ルルレモン(Lululemon)のCEO、カルヴィン・マクドナルド氏は9月8日、2020年の下半期中におよそ70カ所のポップアップストアを開設する計画を明らかにした。ルルレモンがこの戦略をとるのは初めてではないが、新型コロナウイルスの影響により、このような一時的な店舗の役割も以前とは異なるものになる。
今なお店舗に足を運ぶことをためらう買い物客もいるが、だからといって新たな出店を恐れる小売業者ばかりではない。
ルルレモン(Lululemon)のCEO、カルヴィン・マクドナルド氏は9月8日、同社の2020会計年度第2四半期(8月2日締め)の決算発表において、2020年の下半期中におよそ70カ所のポップアップストアを開設する計画を明らかにした。ルルレモンがこの戦略をとるのは初めてではないが、新型コロナウイルスの影響により、このような一時的な店舗の役割も以前とは異なるものになる。
ルルレモンは2019年の第4四半期にも、期間限定店を50カ所にオープンしている。その目的は主に、ルルレモンが常設店舗の出店を検討している新規市場をテストすることだった。しかし今回ポップアップストアを開設するのは、来店客に関する課題に対処するためだ。ルルレモンは来店数が2019年のレベルを引き続き下回ると予測しているが、一度に入店できる人数が制限されているため、それでも客が長時間にわたって入店待ちをする状況が発生する。常設店舗への来店数が多い地域にポップアップストアを開設すれば、そうした顧客により迅速に対応できる。そのうえポップアップストアは、過剰在庫の解消にも役立つ可能性がある。
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「(ルルレモンは)今なお買い物客が実店舗を訪れるカテゴリーに属している」と、ジェーン・ハリ&アソシエイツ(Jane Hali & Associates)の小売リサーチアナリストを務めるジェシカ・ラミレス氏はいう。「今年のホリデーシーズンには昨年のような人出は見込めないが、それでも実店舗に買い物に来る人はいるだろう」。ルルレモンの第2四半期の売上高は9億290万ドル(約954億円)となり、前年同期比で2%の伸びを記録している。
新たなサイズ展開のPRに利用
小売コンサルティング企業Aライン・パートナーズ(A Line Partners)の創設者ガブリエラ・サンタニエッロ氏によると、同氏が以前に訪れたルルレモンのポップアップストアは「小売店舗の要素をかなり絞り込んだもの」で、黒のレギンスのようなルルレモンのコアプロダクトを中心に取り扱うほか、メンズ向けなどの新しい事業部門に焦点を当てていたという。ルルレモンのマクドナルド氏は決算発表の際、今後はインクルーシブなサイズ展開により注力し、9月から一部コアプロダクトのサイズを0~20まで用意するため、ポップアップストアをこの新たなサイズ展開のPRに利用できると述べている。
ルルレモンは今年の来店数が前年比でどのくらいに上っているのか、具体的な数字を明かしていないが、280店舗に導入しているバーチャルウェイトリストを利用した顧客が40万人近くに上ることを公表している。入店者数が新型コロナウイルスに関する地域の条例で定められた上限に達し、それ以上の入店を許可できない場合、客がウェイトリストに登録しておくと入店の順番が来た際にテキストで通知してもらえるシステムだ。サンタニエッロ氏が見聞きしたところによると、カリフォルニア州オレンジ郡、フロリダ州オーランド、テキサス州ダラスにあるルルレモンの店舗では、待ち時間が1~2時間にも及ぶという。またラミレス氏は、先の週末にニューヨークのソーホー地区を訪れた際、ルルレモンの外には他の小売店舗のように行列ができていなかったが、「店内にはそれなりに客がいた」という。
サンタニエッロ氏は、「これ(ポップアップストア開設)は優れた戦略なので、ルルレモンは情報の告知に努めるべきだ」として、たとえばルルレモンがポップアップストアを設置予定の地域周辺に住む既存顧客にメールを送り、新しいポップアップストアができることを知らせるという手もあると話す。またCEOのマクドナルド氏は、場合によっては同じモール内にふたつの店舗を置くことになると述べている。
在庫の解消にも役立つ可能性
加えて、多くの小売業者が店舗を閉鎖しているいま、ルルレモンは賃貸料でも有利な条件を得られるかもしれない。それにポップアップストアを増やすことは、ルルレモンが過剰在庫を減らすのに役立つ可能性があると、サンタニエッロ氏は指摘する。6月の第1四半期決算発表の際、マクドナルド氏は同社在庫の約40%は黒のレギンスなど季節に関係しない商品だと明かしており、そのため値引きに頼るリスクは低いと同社は述べていた。しかし先日の第2四半期の決算発表によると、在庫は依然として前年比36%増となっている。期間限定店を増やすことで、ルルレモンがこの在庫をさばく場所が増える。
サンタニエッロ氏は、ホリデーシーズンにポップアップストアを開く戦略は、ルルレモンと同じく大きな売り上げの落ち込みはないが店舗が小さく、顧客が店を訪れて長く待たされることを懸念しているほかの小売業者にも有効かもしれないと述べている。それにホリデーシーズンが終わっても、ポップアップストアはブランドがパンデミックの終息を待つあいだ、長期の賃貸契約に縛られずにすむ方法となる。
「一部の大型店舗は(中略)有利な立場にある。一度におそらく200人あまりの客を入店させられるからだ」と、サンタニエッロ氏はいう。「その点、専門小売店は本当に厳しい立場に置かれている」。
[原文:Why Lululemon is betting on pop-up shops during the holidays]
Anna Hensel(翻訳:高橋朋子/ガリレオ、編集:長田真)