アーバンアウトフィッターズは、もともと若年層向けのファッションリテーラーだが、デジタルネイティブブランドと協力し、ビューティ&ウェルネス関連アイテムの品揃えを充実させている。7月は、男性向けヘルスケアのDTCブランド、ヒムズのスキンケア製品とウェルネス製品の取り扱いをアーバンアウトフィッターズのECで開始した。
米アーバン・アウトフィッターズ(Urban Outfitters)が、D2Cブランドと提携し、アパレル以外の品揃えを拡大している。
同社はもともと、若年層向けのファッション小売業として知られているが、デジタルネイティブブランドと協力し、ビューティ&ウェルネス関連の品揃えをますます充実させている。7月は、メンズヘルスケアのD2Cブランド、ヒムズ(Hims)のスキンケア製品とウェルネス製品の取り扱いを同社ECで開始した。ヒムズの女性版ブランド、ハーズ(Hers)の取り扱いも数カ月以内にスタートする予定だ。
ビューティ&ウェルネスへの関心が高いZ世代
この数年間、同社の品揃えは、おもにに独立系のメイクアップブランドに集中していた。現在もアーバン・アウトフィッターズで販売している著名な美容ブランドに、ベネフィットコスメティクス(Benefit Cosmetics)、サンデーライリー(Sunday Riley)、アナスタシアビバリーヒルズ(Anastasia Beverly Hills)などがある。しかし最近、同社の美容部門が、セクシャルウェルネスのモード(Maude)や、口腔ケアのスポットライトオーラルケア(Spotlight Oral Care)、月経カップのソルト(Saalt)といったD2Cブランドでトレンドとなっているスキンケア製品やウェルネス製品の取り扱いを増やしている。加湿器ブランドのキャノピー(Canopy)は、アーバン・アウトフィッターズのECでテスト販売も行った。こうしたブランドが、アーバン・アウトフィッターズでの販売に興味を持ったおもな理由のひとつとして、同社の購買層が、ほかの取り扱い店候補よりも若いことを挙げている。
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アーバン・アウトフィッターズはこの2年間、健康に焦点を当てたブランドを実店舗の棚やECに少しずつ追加してきた。同時に、ブランド側がアーバン・アウトフィッターズのECで商品を販売しやすいように、ブランド向けマーケットプレイスも構築した。
ブランドとのパートナーシップ戦略について、アーバン・アウトフィッターズからのコメントは返ってこなかった。しかし、同社のZ世代の顧客が、従来のメイクアップアイテムだけではなく、より多様なビューティ&ウェルネス製品への関心を高めていることが、現在の商品政策につながっているようだ。同社でマーチャンダイジングを担当するエグゼクティブ・ディレクターのジェナ・トレーシー氏は、ヒムズ・アンド・ハーズ(Hims & Hers)の取り扱いを発表した際、「アーバン・アウトフィッターズの顧客と、ヒムズ・アンド・ハーズのようにパーソナライズされたヘルス&ウェルネス製品に興味を持つデジタルネイティブな消費者は、互いに大きな相乗効果をもたらすだろう」と話した。
顧客基盤を生かしたパートナーシップ
ヒムズ・アンド・ハーズの最高執行責任者であるメリッサ・ベアード氏によると、提携が実現したのは、アーバン・アウトフィッターズの顧客の多くがすでにD2Cブランドの商品を購入したことがあり、ヒムズ・アンド・ハーズの顧客とも重なるからだという。また今回の提携により、同ブランドは、アーバン・アウトフィッターズの顧客に、自分たちの製品と遠隔医療サービスを提供することができるようになった。取り扱い開始にあたり、まずはヒムズのスキンケアやフレグランス、健康関連商品のなかから10点を販売するが、近いうちに、ヒムズ、ハーズ両ブランドの商品をアーバン・アウトフィッターズのECで取り扱う計画だ。
また、数年前からアーバン・アウトフィッターズと提携しているデジタルネイティブなブランドに、セクシャルウェルネスブランドのモードがある。モードは2019年春、アーバン・アウトフィッターズのECと一部の店舗でバイブレーターラインを発売したが、創設者兼CEOのエバ・ゴイコチェア氏によると、今年の初めに、アーバン・アウトフィッターズの顧客向けに、限定カラーを追加発売したのだという。
このパートナーシップによって、モードは新しい年齢層をターゲットとすることができた。アーバン・アウトフィッターズについてゴイコチェア氏は、「顧客がより若いミレニアル世代とZ世代に集中しているので、非常に興味深いパートナーだ」という。対照的に、モードの自社ECを利用するミレニアル世代とZ世代は、全体の約25%と少ない。
同氏は、アーバン・アウトフィッターズがセクシャルウェルネス製品の品揃えを早い段階で増やした小売店のひとつであり、「その後は、ほかの小売店も追随している」という。たとえばウォルマートはこの1年で、ヒムズの競合でもあるロー(Ro)や、植物由来のフェミニンケア製品を販売するザ・ハニーポット(The Honey Pot)など、セクシャルウェルネスに特化したブランドの商品を数多く取り扱うようになった。
「ニッチさ」が生む、大きな相乗効果
歯のホワイトニング製品を販売するスタートアップ、スポットライトオーラルケア(Spotlight Oral Care)の共同創業者兼CEOのヴァネッサ・クリーブン氏も、アーバン・アウトフィッターズが美容と健康に関する品揃えを拡充したことを評価する。同ブランドは、2月にアーバン・アウトフィッターズのECでの販売をスタートした。クリーブン氏は、「アーバン・アウトフィッターズのような小売業者は、化粧品やスキンケア製品だけでなく、オーラルケア製品のようなニッチなカテゴリーも含め、美容部門の品揃えをさらに拡大している」という。また、「この戦略によって、歯を白くするためのペンやストリップといったニッチな製品を専門とする私たちのようなブランドが、顧客基盤を拡大することができた」と述べた。
さらに同氏は、米DIGIDAYの姉妹サイト、モダンリテール(Modern Retail)の取材に対し、アーバン・アウトフィッターズの若い顧客層を知ることが、「Z世代のあいだで何が流行しているかを把握するのに役立つ」と話した。
コンサルタント会社コンドラット・リテール(Kondrat Retail)の創設者レベッカ・コンドラット氏は、こうしたパートナーシップが、「自分たちの顧客層をコアな層以外にも広げたいと考えている若いブランドにとって、あらゆる露出につながる」と説明した。アーバン・アウトフィッターズにとっても、若年層市場でシェアを獲得するという目標達成のために有益だろう。この購買層はやがて、セクシャルウェルネスや抜け毛予防といったカテゴリーの製品を購入しはじめるからだ。
コンドラット氏は、「アーバン・アウトフィッターズが、単なるアパレル小売業以上の存在として認識されるチャンスでもある」と話した。
[原文:Why more non-apparel DTC brands are selling at Urban Outfitters]
Gabriela Barkho(翻訳・編集:戸田美子)