売上を促進し、消費者の趣向を教えてくれるとともに、顧客にモバイルアプリのダウンロードを促せる優れもの、デジタルリワードプログラム。マクドナルドはこのたび、数カ月のテスト期間を経て、ロイヤルティプログラムの米市場への初導入を決めた。全国展開の開始は7月8日を予定している。
数カ月のテスト期間を経て、マクドナルドはこのたび、ロイヤルティプログラムの米市場への初導入を決めた。全国展開の開始は7月8日を予定している。
売上を促進し、消費者の趣向を教えてくれるとともに、顧客にモバイルアプリのダウンロードを促せる優れもの、デジタルリワードプログラム。これを利用するクイックサービスレストラン(以下、QSR)は無論、マクドナルドだけではない。たとえば、好敵手バーガー・キングも今年2月に同様のプログラムを導入した。デジタル/モバイル売上が伸びているいま、QSR勢もまた、顧客がどんなものを、どんな頻度で買うのかを明確に教えてくれるデータの収集法を探っている。ロイヤルティプログラムは、その有効な手だてのひとつにほかならない。
「マイマクドナルズ・リワーズ」
新プログラム「マイマクドナルズ・リワーズ(MyMcDonald’s Rewards)」では、1ドル(約110円)の支払ごとに100ポイントが付与され、合計ポイントに応じて、4段階のdなかから16種類のアイテムを入手できる。利用にはモバイルアプリのダウンロードが必須で、スマートフォン/携帯電話でQRコードを読み取るか、アプリをダウンロードしたうえで注文することで、購入金額がポイントに反映される。アプリを使って初めて注文した顧客には、もれなく1500ポイントが付与される。
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この新プログラム導入の背景には、前年度におけるマクドナルドの好成績がある。4月に行なわれた最新の四半期報告において、米マクドナルド社長ジョー・アーリンガー氏は、ピックアップ/デリバリー注文の重要度がなおいっそう高まっていると語った。2021年度第1四半期、マクドナルドは15億ドル(約1660億円)のデジタル売上を記録しており、これには店内のセルフ注文端末キオスク(Kiosk)や自社モバイルアプリ、ウーバーイーツ(Uber Eats)といったデリバリープラットフォームなどが含まれる。同社はモバイル注文アプリを2016年に導入しており、現在までのダウンロード数は700万回に上る。
また、この新プログラムはeコマースとデータ分析への投資という、マクドナルドの長期的戦略の一環でもある。同社は2019年、マシンラーニング(機械学習)を取り入れるべく、テルアビブに拠点を置くスタートアップ、ダイナミック・イールド(Dynamic Yield)を買収している。
リワードプログラムの効用
リワードプログラムは顧客にモバイル注文を促し、その結果、マクドナルドのデジタル部門の成長を後押しする可能性があると、米リサーチ会社フォレスター(Forrester)のアナリスト、ブレンダン・ウィッチャー氏は語る。「アイテムを無料で配ることで、リピート購入を増やし、顧客の人物像を把握するのが、彼らの狙いだろう」。
自社アプリを使ったリワードプログラムを介して、ファストフード勢は顧客の注文に関するファーストパーティデータを入手できる。これは、駆け込みやドライブスルーといったこれまでの購入形態に基づくデータとは大いに異なると、ウィッチャー氏は指摘する。
もっとも、リワードに関して、マクドナルドは後発組だ。ほかのファストフード/QSR勢――スターバックス(Starbucks)、ドミノ・ピザ(Domino’s Pizza)、チポトレ(Chipotle)など――は数年前から独自のロイヤルティプログラムの確立に勤しんでいる。
リワード先発組による最新動向
一方、既存のプログラムを微調整または拡大することで、顧客の保持と、特にオンラインでの注文増を図りはじめたレストランチェーン勢もいる。
最近の一例がパネラ・ブレッド(Panera Bread)だ。同社は既存のロイヤルティプログラムに月額9ドル(約1000円)のサービス、マイパネラ+コーヒー(MyPanera+ Coffee)を追加した。フォレスターの調査によれば、2020年春の導入以来、通常プログラムであるマイパネラ(MyPanera)の新規会員数が80万人に増えており、さらには2020年10月時点で、有料会員50万人のうち35%が新規の顧客だった。
メキシコ料理レストランチェーン、チポトレも既存プログラムをアップデートする。2019年に導入したチポトレ・リワーズ(Chipotle Rewards)の会員数は2300万人近くと、スターバックス・リワーズ(Starbucks Rewards)の2100万人を上回っている。そのさらなる拡大を図り、同社は6月第3週、チポトレ・リワーズ・エクスチェンジ(Chipotle Rewards Exchange)の追加を発表した。これまでは1ドル(約110円)の支払につき10ポイントを付与し、ポイントの使用を主菜に限っていた。だが、今回のアップデートにより、獲得ポイントをワカモレやドリンク類を含む15以上のメニューにも使用できるようにする。この新サービスを販促するべく、同社は48時間のビデオレーシングゲーム大会も開催する――優勝賞品は、テスラのモデル3だ。
導入後に乗り越えるべき課題
リワードプログラムを提供するQSR勢の主眼は、リピート購入の促進と「会員になる人々の理解」にあると、メールマーケティングソフトウェア企業クラヴィヨ(Klaviyo)のパフォーマンスマーケティング部門ディレクター、ジョー・マッカーシー氏は以前、米DIGIDAYの姉妹サイトであるモダンリテール(Modern Retail)のインタビューで述べている。
とはいえ、導入後も乗り越えるべき課題はある。実際に何人の顧客にアプリをダウンロードさせられるのか? そして、それを毎回使わせられるのか? その人数/頻度が最大のカギになるだろう。「ロイヤルティプログラムを価値のあるものにするには、それを一貫して利用してくれる十分な数の顧客が欠かせない」とウィッチャー氏。「さもないと、フードやドリンクを無料で配っているだけになる」。
[原文:Why McDonald’s is launching a loyalty program]
Gabriela Barkho(翻訳:SI Japan、編集:長田真)