数々のレガシーな小売企業がブランドイメージを一新しようとしている。
美術工芸用品小売のマイケルズ(Michaels)は8月初め、「ブランドのアイデンティティの刷新」を行い、顧客のクリエイティブなアイデアに命を吹き込む重要な役割を果たしていくと発表した。ノードストロームラック(Nordstrom Rack)は、同社の1970年代や80年代のロゴからヒントを得た新しいロゴを運用する計画があると述べた。家具小売のアシュレイホームストア(Ashley HomeStore)は、社名をアシュレイ(Ashley)に変更し、今年になり、店舗の改装とスタイルの刷新を行うなど、リブランディングを続けている。
買い物客の好みと期待するものは近年で劇的に変化したと、専門家は語る。ブランドの刷新は小売企業のライフサイクルにおいて自然なことだが、このリブランディングの波は、より包括的なものだ。80年代や90年代に根ざした大規模な店舗や販売チャネルを持つレガシーな小売企業は、デジタルに精通した買い物客向けにブランドを再活性化させるため、ブランドのロゴだけではなく、ターゲット層や、店舗形態、品揃えまで、すべてを変えようとしているのだ。
この記事は、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です。
数々のレガシーな小売企業がブランドイメージを一新しようとしている。
美術工芸用品小売のマイケルズ(Michaels)は8月初め、「ブランドのアイデンティティの刷新」を行い、顧客のクリエイティブなアイデアに命を吹き込む重要な役割を果たしていくと発表した。ノードストロームラック(Nordstrom Rack)は、同社の1970年代や80年代のロゴからヒントを得た新しいロゴを運用する計画があると述べた。家具小売のアシュレイホームストア(Ashley HomeStore)は、社名をアシュレイ(Ashley)に変更し、今年になり、店舗の改装とスタイルの刷新を行うなど、リブランディングを続けている。
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買い物客の好みと期待するものは近年で劇的に変化したと、専門家は語る。ブランドの刷新は小売企業のライフサイクルにおいて自然なことだが、このリブランディングの波は、より包括的なものだ。80年代や90年代に根ざした大規模な店舗や販売チャネルを持つレガシーな小売企業は、デジタルに精通した買い物客向けにブランドを再活性化させるため、ブランドのロゴだけではなく、ターゲット層や、店舗形態、品揃えまで、すべてを変えようとしているのだ。
ブランディングはより包括的に
「このリブランディングの新しい傾向は、すべてを包含するものだ」と、コンサルタント企業ザ・パーカー・アベリー・グループ(the Parker Avery Group)のパートナーであるアマンダ・アストロロゴ氏は述べる。「今リブランディングするということは、ウェブも、店頭での体験も、マーケティングメッセージも変えるということだ。すべての部門にわたって行われる」。
これらの小売企業は、リブランディングに多角的に取り組んでいる。たとえば、マイケルズは「創作に必要なものすべて(Everything to Create Anything)」という新しいタグラインを発表しただけでなく、店舗のサイネージや、オンラインでの体験、ロゴ、マーケティングもアップデートした。アシュレイは社名変更したことに加えて、新しい商品を強調するために店舗を再編成し、さらに低価格帯の新商品も発表した。1973年に創設されたマイケルズは、1290店舗を構える。アシュレイの歴史は1945年までさかのぼり、全世界で110店舗を運営している。
ただし、これらのリブランディングの多くは、新しい世代の顧客にアピールするよう自社のイメージを調整することに重点を置いている。「ブランドを構築するためには、常にリフレッシュし、再びコミュニケーションを続けることが重要だ。競合との環境が激化している今日、この取り組みは特に重要だ」と、カンター(Kantar)で小売インサイト責任者を務めるレイチェル・ダルトン氏は述べている。
新しい顧客へのアプローチ
ノードストロームラックは、このリブランディングが競合他社との差別化に加えて、「新しい顧客を引きつけ、既存の顧客との結びつきを深める」ことを目的としていると語る。アップデートされたロゴは、ノードストロームとノードストロームラックのビジネスモデルにおけるつながりも反映している。このブランドが刷新された重要な背景として、ノードストロームラックの売上が第2四半期に4.1%減少したことも挙げられる。
ノードストローム社(Nordstrom Inc.)のクリエイティブ担当バイスプレジデントを務めるレッド・ゴッドフリー氏は、プレスリリースの中で、「この新しく包括的でまとまりのあるブランド・アイデンティティ・システムにより、我々のブランドの表現は進化し、『優れたブランドを手頃な価格で』というブランドの提案を効果的に伝え、顧客をそれぞれのやり方でラックに集めることをめざしている」と述べている。
これに対してアシュレイは、若い消費者たちのブランドへの関心を高めたいと、以前米モダンリテールに語った。アシュレイのマーケティング戦略担当バイスプレジデントを務めるケリー・デイビス氏は「当社は、認知度に対して、検討されることがやや少ないということがわかった」と述べている。
カンターのダルトン氏は、消費者の支出が低迷している現在、これらのリブランディングは特に重要だと語る。「小売企業はこれからも今いる顧客を満足させ、喜んで店舗に来てほしいと望んでいる。これは今では、必須条件に近いと思う」。
多くの不確定要素を考慮する
今日の小売環境におけるリブランディングは、決して簡単なものではない。カンターのシニアソートリーダーを務めるバリー・トーマス氏は、小売企業がより多くの不確定要素を考慮する必要があると語る。小売企業は、利便性、ローカライゼーション、体験、ソーシャル、サステナビリティを考慮しなければならないのだ。「80年代の小売企業がこれらを考慮していたとは思わない。より要求が厳しいコネクテッドコンシューマーに対して、より多くの不確定要素、より多くの領域について水準を高める必要があるのだ」と同氏は述べる。
しかし、成功すれば、これらのリブランディングは大きなリターンをもたらす可能性がある。たとえば、ヘッジファンドが2019年にバーンズ&ノーブル(Barnes & Noble)を買収した後、同社は近所にあるような本屋にヒントを得てブランドの変革に着手した。地元の店舗には、その地域の買い物客が見たり読んだりしたいものを注文できるよう、より多くの権限を与えられた。またバーンズ&ノーブルは、ソーシャルメディアのコンテンツクリエイターや、TikTokのトレンドを取り入れた。そして、数年間にわたって店舗を閉鎖していたバーンズ&ノーブルは現在、2023年に30店舗の新規オープンをめざしている。
ザ・パーカー・アブリー・グループのアストロロゴ氏は、「店頭体験に投資したり、全力投入している小売企業は、持続可能性があるものとして見られる」と述べる。「それによって消費者は、その小売企業が今後も存続していくことに、もう少し自信が持てるようになるのだ」。
[原文:Why legacy retailers like Michaels and Nordstrom Rack are undergoing major rebrands]
Maria Monteros(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Nordstrom