ミーガン・ザ・スタリオン(Megan Thee Stallion)とファッション・ノヴァ(Fashion Nova)のコラボレーションは11月18日のローンチから24時間で、120万ドル(約1.2億円)以上の売上をもたら […]
ミーガン・ザ・スタリオン(Megan Thee Stallion)とファッション・ノヴァ(Fashion Nova)のコラボレーションは11月18日のローンチから24時間で、120万ドル(約1.2億円)以上の売上をもたらしたと報じられている。コラボレーションには106の商品があり、ジュニアサイズ、プラスサイズに加えて、トールサイズも提供されている。トールサイズは、身長5フィート10インチ(約177cm)以上の女性に対応しており、ファッションにおける「インクルージョン(包括性)」を示している。
ファッション・ノヴァ、フォーエバー21(Forever 21)、ブーフー(Boohoo)の3ブランドは、それぞれプラスサイズ市場の39%、12%、10%を占めている。エイソス(Asos)、プリティ・リトル・シング(Pretty Little Thing)、H&Mなどのファストファッションブランドも、サイズの面で多様性を含むコレクションを発表している。対照的に、エディテッド(Edited)によると、サステイナブルブランドと呼ばれ、自然環境面での持続可能性を目指すブランドのうち、平均以上のサイズ提供を行っている企業は20%に満たないという。サステイナブルブランドのひとつ、リフォーメーション(Reformation)は2018年に一部の製品でサイズ拡張を開始した。
ファストファッションの小売業者は、しばしば劣悪な労働状況から利益を得ており、彼らが手頃な価格で幅広いサイズを提供することは、平均以上のサイズを着る女性をこの悪循環に縛り付けてしまう可能性がある。
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「ファストファッションの小売業者は、主に有色人種の女性である衣料品労働者を搾取している。そして彼らは、我々(黒人女性)の利益や関心を保護はしないが、プロダクトマーケティングは黒人女性に対して過剰に行う。彼らは黒人女性やほかの新進デザイナーのデザインを盗む。彼らの事業はまた、地球に甚大な被害をもたらす」とマイカ・ケイン氏は述べた。
ミーガン・ザ・スタリオンのラインがリリースされた後、ケイン氏はソーシャルメディア上の公開書簡のなかで不満を表明し、それはリファイナリ29(Refinery 29)が抱える、ミレニアル世代の黒人女性のためのコミュニティであるアンボザード(Unbothered)によってあらためてシェアされた。書簡のなかで、ケイン氏はファストファッションを「世界でもっとも破壊的で人種差別的で反女性的な産業のひとつ」と引用した。
非営利企業「ラバー・ビハインド・ザ・レーベル(Labour Behind the Label)」によると、衣料品労働者の約80%が女性である。「ザ・クリーン・クローズ・キャンペーン(the Clean Clothes Campaign)」が2015年2月に発表した報告書によると、2011年の衣料品の生産量上位国は中国、バングラデシュ、インド、トルコ、ベトナムであった。
黒人デザイナーからの盗用疑惑
リファイナリ29は2018年7月、ファッション・ノバの人気が急上昇した一因として、有色人種の女性のインフルエンサーとのコラボレーションを挙げた。さらに、ニールセン(Nielsen)によると、黒人消費者の選択には、メインストリームに影響を与える「クールな要素」があるとのことだ。
ケイン氏は公開書簡のなかで、ファストファッションが独立系の黒人デザイナーからデザインをコピーしてきた長い歴史について論じた。デザイナーのアージア(Aazhia)は、ミーガン・ザ・スタリオンのコレクションのためにファッション・ノヴァが自分の作品を盗んだと主張し、ミーガンはモーニング・ハッスル(The Morning Hustle)のインタビューでそれに反論した。
2019年、3年間の連邦政府の調査のあと、ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)は12月16日、ファッション・ノヴァが不法に低賃金の工場労働者を雇っていたと報じた。記事が共有されてから数分後、ファッション・ノヴァはこれにTwitter上で「明らかに間違っている」と反論した。
ケイン氏と彼女の双子の妹は、BIPOC(黒人、先住民、有色人種を示す頭文字)がデザインした、持続可能なスタイルを多様なサイズを含めて販売するマーケットプレイス「マイブ(Mive)」を運営している。彼女が公開書簡を掲載したのは、ファストファッションについて文化的な文脈で議論する人を見たことがないからだという。
「こうした小売業者の多くは、さまざまな黒人をフォーカスに据えたテレビ番組や黒人エンターテイナーと大きな提携関係にある」とケイン氏。「(黒人女性ラッパーの)スウィーティーはプリティ・リトル・シング(Pretty Little Thing)で、プリティ・プラネット(Pretty Planet)を立ち上げ、(黒人女性でシンガーソングライター、女優、ダンサーなどをこなす)テヤナ・テイラーは同社のクリエイティブディレクターを務めている。これらのエンターテイナーたちは、(ファストファッションブランドが)あらゆる面で反黒人的な存在であるにも関わらず、これらのブランドの文化的な重要性を支持・補強している」。
プリティ・リトル・シングにコメントを求めたところ、「プリティ・リトル・シングは、黒人文化とBLM運動を支援することを誇りにしている。我々は、インクルージョンとダイバーシティをすべてのプラットフォームにおいて確実に反映するために、キャンペーンの顔としてさまざまな人物を取り上げコラボレーションをしている」と回答した。
被害を受けたトライブズ・オブ・キン
ブルックリンに拠点を置くトライブズ・オブ・キン(Tribes of Kin)のデザイナーであり、持続可能なファッションのインフルエンサーでもあるミア・アニンケ氏は、タートルネックとして着用できるマスク・ドレスのコレクションをリリースしたあとに、ファストファッションによる酷似したプロダクトを発見したと述べた。
「私は自主隔離の最中に『タートルネックのマスク・ドレス』というアイデアを思いつき、8月に始めた」とアニンケ氏。「実際に作成したときに調べてみたが、このようなものは見つからなかった。(類似プロダクトを紹介する)ニューヨーク・ポスト(The New York Post)の記事が出たとき、私はそれを読んで『ええ、プリティ・リトル・シングが同じ商品を作ってるなんて』と驚いた」。
ニューヨーク・ポストの記事は、ケイト・モスの異母妹がマスク・ドレスを着用しているのを目撃されたあと、プリティ・リトル・シングのタートルネックのマスク・ドレスが売り切れており、ほかのブランド(トライブス・オブ・キンを含む)も「(マスクを含めた)オールインワンの衣服を取り込んでいる」と報じるものだった。アニンケ氏はニューヨーク・ポストの記者からインタビューを受けたというが、類似デザインを知ったのは記事の発表後だった。
トライブス・オブ・キンはこのドレスを199ドル(約2万800円)で販売したが、プリティ・リトル・シングは19ドル(約1980円)で販売した。トライブス・オブ・キンのインスタグラムアカウントは2万7000人以上のフォロワーを抱えており、その規模を鑑みるとプリティ・リトル・シングがこのスタイルをコピーしたとしても驚かないと、アニンケ氏は述べている。同氏は、(類似デザインのプロダクトと自分のデザインの)写真を横に並べて見て、無力感を覚えたという。プリティ・リトル・シングから彼女に連絡はなかった。米DIGIDAYの姉妹サイト、グロッシー(Glossy)はプリティ・リトル・シングにコメントを求めたが、広報担当者によると、同社は類似デザインに関する訴えは知らなかったとし、ドレスのコピーはなかったという。
「黒人女性はファッションだ」
アニンケ氏とケイン氏は、衣服の選択肢からより大きなサイズが組織的に除外されることは、悪循環を増幅させるだけであり、この仕組みを修復する責任は黒人女性だけにあるのではないと同意する。
ケイン氏は「この動きがただ持続可能なブランドに限られているわけではなく、はるかに大きいものであることを認識することは非常に重要であるが、(ファストファッションが)黒人や褐色の女性に対応し、より大きなサイズを提供することは、あくまでも彼ら企業の利益を求めた結果に過ぎない。アメリカでは女性のほぼ70%がプラスサイズであり、(プラスサイズを提供しないことは)ファッション(市場)から重要な消費者グループを締め出すことになる。黒人女性はファッション(市場)だ」と言った。
ヤフー・スタイル(Yahoo Style)が2016年に実施した、さまざまな年齢、人種のアメリカ人女性1000人を対象とした調査によると、黒人女性の24%が自分はプラスサイズだと答えた。また、アフリカ系アメリカ人の52%を女性が占めており、彼女たちの今年の総支出は1兆5000億ドル(約156兆円)に達すると予想されている。
[原文:The cost of representation: Why fast-fashion brands’ inclusive sizing is a problem]
RUTH SAMUEL(翻訳:塚本 紺、編集:長田真)
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