有名ショコラティエのゴディバ(Gidiva)は2021年1月第5週、北米にある128の全店舗とカフェを今後数カ月かけて閉鎖することを発表した。同社は米国を世界有数の市場として、数年にわたり出店を拡大してきたが、小売戦略から卸売およびオンライン販売にシフトしていく意向だ。
チョコレートにも、新型コロナウイルスの免疫はなかったようだ。
有名ショコラティエのゴディバ(Godiva)は2021年1月第5週、北米にある128の全店舗とカフェを今後数カ月かけて閉鎖することを発表した。同社は米国を世界有数の市場として、数年にわたり出店を拡大してきたが、小売戦略から卸売およびオンライン販売にシフトしていく意向だ。ゴディバは今回の決定の理由として、客足が落ちていること、「コロナ禍と、それにより消費者の購買行動の変化が加速したこと」を上げ、3月中の閉鎖を目標にしていることを明らかにした。
同社の最高経営責任者(CEO)に新任したナータク・アフリディ氏は発表のなかで、「北米の実店舗については、1号店をオープンして以来、明確な目標を掲げてきた。消費者に対面の購買体験を提供し、世界でもっとも魅惑的なチョコレートを楽しんでいただくことだ」と述べ、無念さをにじませた。
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コロナの影響で計画を断念
ベルギー発祥のゴディバがフィラデルフィアに米国1号店をオープンしたのは、1966年のこと。その後はニューヨークに本社も設け、大都市中心部や大型モールに相次ぎ出店。2019年には新たにカフェ形式のショップ展開を発表し、ニューヨークの1号店を皮切りに、矢継ぎ早にカフェをオープンしてきた。米国内で400店舗を目指していたが、コロナ禍の影響で計画を断念させられた形だ。
近年は米国でのカフェ展開に注力していたものの、ゴディバの成長の大部分を担うのは実は中国や日本をはじめとするアジア市場で、その年間の出店数は数十店舗におよぶ。2020年をめどにした株式公開計画をブルームバーグ(Bloomberg)に語った際にも、ゴディバという高級ブランドへの関心が国際的に高まった結果、2016年の年間売上が50億ドル(約5250億円)に達したことが明らかにされている。
確かに今回の決定は、コロナ禍を理由に長引く店舗閉鎖に誘発されたものだ。しかし、コワーキングスペース、サードハウス(Third Haus)の共同CEOであり、ターゲット(Target)の元バイスプレジデント、クリス・ウォルトン氏はゴディバについて、コロナ禍を何とか乗り切ろうとしてきた多くの小売業者のひとつでもある、と指摘する。ホリデーシーズン後、アメリカン・イーグル(American Eagle)やメイシーズ(Macy’s)といったモール型の小売店はさらなる店舗閉鎖を発表した。ペーパー・ソース(Paper Source)のような専門小売店も生き残りをかけ、卸売およびオンライン販売への方向転換を図っている。
こうした傾向は、ホスピタリティを重視したコンセプトストアで特に顕著だ。間もなく閉鎖となるゴディバの米国各店はパッケージ商品を販売しているが、カフェはオーダーメードのデザートや特製のコーヒードリンクといったメニューを楽しめる「ファストカジュアルダイニング」だ。「残念ながら、コロナ禍に際して外食モデルはとりわけリスクが高いことが露呈してしまった」とウォルトン氏は言う。
オンライン販売ぶ無限の可能性
ゴディバにはまだ、既存のオンラインショップを含む、ほかのチャネルを成長させる機会が残されている。同社のパッケージ商品はメイシーズやバーンズ・アンド・ノーブル(Barnes&Noble)、ターゲット、ウォルマート(Walmart)といった大型小売店でも販売中だ。ゴディバのアニー・ヤング・スクリブナー前CEOとの2020年8月のインタビューでは、コロナ禍によってグローバルのオンライン販売が3桁成長を見せたことが明かされている。最近ではスーパーマーケットやドラッグストアへの卸売販売にも力を入れており、ジョン・ギャロウェイ最高マーケティング責任者(CMO)がフォーブス(Forbes)に語ったところでは、グローバルで前年比19%増の収益を上げたそうだ。
フィットネスギアや食料品を含む、おうち時間用アイテムのオンライン購入の大流行を見ればわかるように、消費者は買い物で幸せになろうとする「リテールセラピー」に傾倒している――こう指摘するのは、クラヴィヨ(Klaviyo)のパフォーマンスマーケティング統括者を務めるジョー・マッカーシー氏だ。「特にこのように困難な時代には、人によっては元気づけのチョコレートが必需品となるのだろう」と語る同氏は、消費者がこうした「新たな必需品」を手に入れる方法はほかにもあるはずだと分析した。
ゴディバが米国事業の復興を目指すなら、販売チャネルの多様化がもっとも高いハードルとなりそうだ。マッカーシー氏が言うように、「ゴディバにとっては既存の顧客がもっとも価値ある顧客であり、その数は数百万人に上る」。ゴディバは今後、既存顧客を生かし、それと同時に新たな顧客をつかんで、新しいチャネルミックスを構築する必要がある。「幸い、デジタルパーソナライゼーションに関して言えば、今のところ可能性は無限にある」とマッカーシー氏は締めくくった。
[原文:Why Godiva is closing its U.S. retail stores]
Gabriela Barkho(翻訳:SI Japan、編集:長田真)
Image via Godiva