マットレス専門店のマットレスファーム(Mattress Firm)は、ブランド認知度を向上させて販売を促進するために、オリジナルコンテンツ戦略に賭けている。 37年の歴史を持つこのチェーン店は現在、iハートメディア(iH […]
マットレス専門店のマットレスファーム(Mattress Firm)は、ブランド認知度を向上させて販売を促進するために、オリジナルコンテンツ戦略に賭けている。
37年の歴史を持つこのチェーン店は現在、iハートメディア(iHeartMedia)とのパートナーシップで制作されているポッドキャスト「眠りを追いかけて(Chasing Sleep)」の第2シーズンを配信中だ。
「この番組は既に10万以上のダウンロードがある」と、マットレスファームのマーケティング担当SVPであるサム・ベネット氏は言う。また、同社は最近、最新の調査「睡眠研究報告書」を公開し、適切なマットレスが人々の睡眠にどのように影響するかを詳述した新しい広告キャンペーンを立ち上げた。これらは、睡眠に関するコンテンツを提供する同社のSleep.comの取り組みの一部だ。
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専門知識を示し、単なる小売業者以上の存在へ
同社が現在、コンテンツに注力しているのは、睡眠についての専門知識を持つ存在として単なる小売業者以上の存在であることを位置付ける戦略の一環だ。ベネット氏は、「マットレスのカテゴリーは、品質と価格がすべてだ。しかしマットレスファームには、品質と価格以上の大きな物語があった。我々は消費者が自社を選ぶべき理由について、より大きなストーリーを伝えるためにコンテンツに注力している」と、オリジナルコンテンツに焦点を当てている点について語った。
ベネット氏が広告費やコンテンツ投資について具体的な数字を公開しなかったため、マットレスファームがコンテンツ戦略にどれほどの費用をかけているかは不明だ。しかし、ヴィヴィックス(Vivvix)の調査によれば、マットレスファームは2023年の第1四半期、広告に6830万ドル(約96億円)を費やし、パスマティックス(Pathmatics)からの有料ソーシャルデータを含めて、チェーン全体で2022年には広告に3億850万ドル(約437億円)を費やした。これは、2021年の2億8760万ドル(約407億円)から増加している。
「コンテンツは我々の計画において、常時稼働状態だ」と、ベネット氏は言う。自社のポッドキャストを持っているだけでなく、ポッドキャストのホストやインフルエンサーとも音声広告の取り組みを行っており、「これは一過性のものではない。常にオンのコミットメントであり、我々のメディアバイイングのよい部分だ」と付け加えた。
また、オリジナルコンテンツへの取り組みは「我々のブランドが睡眠についての専門知識を示すためのものだ」とベネット氏は述べている。「マットレスを売るだけ以上の存在だ」と、同氏は自社について話し、「我々がブランドとして言葉を語り、行動を起こすことは非常に重要だ。ポッドキャスト、Sleep.com、『睡眠の発見(Sleep Uncovered)』レポート、これらは全て我々が専門知識を持っていることを人々に示す非常に明確な方法だ。これらはほかの誰かから買っているわけではない」と言い添えた。
自社ブランドのポッドキャストが顧客を呼ぶ可能性
成長戦略コンサルティング企業のプロフェット(Prophet)のシニアパートナーで、マーケティングとセールス部門の共同責任者であるマット・ザッカー氏は、「マットレスファームによるポッドキャストやオリジナルコンテンツは、消費者と深くつながるアプローチとして非常に理にかなっている」と評価する。「睡眠は健康、ウェルネス、ライフスタイル分野で熱いトピックだ」と同氏は述べ、「ポッドキャストはファネル全体にアピールできることを示している。しかし、このことは同時にマットレスファームが、iハートメディアと協力しても、オーディエンスを作るのは簡単ではないことを意味する」と語る。
また、「彼らは自社ブランドのポッドキャストを(顧客)獲得のために使おうとしている。それが目的なら、ほかのブランドのポッドキャストで広告を出すべきだ。彼らはそれにこだわっている。もし同社が自社メディアを自分の広告として使う方法を上手く見極めており、成果が出ているのであれば、(広告関係者)全員にとってよい教訓になるかもしれない」とし、「彼らがこれでエンゲージメントを得ることができれば、それは自社ブランドのポッドキャストで成果が出せるという教訓になる」と言い添えた。
現在の厳しい経済状況のなかで、今後もマットレスファームはオリジナルコンテンツ戦略への投資を続ける可能性が高い。
「トラフィックは皆にとって厳しい状況だ」とベネット氏は語る。「マーケターたちはブランドやコンテンツから離れるように迫られているが、正直に言って我々が見ているのは、ブランド自身が何者であるか、何を表しているかを明確にして、人々に(商品購入の)理由を与えることこそが、品質や価格に加えて、より多くのトラフィックを生み出すようになってきたということだ」。
[原文: Why Mattress Firm bets on original content like podcasts to prove its expertise in sleep]
Kristina Monllos(翻訳:塚本 紺、編集:島田涼平)