったカテゴリーを追加し、提供する商品やサービスをさらに多様化するかもしれないと、パパサクラリョー氏は述べている。
「小売企業がポートフォリオの多様化についての検討しはじめるのに、うってつけの実験の場だ」と、同氏は述べている。
[原文:Why non-pet retailers like Lowe’s and Kohl’s are making more room for pet products in stores]
Maria Monteros(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Petco